その勢いで激しさで吹き飛ばしてほしかった、僕の願いだ。

 2022年6月22日に“Tani Yuuki”が新曲「夢喰」(読み:ばく)をリリースしました。夢を追いかけている人や、不安や葛藤を抱えている人に向けた詞が紡がれ、ネガティブな感情に喰われるのではなく、それを自分の糧にしてほしいという想いを込めて作られた楽曲となっております。
 
 さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“Tani Yuuki”による歌詞エッセイをお届け。綴っていただいたのは、新曲「夢喰」に通ずる想いです。今、何か夢を追っているあなたへ。だけど無責任に投げつけられる誰かからの声で、心が折れてしまいそうなあなたへ。この歌詞とエッセイが届きますように。



100の歓声よりも1つの罵声が気になってしまう。
これはきっと僕だけじゃないと思う。
 
 
ふと、SNSに目を落とせば
どうせ一発屋だの、同じような曲ばかりだの、歌詞が薄っぺらいだの
一部ではあるものの散々な言われようだ。
見なければいい、気にしなければいい
僕自身それで済む話だと思っていた。
が実際は違った
吸い寄せられるように目が追ってしまうのだ。
少しずつ心がすり減っていくのがわかった。
その疲れ切った心を癒してくれるのもまた
同じ場所に寄せられた何倍もの暖かい言葉
現実もそう
中、高、専門学校と夢を抱いてきた僕は
家族にも、友人にも、出会う業界人にもいろいろな事を言われてきた。
家に帰って、お風呂に入って、寝る寸前
布団の中で思い出したように独り反省会。
耳を塞いでも、頭を押さえても収まらない。
眠れない夜の始まりだ。
そんな凝り固まった長い夜を打ち砕いてくれたのは純粋に応援してくれる人の存在だった。
 
 
学生時代オーディションを受けていた頃の僕は怖いものなどなかった。
失うものなどなかった。
夢を追いかけるのに自分自身はどうなってしまったってよかった。
就職、結婚、帰郷
かつて同じ夢を目指した戦友たちはいつの間にか周りにいなくなった。
「次はお前の番だ」そう言われているような気がした。
 
 
当時堂々と大きく見えていた憧れの人の背中は悩みや葛藤を抱えながら息を切らせる繊細なものだったと知った。
今の僕も同じだからだ。
 
 
たくさん迷った、たくさん悩んだ
いっそやめてしまおうかと思う日もあった。
夢喰(バク)はその中で生まれた葛藤や不安を詰め込んだ曲。
その勢いで激しさで吹き飛ばしてほしかった、僕の願いだ。
 
 
人は人に自分を重ねる。
故にいつだって好き勝手なことを言ってくる他人もいるかもしれない。
そこには1ミリも責任感はなく。
痛くも痒くもない場所から攻撃してくる。
そんな重みも意味もない言葉に喰われてしまうなんてもったいない。
大事なのはその中にまれに現れる光を見つけられるかどうか。
闇を喰らって糧にできるかどうかだと僕は思うのだ。
 
 
散った声がごまんとあることは僕には関係ない。
一握りの才能が通れる狭き門が諦める理由にはならない。
仮に僕が100万歳を迎えたとして100万1歳の僕に夢を抱いていたい。
たとえ100万回今と同じ道を辿ったとしてもこれでいいと思える僕でいたい。
いつか100万年が過ぎ去った後僕の歌を聞いてくれた顔も知らない誰かが新しい夢を抱いてしまうような曲を作りたい。
ありえない事を唱え続けよう。
確かめようがないことを形にしよう。
僕はあなたの一歩先でいつまでもシンガーソングライターでいよう。
そう思うのだ。

<Tani Yuuki>



◆紹介曲「夢喰
作詞:Tani Yuuki
作曲:Tani Yuuki