イチオシ!

鬼頭明里さんが昇華してくれた大切なテーマ。

 今日のうたコラムでは、作詞家・昆真由美さんによる歌詞エッセイを【前編】と【後編】でお届けいたします。歌ネットで歴代人気曲として認定されている、チャン・グンソク「淡い雪のように」や、TikTokで人気急上昇のShuta Sueyoshi「HACK」といった楽曲をはじめ、様々なアーティストの作詞を手掛けてきた彼女。
 
 そんな昆真由美さんが【前編】で綴ってくださったのは、鬼頭明里の1stアルバムに提供した「Fly-High-Five!」と「Star Arc」にまつわるお話です。【音楽ライブと私】【やっと昇華できたテーマ】【歌作りは、プレゼント選びに似ている】3つのタイトルで明かしていただいた想い、じっくりとご堪能ください…!

~歌詞エッセイ【前編】~

鬼頭明里さんの1stアルバムに、「Fly-High-Five!」「Star Arc」の2曲、歌詞提供させていただきました。一枚のアルバムに複数曲提供するのは私にとって初めて。まったく雰囲気の違う2曲について、この場を借りて少し語ってみたいと思います。

◆音楽ライブと私

Fly-High-Five!」はライブ会場で盛り上がっているところをたくさん想像しながら書いた一曲です。ライブ曲を書くのはとても好きで、今までも色々なアイドルやアーティストさんに“ザ・ライブ曲!”という雰囲気の曲を書いています。

私がいわゆる音楽ライブに初めて行った時期は結構遅くて、大学3年、まだ歌詞を書くなんて考えてもみなかった頃。そこで初めて、こんな大きな空間をほんの数人が鳴らす音で操っている、その感じに感動したのを覚えています。

歌詞を学び始めてからは、「勉強も兼ねて」と、色々なライブに足を運びました。友人に誘われるたびに、イベントが開催されるたびに、あまり知らないアーティストでもとにかく行っていて、ある時期は平均で月1、多い時は月に3~4回行っている時期も。

また、あるアーティストさんのライブレポートを執筆させていただいていた時期があり、ライブに行くとステージから客席、隅から隅までを観察。これは今でも癖になっています。

でも、その後、自分が純粋にハマったアーティストのライブは、勉強のために、執筆のために訪れるライブとは比べ物にならないほどの熱量だと知りました。とにかく無敵感で溢れていて、ずっと頭の中にフワフワ感が残って、翌日仕事にならない、あの感じ。

私にとってライブは、小さい頃から慣れ親しんでたものではなくて、大人になってから知った特別で素晴らしい世界。“ライブ曲”を書く時は、今まで足を運んだいくつものライブで感じた熱を思い出しながら、会場で歌われる場面を思い浮かべながら書いています。歌いながら時に踊りながらノリノリで書いてるので、書いている最中の私はとてもじゃないけれどお見せできません(笑)。

ちなみに、音楽ライブに行く人は幸せを感じやすくなり、寿命が9年延びるという研究データがあるそう。たとえば美味しいものを我慢して長生きするより、よっぽど素敵な生き延び方!ライブ会場に足を運ぶのは、今は普遍的なことでなくなってしまったけれど、ライブ曲を書いたり聞いたりするだけでも、そこそこ長生きできるんじゃないか…なんて思っています(笑)。

◆やっと昇華できたテーマ

Star Arc」は、曲を初めて聞いた時に、一気に風景と物語が浮かんできた曲です。

実は、
・流れ星の行方を追いかけて走り出す
・流れ星を見て自分以外の誰かの願いが叶ったと感じる
この2つの情景は、ずっと頭の中にあって、作詞家になりたての頃から何度もこのテーマで歌詞を書くチャレンジをしてきました。

だけど、どうしてもそれがただの“表現”にとどまってしまって、歌の“キャラクター”や“物語”に絡んでゆかず、何度もボツに。今回、曲を聞いたときに、「ああ、この曲なら、もしかしたら」と。頭の中にあった2つのテーマが、一緒になって、すごく立体的に浮かんできて、ひと息に書き上げました。

7年熟成したテーマを、鬼頭さんの素晴らしい歌声で昇華していただけたこと。やっとこのテーマを書く資格を与えられた気がしてすごく嬉しかった。とても感慨深い1曲になりました。

歌が世に出ることって、そう簡単ではなくて、奇跡に近いとすら思っています。ボツになったアイデアはもちろん、「作ったけれど世に出なかった歌」を私はいくつも見送ってきているから。

◆歌作りは、プレゼント選びに似ている。

「自分の書いた歌が聞かれるのってどんな感じ?」なんてたまに聞かれます。歌を作ることは、プレゼントを選ぶことに似ている気がします。これを聞いたらみんなどんな顔をするだろう、喜んでもらえるだろうか、そんなことを考えながら作る。リリースするまで、そしてリリースしてからは本当にドキドキ。

歌を聞いてくれているというのをSNSなどで見ると、そりゃあひとことで言えば「嬉しい」のだけど、その嬉しさって、「よっしゃーやったー!」みたいな感じじゃなくて、「気に入ってくれた?!ありがとう!」という感じ。一生懸命チョイスしたオススメのプレゼントを喜んでくれた時の、じんわりあったかい喜び。

だから、ちょっと自信がなくなったり元気がない時は、作品のエゴサ―チ、してしまいます、やっぱり(笑)。そしてそこから元気とかやる気をもらっていたりします。歌は、幸せを増やすためのツール。歌を届けた後も、私はたくさん幸せをもらっています。

歌に関わってくれた人のポジティブな気持ちがもっとたくさん増えますように。そんなことを想いながら、また今日もプレゼントを選ぶのです。

<昆真由美>

◆紹介曲「Fly-High-Five!
作詞:昆真由美
作曲:中山英二

◆紹介曲「Star Arc
作詞:昆真由美
作曲:塚田耕平
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