みっともないと笑ってくれ、僕に名前をつけてくれ。

 学生時代には“卒業”という節目がありますが、なんだかその先は、何も見えない果てしない世界が広がっているような気がしませんか? だからこそ<就職活動>とは、学生という肩書きを失くしたあと“何者”かになってそれぞれの道を作っていくために、大きな意味があるものなのかもしれなせん。さて、2016年10月15日、そんな“就活”をテーマにした作品が公開されます。平成生まれの作家・朝井リョウが直木賞を受賞し、大きな話題を呼んだ原作を映画化した『何者』です。

 この映画で描かれるのは、就職活動を通して自分が“何者”であるのかを模索する大学生たちのココロ模様。キャストには、冷静分析系男子=佐藤健、地道素直系女子=有村架純、天真爛漫系男子=菅田将暉、意識高い系女子=二階堂ふみ、空想クリエイター系男子=岡田将生、達観先輩系男子=山田孝之と、超豪華な若手実力派俳優達が勢ぞろい…!友情、恋愛、裏切りといった様々な感情が入り交じっていく中で、果たして彼らは<内定>を取ることが出来るのでしょうか。青春を終えたその後、<何者>かになることが出来るのでしょうか…。

結局僕らはさ 何者になるのかな
迷い犬みたいでいた 階段の途中で

大胆不敵に笑ったって 心臓はまだ震えていて
それでもまたあなたに会いたくて 
下手くそでも向かえ遠く向こうへ

大根役者でいいとして 台本通り踊れなくて
ただまっすぐ段を登っていけ
わかっちゃいたって待ちぼうけ
みっともないと笑ってくれ 僕に名前をつけてくれ
踊り場の窓に背をむけて 前を見て向かえ遠く向こうへ
「NANIMONO (feat.米津玄師)」/中田ヤスタカ

 そんな大注目映画『何者』の主題歌は中田ヤスタカ×米津玄師のコラボ曲です!作詞を手掛けたのは米津玄師。<迷い犬>のようにがむしゃらに走り回って、吠えて、助けてくれる誰かや自分の居場所を探して…。現代を生きる若者たちの姿が歌詞からも伝わってきます。そして、この歌の主人公はそういう生き方を自嘲しながら、それでも<遠く向こうへ>行こうと歌っているんです。あがいて、もがいて、必死に生きるその姿は、決してみっともないものなんかじゃないですよね。今日のうたコラムでは最後に、こんなセリフもご紹介いたします。

いい家に住んだり、いい車に乗ってるからって偉くねぇ
ただそいつらはそれが欲しかっただけなんだよ
東大出たからって偉くねぇ
オリンピック出たからって偉くねぇ
政治家だって別に偉くねぇ
ただそいつらはそうなりたかっただけなんだよ。
(中略)
俺たちは、ただ食って眠るだけの一生さ
たいした差なんかあるもんか
誰かを傷つけたり、騙したりしないですむなら
そうさ、俺たちに
たいした差なんかありゃしねぇんだよ。

 1995年に放送されていた野島伸司・脚本のドラマ『未成年』で描かれていたセリフです。その言葉のとおり、<内定>をいくつ取ろうと、<何者>になろうと、私たちに“たいした差なんかありゃしねぇ”のかもしれません。そう考えると、なんだか自然と“なりたい自分”の姿がシンプルになってくるのではないでしょうか…。肩書きよりも大切なものとは?本当に自分が欲しいものとは?そんなことも考えながら、映画『何者』と主題歌「NANIMONO (feat.米津玄師)」を楽しんでみてください!