凜とした私で「ただいま」を言えるように。

 2021年9月8日に“Hakubi”がメジャーデビューアルバム『era』をリリース。先行配信シングル「アカツキ」「在る日々」「道化師にはなれない」、そして映画『浜の朝日の嘘つきどもと』の主題歌「栞」を含む全12曲を収録。バンドが歩んできたこれまでの歴史と、図らずもこの1年、一変した生活。その中で、自らと向き合いながら、それでも前に強く突き進んでいく、これから先の“時代”へのメッセージを詰め込んだ意欲作です。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“Hakubi”の片桐(Vo.)による歌詞エッセイをお届けいたします。今回は第2弾。綴っていただいたのは、今作に収録される新曲「栞」のお話です。今の自分にたどり着くまでに、支えてくれた大切なひとたちを頭に浮かべながら、このエッセイと歌詞を受け取ってください。
 
~歌詞エッセイ第2弾:「栞」~

お久しぶりです。Hakubi vo./gt. 片桐です。

先月に引き続きエッセイなるものを書かせて頂きます。
今回は、1st Album『era』の一曲目に入っている
「栞」という曲です。
この曲は、
映画『浜の朝日の嘘つきどもと』の主題歌として
自分自身の学生時代に支えてくれた友人や家族、先生を思い浮かべ書き下ろした楽曲です。
拙い文章ではありますが、お付き合いください。


「栞」

横断歩道で信号待ちをしている後ろ姿が
とても似ていて急に声が聞きたくなった。
電話をかけると、一言で自分だと気付いた。
照れ臭くなって、
「なんでもない、似ている人がいたから」
そう伝えると、
それだけでも嬉しいのだと笑っていた。
不思議とその声がどんな顔をしているのかわかった。

昔の自分は何もかもを諦めていた。
学校の人間関係も、ずっとやっていたスポーツも、
1番になれなかった自分にはもう何もない、
価値がないのだと塞ぎ込んでいたことがあった。
優しい言葉もうまく受け取れずに
嫌味に聞こえてしまうくらい張り詰めていた。

何も知らないくせに、と
怒りをぶつけてしまった事もある
そんな自分にも変わらずあっけらかんとした
「いってらっしゃい」「おかえり」をくれた
その言葉が救いだった。

高校卒業を機に、
地元である岐阜を出てしまった私は、
年に2、3度ほどしか顔を見せなくなってしまった。
音楽をやって今度メジャーデビューすることも、
ちゃんと伝えられていないのだ。
その人がくれたものは大きすぎて
まだ返しきれないけれど、
いつか強くなった姿を見せられるように
凜とした私で「ただいま」を言えるように
精一杯今日も歌い続けようと思う。

<Hakubi gt./vo. 片桐>

◆メジャーデビューアルバム『era』
2021年9月8日発売
初回限定盤 WPZL-31869 ¥4,000(税込)
通常盤 WPCL-13298 3,000(税込)

<収録曲>
1 栞
2 在る日々
3 辿る
4 フレア
5 :||
6 道化師にはなれない
7 color
8 灯
9 mirror
10 誰かの神様になりたかった
11 悲しいほどに毎日は
12 アカツキ