僕なりの“らしさ”の答えは「何もないがある」でした。

 2022年3月2日に“神はサイコロを振らない”が、Major 1st Full Album『事象の地平線』をリリースしました。様々なチャレンジと共に幅広い音楽性を解き放ってきた彼ら。今作には、2020年7月のメジャーデビューから、1年半の間で凄まじい勢いで一曲一曲魂を込めて制作し続けた楽曲群が凝縮。2CD全20曲収録の大ボリュームで収録されております。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“神はサイコロを振らない”の柳田周作による歌詞エッセイをお届け!綴っていただいたのは、アルバムのラストを飾る1曲「僕だけが失敗作みたいで」に通ずるお話。自分にはなにもない。そう卑下して、自信を失ってしまいがちなあなたへ。この歌詞とエッセイが届きますように。



文才なんか雀の涙ほどしかない僕に再び歌詞エッセイの話がきました。歌ネットさんありがとうございます、そしていつもお世話になっております。
 
エッセイエッセイ掛け声の如く言うてますけど、そもそもエッセイとは何ぞやとGoo○le先生に聞いてみました。
 
1. 自由な形式で、気軽に自分の意見などを述べた散文。随筆。随想。
2. 特殊の主題に関する試論。小論。
 
なるほど、であれば目一杯羽を伸ばして筆を走らせようじゃないかと気が楽になりました。
 
一年半で20曲も書いておきながらアレですけど、ぶっちゃけ僕は幼少期から活字が苦手で。読み書きが不得意だった僕は読書タイムなんかとにかく苦痛でした。本を読み進めていくうちに気がつくと同じ行を何度も何度も読み返していて、音で例えると右耳から左耳に抜けてくみたいな。その上読み返している事にすら気が付かないなんてこともあって。
 
そういう病気か疑ってしまうほど、周囲の誰しもがすらすらと本を読み進めていくことに苛立ちと不安を覚えていました。
 
大人になった現在、克服できたかと聞かれれば答えはノーで。やっぱり本を一冊読破するのにも普通の人間の10倍ほど時間と気力を消費します。なんとか読み切れるようにはなったので上手く付き合っているつもりですが…。
 
気付けば物書きを生業として生きる道を選んだこと、皮肉と呼ぶべきかなんと呼ぶべきか。
 
実は最近、頭の中でぐるぐる回る得体の知れない“何か”を文字に起こすことで「気持ちや記憶の整理整頓ができる」とポジティヴに捉えられるようになりました。そう思えたキッカケが
 
 
という『事象の地平線』ラストを飾る楽曲です。神サイにとって記念すべき初めてのフルアルバムの、それも最後の最後になんちゅうタイトル付けんのよ…と我ながら呆れてしまいますが、今では何よりも大切な作品で。
 
詞を書く上で、歌の表現において何が最も“らしさ”なのかを随分と永い間考えていました。頭の中を巡る“何か”の正体、僕なりの“らしさ”の答えは「何もないがある」でした。
 
自分なんか…と卑下してはその度自信を失って、誰かを羨んで、嫉妬して、疲弊して。そうこうしているうちに自分には何もないのだと言い聞かせる癖がついていたのだと気がつきました。仮にそうだとして、何もないのであれば何もないことを文字と旋律で表現できる。
 
改めて芸術が僕ら人間にとって必要不可欠なものか考えさせられた僕は、小学校の頃通知表で美術の教科を1~5で採点する制度が本当にクソだなと思い始めました。何よりも自由で、100人いれば100個正解が存在するのが芸術だから、だからこそ勉強も運動も不得意な子どもたちに対して、「君の表現が全て正解なんだよ」と言ってあげるのが大人の役割というか、使命だろうよと。
 
凄く話が脱線しまくって勝手に一人で熱くなってしまいました、すみません。
 
とにかく僕が伝えたいことは、「自分には何もないのだ」という人間こそ、その空白を、その虚無を全部芸術にぶつけてやればいいじゃないか。そんなふうに考えています。
 
そう気付かせてくれた、大切な楽曲です。

<神はサイコロを振らない・柳田周作>



◆紹介曲「僕だけが失敗作みたいで
作詞:柳田周作
作曲:柳田周作

◆Major 1st Full Album『事象の地平線』
2022年3月2日発売
 
<収録曲>
01. イリーガル・ゲーム
02. タイムファクター
03. 巡る巡る
04. 初恋<神はサイコロを振らない×アユニ・D(BiSH/PEDRO)×n-buna from ヨルシカ>
05. 泡沫花火
06. LOVE
07. 1on1
08. 愛のけだもの<神はサイコロを振らない×キタニタツヤ>
09. 遺言状
10. 徒夢の中で
 
Disc2
01. あなただけ
02. クロノグラフ彗星
03. 少年よ永遠に
04. 目蓋
05. 導火線
06. パーフェクト・ルーキーズ
07. 夜永唄 - Unplugged 2022
08. プラトニック・ラブ
09. 未来永劫
10. 僕だけが失敗作みたいで