思い出すのは 他愛のない日々
ドラッグストアで言い合う
くだらないじゃれたケンカとか
「お風呂とトイレが別々じゃないから
泊まりになんて行かない！」
わがままばかりだった
会えない日々がどんどん増えて
焦る気持ちに空回りさせられた
「思い出はシャンプーの中に」／SHE IS SUMMER
この歌は、MICOの歌声が切なく響く失恋ソングです。おそらく別れの原因は＜会えない日々がどんどん増えて 焦る気持ちに空回りさせられた＞こと。その当時の心を水に例えるのなら、バシャバシャと激しく寂しさに揺さぶられたり、静かな不安にいつも水面が震えていたり、そんな落ち着きのない状態だったのでしょう。しかし＜きみ＞との恋を失ってしまった今、心は静かに過去を見つめています。
別れてから思い出すのって、特別な日のことじゃなくて、意外と＜他愛のない日々＞のなかで積み重ねてきた＜じゃれたケンカ＞とか、今思えばくだらないと笑えてしまうような＜わがまま＞だったりしますよね。そして、そんな時間こそが大切だったのだと気づかされ、平凡な毎日にだって幸せはあったのに＜焦る気持ちに空回り＞させられたことを後悔したり…。こうして思い出だけに立ち止まり続けていると、心の水はどんどん濁ってしまいそうです。
どれだけきみと過ごしても どれだけ夢を話しても
過ぎる時間に僕らは勝てないままで
一緒に選んだシャンプーの香りだけは変わらないまま
だけど、ふたりはもういないんだ
「思い出はシャンプーの中に」／SHE IS SUMMER
どれだけきみを見つめても どれだけ口付けをしても
過ぎる時間に僕らは逆らえなくて
一緒に選んだシャンプーの 香りは思い出に溢れて
二度と、使えなくなってしまったんだ
「思い出はシャンプーの中に」／SHE IS SUMMER
また、変わってしまった二人と対照的なキーワードは、変わらない【シャンプー】の香りです。二人は結局のところ＜過ぎる時間＞に勝てず逆らえず、別れてしまったわけですが、それでも＜一緒に選んだシャンプーの香り＞は＜僕ら＞が共に過ごした時間のたしかな証。夢を話したときも、きみを見つめたときも、口付けをしたときも、同じシャンプーを使っていた＜僕ら＞は、頭から同じ匂いをさせて、おそろいの時間を過ごしておりました。だから、その＜香りは思い出に溢れて＞いるのです。
そんな特別な【シャンプー】ですから当然、ただ香りを嗅ぐことが、大切だった毎日を思い出したり、後悔したりするスイッチにもなりますよね。それゆえに＜僕＞はそのシャンプーを＜二度と、使えなくなって＞しまったようです…。でもそれは、心にとって良いことなのだと思います。新しいシャンプーを買うこと、ちょっとした身近な環境も変えることが、ちゃんと前を向いて今を生きてゆくためのきっかけになるのでしょう。
いくつの恋と共に過ぎてく
ふたりもこの街を彩れたのかな？
どれだけきみと過ごしても どれだけ夢を話しても
過ぎる時間に僕らは勝てないけれど
一緒に選んだシャンプーの香りは思い出に閉まって
いつか、またふたりに会おう
「思い出はシャンプーの中に」／SHE IS SUMMER
このように幕を閉じてゆく歌。変わってゆくことには寂しさも伴いますが、大切な時間がなかったことになるわけではありません。たとえば＜ドラッグストアで言い合う くだらないじゃれたケンカ＞は、その時ちゃんと＜この街を彩れ＞ていたはず。そして、そのことをきっと＜僕＞もわかっているからこそ、もう＜一緒に選んだシャンプーの香りは思い出に閉まって＞新たにこの街を彩りながら生きてゆこうとしているのです。ラストの＜いつか、またふたりに会おう＞というフレーズからは「次にあのシャンプーを使える時には、もっと成長した自分であれたら…」という前向きな気持ちが伝わってくるかのようで、少しずつ澄んでゆく心が見える気がしますね…！
アルバムには全12曲が収録されておりますので、是非、その心の変化や在り方にも注目しながら楽曲をご堪能ください！
◆1stフルアルバム『WATER』
2017年11月8日発売
SCL-003 ￥2,800(税込)
＜収録曲＞
1 (mirage)
2 とびきりのおしゃれして別れ話を
3 私たちのワンピース
4 NIGHT OUT
5 WATER SLIDER
6 ナイトブルー
7 LAST DANCE
8 思い出はシャンプーの中に
9 あれからの話だけど
10 冬の街とキミと永遠に
11 待ち合わせは君のいる神泉で
12 出会ってから付き合うまでのあの感じ
土岐麻子
