「過去の作品を磨いてキラキラに生き返らす」ということ。

 2020年にCDデビュー25周年を迎えた、シンガーソングライター・川村結花。今日のうたコラムでは、その記念企画として2020年~2021年の2年を通じてのご本人によるスペシャル歌詞エッセイをお届けしてまいります!更新は毎月第4木曜。

 シンガーソングライターとして活躍しながら、様々なアーティストへの楽曲提供も行い、ここ数年はピアノ弾き語りのLiveをコンスタントに続けている彼女。この連載でどんな言葉を綴ってくださるのでしょうか…!今回は第13回をお届けいたします。

第13回歌詞エッセイ:リメイクもよきかな

2021年になりました。今年もまた月イチでこちらのページに歌詞コラムを書かせていただけることとなりました。本年も毎月第4木曜日18時頃に更新してまいりますので、どうぞゆらりぶらりお付き合いくださいませ。

さて、今回のテーマは「リメイク」=過去に作ったものを新たに作り直すこと。当エッセイにおいては、既にリリースされた作品のリメイクというお話ではなく、まだ世に出る前の制作段階において、自分の昔書いた未発表作品を引っ張り出してきて手を加え作り直して新作とする、という意味での“自分内リメイク”のお話です。

ちなみにわたしは、つい数年前までこのリメイクということに多少の抵抗感がありました。20代30代の頃は「全力で書く。そして書いたら忘れる。そして次へ!」という方針で書いては投げ捨てて、を繰り返し突き進んでいた自分。それは後ろを振り返りたくないというよりも、過去の作品に今の作品が負けたような気がするのが許せなかった、今新たにイチから書いた方がもっといい作品が書けるに決まってる、というような頑固な思い込みによるものでした。

しかしながら、40代半ばあたりからだんだんとその考えも変わっていきました。そのくらいだと作詞作曲を始めて20年を過ぎたあたりということもあり、自然と書きかけのフレーズそのまんま放置したものや、ボツになったまるまるワンコーラスぶん、そんな作品のカケラたち、いわゆるストックがそこそこたくさん溜まっていました。

その中には何年も忘れられない美メロがあったり、ひさびさに聴いてみたらあの時はピンとこなかったけど今は妙に心に響く切ないフレーズがあったり。たとえ当時フィットしなかったからといって今もしないとはかぎらないんだな、ダイヤの原石(なのかもしれないカケラたち)がいっぱいあったんだな、それをずっと邪険にして来たんだな、自分、あほやな、、、。と。

試しに引っ張り出してきた過去の曲を今聴いていただいた折、とても気に入っていただけたり、サビだけ生かして他を書き直したものが、やはりすごく褒めていただけたり。なにより自分自身で「ええやん、、、」と思える作品に仕上がるのだということが実感できるようになったのでした。

なので今ではわたし“自分内リメイク”をおおいに推奨している次第であります(←自分に)。もちろん書き下ろし中心ではありますが、カケラちゃんたちの「そろそろ外、出して~」という声も聞きつつ。その時の時代感や自分の気分とも相談しつつ。

なにしろ“自分内リメイク”それは「過去の作品を磨いてキラキラに生き返らす」ということ。この考え方に行き着いてから、とてもラクになったし曲作りの幅も広がりました。20代の頃の自分の作品に50代の今の自分が「あのな、ここはな、こないしてこないしたほうがええんちゃうか」と赤ペン入れてく感じ、でしょうか。なにしろそれでいい作品が生まれればもう万事OKなのであります。そして実際生まれているのであります。

ということで今年もまだLiveの予定は立てられないでいますが、そのぶん作品づくりのための時間とし、ひたすら曲作りに邁進、そして1曲でも多く世の人に届けることができますよう精進して参りたいと本当に本当に思います。がんばろう自分!

<川村結花>

◆プロフィール

川村結花(シンガー・ソングライター)
大阪府生まれ。東京芸術大学作曲学科卒業。1995年、アルバム「ちょっと計算して泣いた」でシンガーソングライターとしてデビュー。同時に作詞家作曲家として楽曲提供を行い、主な提供楽曲は、夜空ノムコウ(作曲)をはじめ2019年現在までに100曲以上。2010年「あとひとつ」(作詞作曲共作)でレコード大賞作曲賞を受賞。2017年、アルバム「ハレルヤ」をリリース。ここ数年は、提供楽曲の作詞作曲も行いながら、ピアノ弾き語りのLiveをコンスタントに続けている。

オフィシャルサイト:https://www.kawamurayuka.com

◆歌詞エッセイバックナンバー
【第1回】
【第2回】
【第3回】
【第4回】
【第5回】
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