君は寂しくはない?雨やどりのバッタが言う。

ワガママ、おしゃべり、自由すぎ!

 そんなキャッチコピーが綴られているのは、現在公開中の映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』です。主人公・鹿野靖明(大泉洋)34歳は、筋ジストロフィーによって車いす生活。しかし、体が不自由にもかかわらず、病院を飛び出し、大勢のボランティアを集めて自立生活を始め、自らの夢や欲にまっすぐ生き抜いた実在の人物なんです。

 そして、主題歌は“ポルノグラフィティ”が今作のために書き下ろした「フラワー」という新曲。作詞を手がけた新藤晴一は「鹿野さんが聴いたらどんな風に思うのかと考えながら歌詞を書いたのですが、彼の強さをどう表現すればいいか最後まで悩みました。表現したかったことが聴いてくれた方に伝わればうれしいです」とコメントしております。

なぜ こんなとこに咲いた?
その花も理由(わけ)を知らず
ただ一輪 荒野に芽吹き 人知れず薫っている

吹きすさぶ風に 揺れていても 折れず
燃える太陽に しおれても 枯れず
「フラワー」/ポルノグラフィティ

 ひと言の問いで幕を開ける歌。この花が<こんなとこに咲いた>理由を知らないように、わたしたちにも「どうして?」と考えても仕方ないことってたくさんありますよね。たとえば“鹿野さん”の病気も然り。なかには<こんなとこ>に絶望したり、環境や誰かや運のせいにしたりして、折れて枯れて、咲くことを諦めてしまう場合もあるでしょう。
 
 だけど<その花>も“鹿野さん”も、そうではありませんでした。きっと、苦しい「なぜ」の時期を越えて、この<荒野>で精一杯、生き切ることを選んだのです。もちろん<吹きすさぶ風>に揺れて、<燃える太陽>にしおれて、周りに情けなく思われること、自分自身をふがいなく思うこともあったはず。ただ決して、折れないし、枯れません。

そこに咲いてるだけで こんなにも美しい
弱さと強さを持つ花よ
愛でられるためでなく 色を誇るためでもなく
息づいてる
「フラワー」/ポルノグラフィティ

 何故なら<荒野>に芽吹いてからずっと、人知れず薫り、大地の深くに根を張り巡らせ、茎を太くしてきたから。弱さの分だけ、生きようとする意志を強く実感してきたから。誰にどう見せたいか、どう思われたいかなんて関係なく、命の限り息づいてるから。だから、この花は<そこに咲いてるだけで こんなにも美しい>のではないでしょうか。

ねぇ 君は寂しくはない? 雨やどりのバッタが言う
静けさと遠き雷鳴 笑ってるわけじゃないの
「フラワー」/ポルノグラフィティ

 歌詞を読み進めてゆくと、途中に<雨やどりのバッタ>が登場します。バッタは動くことができる分、この花より自由でしょう。選択肢も多いでしょう。でも、おそらく今は<雨>という逆境が降り注いでいるから、寂しくて一人ぼっちで不安。それゆえに尚更<こんなとこ>に美しく咲き続けている一輪の<花>の気持ちが知りたいのだと思います。
 
 なんだかこの<雨やどりのバッタ>は“鹿野さん”に関わった人たち、映画を観た人たち、曲を聴く人たち、多くのひとに重なる気もしませんか? 「君は寂しくはない?」という問いには「君のように強く美しく生きられない」「自分は一人ぼっちだ」という本音が滲んでいるのです。では、その声に<花>はどう答えるのか…。それはあえて解説いたしません。是非、歌詞の全文を読んで、想いを受け取ってみてください。

I wanna be so strong, Even if I'm alone.
I wanna be so strong, Flower.
「フラワー」/ポルノグラフィティ


 強くなりたいと思っているあなたへ。だけど一人は怖いと思っているあなたへ。ポルノグラフィティ「フラワー」のメッセージが届きますように。そして、映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』も劇場にてご堪能ください!

◆紹介曲「フラワー
2018年12月14日配信
作詞:新藤晴一
作曲:岡野昭仁