ものにする

 2024年8月14日に“汐れいら”が自身初のCDである1st EP『No one』(ヨミ:ノーワン)をリリース! 今作は、汐れいらが紡ぐ“この世界にいる誰かの物語”が集まる、小説や短編集をイメージ。メジャーデビュー曲「Darling you」、“幸せを欲張って求めてしまう僕らの曲”である「味噌汁とバター」や、新たに制作された新曲4曲、さらにCD限定の2つの弾き語り音源が収録されます。
 
 さて、今日のうたではそんな“汐れいら”による歌詞エッセイを2週連続でお届け! 今回は第2弾。綴っていただいたのは、初のEP『No one』にまつわるお話です。デジタルではなく“ものにする”ということが、自身にとってどんな意味を持つのでしょうか。そして、どんな思いを込めてこのタイトルをつけたのでしょうか…。



今まで、わたしの作品は配信のみ(それだけでもう有難いのだけど)、その形にはならない音楽たちを、この度CDという、ものにすることができた。
 
いまの時代、かたちあるアナログなものより、データのようなデジタルなものの方が消せない危険性と同時に残していける安全性があって、だからわたしは音楽を配信できるということだけでじゅうぶんと思っていた。
 
でも、人や日々に転がっている「だいすき」とか「たいせつ」のパーツを持ち帰って自分のものにする、っていうあの満足感もすごくわかる。
 
わたしも「ほめ言葉」とかノートにまとめて持っておきたいし、ちいさい頃は空のきれいなグラデーションとかプリンセスのきらきらのドレスが欲しくて、それもノートにその絵をかいて宝物にしてたなと思う。
好きになるひとだって、あの人のあの素敵なところが欲しい、と思う(閉じ込めたりしないよ笑)。
 
だからわたしのCDを買ってくれる人は、わたしの「だいすき」で「たいせつ」な音楽を、自分の「だいすき」や「たいせつ」の箱に入れてくれるのかなって思って、うれしい。
 
はじめてのCDができあがっていくのには、たくさんのひとが含まれてて、というか音楽を作っていくうえでいつもたくさんの人を含ませてもらってて、きっと成分表見たら「だいすき」の項目がカロリーオーバーしちゃいそうな勢いです。
 
 
「やりたい音楽」と「やりたいひと」どっちを選ぶ?
とある人に聞かれたことがあって、わたしは「音楽に決まってる。」と思った。
わがままいうならどっちもだけど。
でも今こうして、やりたい音楽を、やりたい人とできていて、もっとやりたい音楽になっている。
やっぱわがまま言わせて。どっちも。
 
きっと曲ができていくたびに、やりたいことができていくほどに、自分自身の満足度NO.1を取るのは難しくなっていく。
 
はじめてのアルバム名、
 
『No one』
 
しっくりきてる。
 
わがままでも難しくても「だいすき」や「たいせつ」を
誰もやったことがない音楽を『ものにする』。
 
<汐れいら>



◆1st EP『No one』
2024年8月14日発売
 
<収録曲>
M1 糸しいひと
M2 味噌汁とバター
M3 うぶ
M4 踊り場のサーカスナイト
M5 グレーハートハッカー
M6 Darling you
M7 備忘ロック
M8 笑ってベイビー
 
ーBONUS TRACK CD onlyー
Darling you(弾き語り)
味噌汁とバター(弾き語り)