わたしが主人公だから。

 2023年2月22日に“竹内アンナ”が自身5枚目のE.P『at FIVE』をリリースしました。すでにファンにはお馴染みのこのタイトル。デビューE.P『at ONE』からスタートし、atというのが“Anna Takeuchi”の頭文字となっているそうで、随所に彼女の遊び心が散りばめられております。今作には、昨年9月から3ヶ月連続配信リリースされた「あいたいわ」「made my day feat. Takuya Kuroda / Marcus D」「サヨナラ」を含む全5曲が収録。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“竹内アンナ”による歌詞エッセイをお届け!綴っていただいたのは、今作の収録曲「WILD & FREE」にまつわるお話です。ダメダメで、カッコ悪くて、自分なんかは主人公になれっこないと思っているあなたへ。この曲とエッセイを受け取ってください。



大好きな漫画のストーリーが絶体絶命のピンチを迎えている。
手に汗握りながらもページをめくる手がどこか落ち着いているのはどうしてだろう。
心のどこかで「きっと大丈夫」と分かっているから。
だって、だって、
“あの人は主人公だから”
 
まるで幻みたいに、まるで嘘みたいに、
遠く遠く手が届かない存在。
 
どうしたら
わたしもそうなれる?
 
部屋の窓に切り取られた空を仰いでも
答えは掴めない。
 
ふぅ、っとついたため息が
冷たいフローリングに落ちる。
 
今日もうまく行かなかった、失敗をした。
そうやって挫折を繰り返すたびに
わたしは世界の隅っこにいるような気分になった。
 
もっと気楽に、ラフに、楽しく
生きていたいよなぁ。
 
なぁんてボソっと呟いても
聞いているのはきっと神さまくらい。
 
外のいいお天気とは裏腹に
グレーな霧がかかった心を晴らすために
珈琲でも入れようかと思った。
 
 
 
 
 
 
5分経過。
 
 
 
 
いや、面倒くさい。めちゃくちゃ面倒だ。
 
当たり前だけどわたしが珈琲を入れなきゃ
わたしはいつまでたっても珈琲が飲めないわけだ。
 
わたしはわたしがいないと
なあんにもできないんだな~
全く世話の焼けるやつだ~
と意味の分からないことを思った。
 
 
んん、待てよ、待て待て、意味、分かる、かも。
 
わたしの人生にわたしがいなかったら
もしかしてなにも始まらないんじゃないか?
 
珈琲を飲むことはもちろん、漫画を読みふけることも、
仕事で失敗しちゃうことも、誰かを好きになったりすることも、
全部、全部、わたしがいないとできないことじゃない?
 
そのとき、小さい部屋に散らばっていた点と点が
繋がった気がした。
 
 
そうか、そうだ。
 
 
主人公はヒーロである必要も、天才である必要もないんだ。
 
胸を張って生きていれば、
それだけできっと世界は回る。
 
ダメダメでも、かっこ悪くてもいいよ。
だってトントン拍子で成功を掴んじゃうストーリーなんて面白くないもんね。
 
転んだ数だけ、笑った数だけ、
興味深さの深さの部分が出るよきっと。
 
そう思うだけで
随分心が楽になった。
 
これからこの先もきっと
喜怒哀楽いろんな感情に振り回されるだろうし
良いことも悪いこともたくさん押し寄せてくるけれど、
大丈夫。
 
そのすべてがハッピーエンドを迎えるための伏線になる。
 
 
どうしてか?だってわたしの人生
“わたしが主人公だから”。

<竹内アンナ>



◆紹介曲「WILD & FREE
作詞:竹内アンナ
作曲:竹内アンナ

◆5th E.P『at FIVE』
2023年2月22日発売

<収録曲>
1.WILD & FREE
2.サヨナラ
3.生活 feat. パジャマで海なんかいかない
4.あいたいわ
5.made my day feat. Takuya Kuroda / Marcus D