川村結花

湿度高めな藤木さんの歌を聴いてみたい、歌詞の内容も、そして声も。

 2020年は、シンガーソングライター“川村結花”のCDデビュー25周年のアニバーサリーイヤー!そこで、今日のうたコラムでは、その記念企画として1年を通じてのご本人によるスペシャル歌詞エッセイをお届けいたします。更新は毎月第4木曜!
 
 シンガーソングライターとして活躍しながら、様々なアーティストへの楽曲提供も行い、ここ数年はピアノ弾き語りのLiveをコンスタントに続けている彼女。この1年の連載でどんな言葉を綴ってくださるのでしょうか…!今回は第6回をお届けいたします。

第6回歌詞エッセイ:「ATOKATA」

6月も残りあとほんの僅かとなりました。なんだかやたらと変化の激しい不安定なひと月だったせいか、日にちの経つのが例年よりも早かったように感じます。

前回の記事から今日までの間に東京アラートなるものが点灯してはあっという間に消え(結局何だったんだ、、、)ロードマップのレベルがステップ3へ移行し町に人も増え始めマスクや除菌スプレーなどもだんだん元通りお店に並んできたな、と思っていたら今度は夏へ向けてのクール仕様マスクの争奪戦。気候も極端に暑かったり雨だったり。何から何まで目まぐるしすぎ。

ただでさえこの時期は気圧の変化と湿気にやられ、心身ともにダメダメ続きなわたし、年齢を経るごとにそれが特に酷くなってダメダメ加減が更に加速している昨今であります。

とにかく今はあのギンギンの猛暑に至る前のウダウダした雨の季節。そんなこの時期を意識して書いたわけではないのですが、2004年に藤木直人さんへ提供(作詞&作曲)させていただいた「ATOKATA」という曲があります。失恋したわりと直後、2週間以内くらいでしょうか、その頃の心情を書いたミディアムスロウの曲なのですが、この曲の持つ湿度がちょうど今のこの気候の感じにマッチする気がするのです。

思えば藤木直人さんが初めて楽曲制作を依頼してくださったのがこの2004年でした。どっから見ても圧倒的に素敵な男性である藤木さん。爽やかで性格が良くてカッコイイ藤木さん。ライブではギターかき鳴らして爽やかに歌ってみんなを魅了してしまう藤木さん。そんな藤木さんにわたしはあえて繊細で内省的な、未練たっぷりの失恋の歌を歌ってほしい、弱さを吐露するようなどこか女々しいような歌が聴きたい、と思ったのでした。

ここで先述の話と繋がるのですが要は、「湿度高め」な藤木さんの歌を聴いてみたい、歌詞の内容も、そして声も、ということだったのだと思います。けれど決してじめじめしたくはないので、全体的に悲しみや寂しさよりもただただぼう然としている、といった様子を表す空虚感を大事にしました。そうすることで湿度は高いけど温度は低め、というわたしの望む理想的なバランスが出来上がったのでした、というー、温度だ湿度だとややこしい話になってしまいましたが、確かにあるのです、曲には温度も湿度も。そしてその2つは似ているけど全然違うものなのです。ことに歌では。

ともあれ、そんなこんなで、ほどよく女々しく内省的な曲が出来上がり、空虚であるほど切なさも増し、藤木さんのファンの方々からも評判が良く(これがすごく嬉しかった)、ライブではこの曲をピアノで弾き語りしてくださる藤木さんも拝見することができてとっても幸せだったのでした。

ちなみに、今まで自分が書いてきた曲の中で「好きな出だしの2行」を挙げるとしたら、5本の指に入るであろうと思うくらい、この曲の出だしは気に入っています。

“寂しさは 忙しさには まぎれない
足音の気配は ただの勘違い”


、、、なんか雰囲気伝わるでしょうか。湿度高め、温度低め。機会がありましたらお聴きになっていただけたら、そして確認していただけましたら嬉しいです。そして来月のこの原稿を書いている頃にはどうぞ梅雨が明けていますようにー。

<川村結花>

◆紹介曲「ATOKATA
作詞:川村結花
作曲:川村結花

◆プロフィール

川村結花(シンガー・ソングライター)
大阪府生まれ。東京芸術大学作曲学科卒業。1995年、アルバム「ちょっと計算して泣いた」でシンガーソングライターとしてデビュー。同時に作詞家作曲家として楽曲提供を行い、主な提供楽曲は、夜空ノムコウ(作曲)をはじめ2019年現在までに100曲以上。2010年「あとひとつ」(作詞作曲共作)でレコード大賞作曲賞を受賞。2017年、アルバム「ハレルヤ」をリリース。ここ数年は、提供楽曲の作詞作曲も行いながら、ピアノ弾き語りのLiveをコンスタントに続けている。

オフィシャルサイト:https://www.kawamurayuka.com

◆歌詞エッセイバックナンバー
【第1回】
【第2回】
【第3回】
【第4回】
【第5回】
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