LIVE REPORT

高野麻里佳 ライヴレポート

高野麻里佳 ライヴレポート

【高野麻里佳 ライヴレポート】 『2nd LIVE ~LOVE&MOON~』 2022年9月10日 at 豊洲PIT

2022年09月10日@豊洲PIT

撮影:中原幸/取材:一条皓太

2022.09.30

高野麻里佳が9月10日、東京・豊洲PITにて『高野麻里佳 2nd LIVE ~LOVE&MOON~』を開催した。本稿では第一部(昼公演)の模様をお届けしたい。

今年1月に開催した『高野麻里佳 1st LIVE ~夢みたい、でも夢じゃない~』では、キャリア初のワンマンライヴにもかかわらず、当時まだ発売前だった1stアルバム『ひとつ』収録曲のほとんどを先行披露した高野。だが、10月12日発売の3rdシングル「LOVE&MOON」になぞらえて、中秋の名月のその日に開かれた2ndライヴにも、彼女にとって“初めての挑戦”が待ち受けていた。それは、生バンドとのステージである。

結論から述べてしまうと、高野は本当にバンド映えする歌声の持ち主だった。そもそも声優アーティストの強みのひとつとして個々の特徴的な歌声があるが、その中でもハイレンジの伸びと響きに特出した彼女のそれは唯一だと言える。バンドの迫力に掻き消されるどころか、その存在感がむしろお互いの良さを引き出し合うことを実感できたくらいだ。“音楽は音源ではなく生で聴くべき”という一説的なつまらぬ決まり文句こそ、今では耳にすることも少なくなったが、そうした“ライヴ至上主義”とは別の意味で、彼女のヴォーカルは生バンドでこそ真価を発揮すると言い切ってもいいと思う。

例えば、ビブラートの心地良さが特に印象的だった3曲目「夢みたい、でも夢じゃない」や、まさにバンドメンバーという仲間とともに新たな物語を開いていくようだった4曲目「New story」など。原曲以上に低音のヘヴィさを引き出したバンドサウンドは、会場で浴びていて純粋に音の刺激としての気持ち良さに優れていたほか、ヴォーカルを含めた全体像として、ひと言で表すならば“快活”、あるいは“快調”といった言葉が思い浮かんだ。

そんな彼女はステージにおけるバンドとの関係性をどのように考えていたのか。ライヴ終了後のアフタートークでは、高野対バンドという役割で線引きをせず、彼女を含めた全員でバンドでのライヴを作り上げるという意識を持っていたと明かされた。この日の演奏を担当したのは、ギター、ベース、ドラムの3名で構成される通称“リアジュボーン”。一般的なことで言えば、弦楽器を左右、後ろ側中央(センターである高野の後ろ)にドラムを置くのが基本的な配置であるものの、前述のような考えから自身のオーダーでドラムをやや上手側にずらしたのだという。

また、昼公演のみで歌唱された5曲目「さよなら星空」は、原曲ではピアノで演奏されたフレーズをギターで再現してほしいというアレンジを彼女が直々に依頼をしたという裏話も語られた。高野は“バンドさんは何でもお願いを聞いてくれるぞ!”と味を占めていたそうだが、そうしたこだわりが実現するのも本当に贅沢であり、何よりアーティスト本人がライヴを誰よりも楽しみにしている点でも彼女のファンは本当に幸せに違いないだろう。

そんなこだわりもいい意味でどこかに吹き飛んでしまうほど、ライヴ後半は何も考えられない怒涛の展開に。高野曰く「とても壮絶な3曲」として連続披露されたのは、6曲目から順に「Ready to Go!」「カリソメアワー」「夜更かして、午前2時」。アルバム『ひとつ』でも、とりわけひと癖ある楽曲ばかりだ。

まずはドライブ感が満載な「Ready to Go!」。実はこの楽曲、高野にとって“鬼門”だったのである。というのも、「Ready to Go!」にはファンとともにダンスを楽しむパートが全部で2カ所ある。歌唱前に片方の振り付けを観客へレクチャーし、もう片方は間奏中にその場で実演するのだが...前回の1stライヴでは高野自身がこの振り付けを一時的にどこかに置いてきてしまったり、右腕をマイクにぶつけてHP(ヒットポイント)を軽く削られたりと、最終的に“何もなかった”ことになっていたのだ...(笑)。

そんな経験を経た今回は、なんとレクチャーも本番も完璧! しかも、ダンス中にはフロアーの様子を眺めて“みんな、うまい〜!”とリアクションをしていたほか、間奏後にはもう片方の振り付けが待っていると事前に予告するといった余裕と心遣いも見られた。前回ライヴの参加者の記憶さえ、本当に“何もなかった”と上書きできるほどのパフォーマンスを披露した高野。きっと、人前では見せぬ努力があったのだろう。

我々のボルテージが上がったのはこれだけではない。歌唱中、歌詞の描写に合わせて、メロディーを外しこそしないものの、ヴォーカルを喋り口調にする“遊び”を入れるなど、原曲以上に感情が伝わるようにしていた場面もあった。ステージに立ちながらも、自身もライヴを作り上げる参加者のひとりとして、フロアーと同じ目線から表現を無邪気に楽しむ姿も、以前に比べてさらに成長した部分にほかならない。

続くは、前回のライヴで唯一披露されなかった1stアルバム収録曲「カリソメアワー」。いわゆる“隠し球”的な扱いの“祭りロック”だが、初歌唱のタイミングを初の生バンド演奏に合わせてくるなんてニクいものである。これだけは、ライヴというよりも全員が強制的に気持ちをぶち上げられた“宴”と呼ぶべきか。フルコーラスのはずなのに、筆者の体感はわずか2秒だった。

そこから「夜更かして、午前2時」では“日常系ロック”特有のメロディーに対して歌詞を細かく敷き詰めるようなヴォーカルを奏でていく。ほとんどラップに近い譜割りの忙しなさなのだが、曲中には歌詞に合わせてうざったそうに蹴り上げたり、体重を沈ませるタイプのジャンプでノってみたりと、ヴォーカル以外の面でも楽曲への解像度の高さも見せつけてくれた。《こうして描く妄想は 夜更かして午前2時》と、ほとんどアカペラな歌い終わりもバンドから少し溜めを作って後ろにずらすなど、歌唱後の余韻の作り方まで完璧だったと言わざるを得ない。

ライヴを締め括ったのは、3rdシングル収録曲「スミレ」からの表題曲「LOVE&MOON」。中でもラストナンバー「LOVE&MOON」は、楽曲のメッセージと高野自身の人柄や歩んできた道のりが過不足なく絶妙な良さで重なる、まさに彼女の声優人生を体現するような楽曲だ。大切なものへの愛情、夢や情熱を歌った歌詞はもちろん、歌声のキーやポップロックなテイストなど、どこを取っても今後何年、何十年と続く音楽活動を担い、象徴し続ける一曲になると確信している。あんなに心温まるバンドの音色を浴びたのはいつぶりだろうか。

東京でも、夕方ごろから微かに肌寒さを感じたライヴ当日。帰り道に吹く風の涼しさに、「LOVE&MOON」が持つ情緒深いメッセージを会場へ足を運んだファンのみなさんも思い出したのではないだろうか。本当に、大切に噛み締めて聴きたい名曲である。

撮影:中原幸/取材:一条皓太

【アーカイブ配信情報】

■アーカイブ配信開始:2022/9/30(金)18:00頃
■配信チケット販売期間:~2022/10/7(金)21:00
■アーカイブ視聴期間:~2022/10/7(金)23:59
※その他詳細は下記よりご確認ください
https://columbia.jp/kohnomarika/live.html#live

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