愛と呼ぶには少し幼な過ぎたね、恋と呼ぶには知り過ぎたね。
FUKI
愛と呼ぶには少し幼な過ぎたね、恋と呼ぶには知り過ぎたね。
2018年12月5日に“FUKI”が、ラブソング決定盤とも言えるニューアルバム『IN LOVE』をリリースしました。今日のうたコラムでは、その収録曲から11月9日から先行配信リリースされていた新曲「あと少しだけ」をご紹介いたします。みなさんも、すでに関係は修復できないとわかりながらも<あと少しだけ>と願ってしまうこと、ありませんか…? 過ぎ行く季節は淡くほろ苦い 香りだけ残して消えた 並んだままの写真の中の二人だけは 永遠を信じていたね 「あと少しだけ」/FUKI 冒頭から、今の二人の<永遠>はもう叶わぬものとなってしまっていることがわかります。しかし<香りだけ残して消えた>相手に対し、残された<僕>のほうは心がまだ<並んだままの写真の中>にあるのではないでしょうか。愛おしいひとの匂いに記憶を呼び起こされるたび“あの頃は<永遠を信じていた>のにどうして…”と立ち止まるのです。 そうやって過去のなかにいるために<過ぎ行く季節>の形や光も薄ぼんやりしていて、なんとなく苦みを感じる程度にしか、苦しい現実を受け入れられないのでしょう。そして同時に、何度も何度も考えるのは、こうなった理由です。どうやらそれは、二人が<愛>という言葉も<恋>という言葉も、相応しくないような関係性になってしまったから。 愛と呼ぶには少し距離が短すぎて 恋と呼ぶには長すぎたね もう一度会えるなら離さない あの日の僕だけのキミのままで 「あと少しだけ」/FUKI たとえば、二人が遠距離恋愛だった場合。その距離は<愛>なんて大それたもので乗り越えるほどのものではなかった。だけど<恋>を感じるには遠すぎて、不安や不満が募ってしまった。もっと抽象的に深読みすれば、二人が共に歩んできた距離は<愛と呼ぶには>短すぎて、でも<恋と呼ぶ>には長く過ぎてしまったのかもしれません。いずれにせよ、とても<永遠>を信じ合えるような関係ではなくなってしまったのは確かですね。 過ぎ行く記憶は甘く切ない 擦り傷を残して消えた 買ったままでしまった いつかの花火だけが 何も知らずキミを待ってる 愛と呼ぶには少し幼な過ぎたね 恋と呼ぶには知り過ぎたね もう二度とないほどに抱きしめた 温もりだけをのこしたまま 「あと少しだけ」/FUKI さらに、続く歌詞では<僕>がより深く過去へと潜っている印象を受けます。そこで<過ぎ行く記憶>の甘さと切なさ、残された<擦り傷>の痛みと愛しさ、使われることのない<いつかの花火>を捨ててしまいたい気持ちと捨てられない気持ち、進まなきゃいけないとわかりつつも、どこか<キミを待ってる>自分、その両極に触れ、揺れているのです。 それでも、やっぱり二人は<知り過ぎた>いろんなことを<愛>という言葉でも<恋>という言葉でも、抱きしめられなかったことが現実。また、きっとこれからも変われないこともなんとなくわかっているはず。だから、たくさんの“後悔”と“未練”を背負いながらも、ちゃんと<サヨナラ>に向かって進んでいかなければなりません…。 サヨナラの前に もう一度だけ あの頃のように 何も言わず 抱きしめて欲しい となりにいて欲しくて ただそばにいて欲しくて 僕が泣き 笑う理由は 全部君がいい 出会えてよかった 伝えたい想いが 溢れ出して 頬を伝う あと少しだけ キミを好きでいさせて 「あと少しだけ」/FUKI 本当は<となりにいて欲しくて ただそばにいて欲しくて>どんなことがあっても<君>のいない未来なんて考えられなかったのでしょう。いろんな感情も分け合って生きて、<出会えてよかった>という言葉は、もっともっと先の未来で笑顔で告げたかったのでしょう。でも、それはできないから<伝えたい想い>は涙になって頬を伝ってゆきます。 そして、せめて<あの頃>の想いは嘘じゃなかったと<何も言わず 抱きしめて欲しい>と思うのです。いつまでも好きでい続けたら迷惑だということも知っている。でも、だからこそ<あと少しだけ キミを好きでいさせて>と言わずにはいられないのです。切ない想いが次々と溢れ出してくる、FUKI「あと少しだけ」を是非、あなたの“未練”や“後悔”も重ねながら聴いてみてください…! ◆紹介曲「あと少しだけ」 作詞:FUKI・EIGO 作曲:FUKI・EIGO ◆New Album『IN LOVE』 2018年12月5日発売 VICL-65066 ¥2,800(税込)