LIVE REPORT

THE MODS ライヴレポート

THE MODS ライヴレポート

【THE MODS ライヴレポート】 『THE MODS 40TH ANNIVERSARY LIVE「約束の夜」』 2021年10月30日 at 日比谷野外大音楽堂

2021年10月30日@

撮影:朋-tomo-/取材:帆苅智之

2021.11.08

いきなり私事で恐縮だが、自分が最初にTHE MODSのライヴに行ったのは1983年のことである。はっきり覚えているのは、そのコンサートが『写楽』という新進気鋭の月刊写真誌が主催だったか後援だったかについており、そのメディアミックス(その時はそんな言葉も知らなかったとは思うが)の興行スタイルを子供ながらに新しいと感じてワクワクしながら足を運んだこと。そして、その公演はライヴハウスではなく、コンサートホールで行なわれたため、観客がひしめき合った中ではなく、指定された自分の座席で観ざるを得なかったこと。今もそのふたつをよく記憶している。

メディアミックスはともかくとして、“指定された自分の座席で観ざるを得なかった”というのは、何を言っているのか分からない人もいると思う。別におかしなことを言いたいわけではないし、誤字誤植でもない。当時のロックバンドのライヴでは、それがホールコンサートであっても押し合いへし合いの中で観ることがしばしばあった。開演のSEが鳴ると同時に、自分の席を離れた一部観客が最前列席とステージとの間に詰めかけて、その密集した状態でライヴが行なわれることもあったのである。自分が体験した限り、当時はダイブまではなかったと思うが、そうした“ステージ前かぶりつき状態”がロックバンドのライヴのデフォだった...とまでは言わないけれど、半ばそれを当然と思うようなところはあったとは思う。

そして、その1983年のTHE MODSのライヴだが──自分はオープニングSEと同時にステージ前を目指したものの、場内整備スタッフに席へと戻されてしまい、どこか釈然しないまま、THE MODSのステージを観続けた。どう考えてもそれが正解なので、“釈然しない”というのは若気の至りでしかないが、筆者が初めて観たTHE MODSのライヴが、そんな汗顔の想いも相俟って強く印象に残っている。

今や、いかなロックバンドのライヴと言っても、観客は座席が設置された会場では自席から離れずに公演を観るのが当たり前、至極真っ当なスタイルとなった。事ここに至ったのは、観客が将棋倒しになって死傷者が出るという不幸な事故が起こったことも大きな要因だろうし、オールスタンディングのライヴハウスと座席指定のホールという棲み分けができたことも一因ではあろう。その公演スタイル自体に何の不平不満があろうはずもない。だが、自分が初めてTHE MODSのライヴを観てからおおよそ40年。自席を離れてはならない...だけではなく、会場内ではマスクを着用し、歓声、声援、歌唱も禁止...なんて日がこようとは、夢にも思わなかった。無論そのことを糾弾するとか何とかというのではない。そんな気持ちはさらさらない。出口の見えないコロナ禍において、40周年のアニバーサリーライヴが、まさしく“約束の地”である日比谷野外大音楽堂で開催できたことは喜ぶべきであろう。

何が言いたいかと言うと、THE MODS がデビューしてからここまでの40年間というのは、それほどの道のりであったということ。ホール公演でのマナーも分からないキッズがいた頃から始まって、図らずもライヴコンサートにシンガロングやコール&レスポンスが欠かせないものであることが証明されるに至るまで──もっと言えば、ロックバンドのライヴが日本のエンタテインメントに必要不可欠であることを多くの人が知るに至るまで、である。THE MODSが日本にロックを根づかせたわけではないけれど、彼らがそのひと役を担った存在であるのは言うを待たないことであろう。40年という歳月は決して軽いものではない。冒頭で述べたような個人的な想い出もあって、もともと特別だった本公演は自分にとってかなり感慨深いものではあった。

シンガロングやコール&レスポンスがないことを飛車角落ちのようにとらえる向きもあったかもしれない。前半のMCで森山達也(Vo&Gu)もこう言った。“40年もバンド活動してきて、まさかこんな日がくるとは、こういうライヴをやらなきゃいけない現実があるとは思わなかった”。偽らざる本音だっただろう。だが、これまでと異なるライヴスタイルに戸惑いを隠せないながらも、“あと何年か経って、きっと今日来ている連中が“俺は観たぜ、コロナ禍のTHE MODSの野音を”って、そう言える日がくることを願っています”と続けたのは、如何にもTHE MODSらしい反骨精神ではあった。観ているこちら側としても“ここでオーディエンスが叫べばさらに楽曲が映えるるだろうな”とか、“本来であればここで客席にマイクを向けてもいいだろうに”とか、思わずないものねだりをしてしまう瞬間があったことも事実ではある。だが、それを逆にとらえれば、THE MODSの楽曲はキャッチーな要素が多いということで、そこを改めて実感するライヴでもあった。そういう言い方もできるかもしれない。その場で披露されている楽曲をこれまで以上に冷静かつ客観的に聴く以外ない...というと若干語弊があるかもしれないが、そういう状況ではあったがゆえに、図らずもバンドの本質を知れたとも言える。それがデビュー40年目にして...というのは面白い巡り合わせではあろうか。

