「普通」は要らない

 2023年10月4日に“GOOD BYE APRIL”がメジャー第2弾シングル「サイレンスで踊りたい」をリリース!この多様化の時代に “形に囚われない愛” をテーマにしたオトナ・シティポップ・ソング。楽曲を彩るサポートには、岸本亮(Pf.)、島裕介(Tp, Tb)、三輪紫乃(Vn)を迎え、ともにグルーヴィーでソウルフルなサウンドを作り上げております。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな“GOOD BYE APRIL”の倉品翔による歌詞エッセイをお届け。綴っていただいたのは、新曲「サイレンスで踊りたい」にまつわるお話です。はみ出すことが恥ずかしく、どうしても誰かと自分を比べて“普通”を追い求めてしまうあなたへ…。また、今回は音声版もございます。本人の朗読でもエッセイをお楽しみください。


倉品翔の朗読を聞く

小学校低学年から高学年になるタイミングで、僕は転校した。
不思議なもので、同じ市の違うエリアへの転校という近い距離での転校なのに、そこに集まる生徒たちの空気感は全然違っていたのをよく覚えている。
転校前の学校は、とりわけ僕のいたクラスは、なんとなく純朴な雰囲気だった。おかげで地味な僕も何の違和感もなく馴染めていた。一方で転校先の学校は、どことなくお洒落で大人っぽい雰囲気だった。転校生である僕は、そのコミュニティーに馴染むために少し背伸びをする必要があったし、自分がうまくこなせないことがあったりすると、周囲の視線が厳しく感じてとても恥ずかしかった。
その頃から僕は、「普通」という言葉を追い求めるようになった。
 
自分の好きなものや愛するもの、ことは、
人に教えたいときもあるけれど、
自分の中にそっと留めておきたいこともある。
どちらかというと僕は、後者であることが多い。
 
大人になるにつれて、自分の好きなもの、嫌いなものが明確になっていく。
得意なこともあれば、苦手なままのこともある。
そして当然、誰かと同じものばかりが好きになるはずもなく、ひとりの時間が好きだったり、大人になった今でもクワガタが好きだったり、新しい道を覚えることが好きだったり、なかなか理解されないような趣味趣向だって当然ある。
そんな自分の好きになるものの種類や度合いは、人と比べる必要のないものであり、自分の胸の中で大切に温め続ければいいものだと思っている。
 
恥ずかしい思いをしたくないという気持ちから「普通」でありたいと願い続けていた少年時代から、年を重ねていつからか「普通」という言葉を必要としなくなった。
仕事をするにしたって、人と違う得意なことや好きなことへの熱意は、何よりもパワーになるから。
 
でも生きていると、大人になった今も、みんなと同じものを好きと言ったり嫌いと言ったりしたほうがいいのかな? と思うような瞬間が時々訪れる。
僕が子どもの頃に感じていたように、はみ出すことが恥ずかしいことだという空気が、時折流れてくるのを感じる。
 
愛は、人に対しても、物事に対しても同じで、好きだと思う人やもの、自分の人生に必要だと思う人やものを、自分の感度で選びながら歳を重ねていく。
そこにルールや決まった形はなくていいはず。人と比べる必要もない。
 
音が鳴り止んだ、誰もいなくなった真夜中のフロアでもいい。
誰かとは違う、「普通」とは違う自分らしい人生を、目一杯踊れたらそれでいい。
 
そんなことを思いながら、「サイレンスで踊りたい」という曲の詞をかきました。
 
<倉品翔(GOOD BYE APRIL)>



◆紹介曲「サイレンスで踊りたい
作詞:倉品翔・延本文音
作曲:倉品翔