ギターがソリッドに刻む鋭角的なリフレインがヴォーカルと拮抗するようにキャッチーであるとか、ブルースやバラードといったナンバーでもリズム隊がしっかりと楽曲にキレを与えているのでミドルテンポでもルーズにならないとか、いろいろと再発見はあった。そんな中、個人的に改めて強く印象に残ったのは歌のメロディーの特有なウェット感である。まろやかさと言い換えてもいいだろうか。あるいは、これまた誤解を恐れずに言えば、どこかフォーキーで、どこか九州らしいと言ってもいいかもしれない。全部が全部そうだとは言わないけれども(この日も披露された新曲「READY TO ROCK」はウェットではなく、比較的カラッとしたメロディーではあると思う)、そんなところに随所随所で、はたと気づかされた。

そして、そのメロディーは歌詞との相性がいい。巷に蔓延る価値観と相容れない自身の行動を“LOOSE GAME”と言いながらも鼓舞する姿勢を描いた歌詞は、その最たるものだろう。(歌詞ではないが、この日、垂れ幕でステージに掲げられた“退路ヲ断ッテ前進セヨ”のスローガンはそれを端的に集約しているのだと思う)。そうした世間との距離の空け方で生じる独特なニヒリズムを、ヴォーカルの旋律がくっきりと浮き立たせ、嫌味なく聴き手に迫ってくる。欧米のサブカルチャーをなぞるだけでなく、楽曲に日本ならでは叙情を注入し、パーティチューンだけのロックに留まらなかったことは、THE MODSが40年間に渡って支持されてきた要因であり、日本のロックシーンにおける大きな功績であろう。いささか大袈裟な物言いになったが、披露される楽曲を聴きながら、そんなふうに想いを巡らした一夜であった。

日本ならでは叙情性を持った反抗の音楽。その象徴と言えるのがアンコールで披露された「TWO PUNKS」だろう。1982年6月、土砂降りの雨の中での観客が同曲を大合唱して以来、THE MODSの野音と言えば、「TWO PUNKS」を場内みんなで歌うのが恒例であった。しかし、ご存知の通り、いかなTHE MODSの野音とはいえ、このご時勢、ファンも今回ばかりは演奏されないと思っていたことだろう。事実、関係者に事前に渡されたセットリストに同曲はなかった。しかし、予定されていたアンコールを終えた森山は“ここできれいに終わろうと思ったけど”と言いながら、“俺たちとの約束の絆”と紹介しつつ「TWO PUNKS」を披露。野音でオーディエンスの合唱がないかたちで演奏は約30年振りのことだ。疾走感あるパンクにレゲエ要素を取り込んだのはThe Clash由来だろうが、そこに乗るメロディーは、Aメロの《虚ろな街に風が吠え抜ける》からして叙情性に溢れている。そして、そのウェット感が前半を支配しているからこそ、のちの《俺たちは乗ることができなかった》のリフレインが映えるし、そこが悲しくも力強く、虚しくも堂々と聴く者の胸を打つのだ。これまでとは勝手の違う「TWO PUNKS」ではあったが、改めて日本ロック史に残る名曲の名曲たる所以を知った気がする。

その「TWO PUNKS」の合唱を始め、かつてのライヴらしいライヴが叶わなかった40周年のアニバーサリー。日本では新規感染者数が減ってきたとはいえ、まだはっきりと先が見通せる状況ではない。だが、苣木寛之(Gu&Vo)は本編前半のMCでこんなことを言った。“40年は中途半端なんで、これは50年まで行けということだと思います!”。それもまたTHE MODSらしい台詞だと唸らせられたが、まさにそういうことだと思う。SHOW MUST GO ON。これもまた通過点でしかない。この日、満を持してライヴを決行したように、有事で活動が滞ることがあっても、バンドが止まることはないのだ。

撮影:朋-tomo-/取材:帆苅智之

※現在ツアー中のため、セットリストの公表を控えさせていただきます。

THE MODS

ザ・モッズ:1981年にアルバム『FIGHT R FLIGHT』でメジャーデビュー。以来、時代に流されることなく、音楽に対する真摯な姿勢を貫き、ファンのみならず多くのアーティストたちにも多大な影響を与え続けてきた。技術や理屈だけでは作り出せないバンド然とした強靭なサウンドと、リーダーである森山の類稀なる歌唱力とカリスマ性が最大の魅力である。

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