さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“林部智史”によるスペシャルエッセイを3週に渡ってお届け!今回はその第1弾。綴っていただいたのは、「一発録り」という録り方にまつわるお話です。一発録りの難しさとは? その難しさがあるからこそ生まれる魅力とは? 今作と併せて、エッセイも是非、ご堪能くださいませ…!
~歌詞エッセイ第1弾~
新型コロナウィルスが蔓延する前に今回のアルバムのレコーディングが終わっていて本当に良かったです。楽曲によっては20人~30人で同時演奏していただいているので、きっと少し遅れていたら録れなかったと思います。
「一発録り」
基本的にはそのような録り方をしています。ツルッと歌ったテイクを出来ればそのままCDにしたいものです。しかし我々の脳裏には天使と悪魔が常に戦っています。
天使「一発録りの方がグッとくるって」
悪魔「一生残るんだから綺麗にしようぜ」
天使「コンサートは一発勝負だよね?」
悪魔「お前下手くそなんだから直した方がいいに決まってるだろ!」
このようにして一曲一曲争いは絶えません。
みなさまの感覚としては、運転免許証の顔写真を思い浮かべていただけたらと思います。あれは何回撮っても納得いく顔に写らないですよね。例えば前回は口角が下がっていたから、今回は上げてみようとします。そしていざ撮ってみると、なんとも不自然で気持ちが悪い仕上がりに。だがしかし待った無く、何年間かはその顔を様々な人に見せなくてはいけません。そんな顔写真を自然に直してしまえると言われたらどうでしょう?
小悪魔「少しだけ口角を直したら?」
悪魔「寝癖も直せるらしいよ?」
魔王「全て直してしまえ!」
こうなっていくでしょう。
だけどそういうことって、意外と自分しか気付かないものですよね。逆に少し気になっている子の免許証を覗いた時に、あまりに完璧すぎるよりも、寝癖がついてた方が僕はキュンとする気がします。そこから笑い話にもなりますし、思い出になりますよね。
有名な話ですが、マリリンモンローは履いている靴のヒールを片方2センチ削っていました。ぎこちなく歩くことで完璧さを消し、セクシーさに繋げ、それが「モンローウォーク」とまで呼ばれ人々に愛されています。
人は自分自身には完璧さを求めますが、
他人の隙に惹かれるのかもしれませんね。
そうすると、歌を直すということも、少しもったいないことをしている気がしてきます。今なお、過去の自分の曲を聴いていると直したい所が多いです。
ただ、
CDはコンサートのように。
コンサートはCDのように。
という言葉を胸に、機械ではなく、人が歌うからこそ生まれる隙を大切にしたいと思っています。
<林部智史>
◆ニューアルバム『II』(読み:セカンド)
2020年7月29日発売
[CD+DVD] AVCD-96518 ¥4,500(税抜)
[CD] AVCD-96519 ¥3,000(税抜)
<収録曲>
01. あの頃のままに
02. タカラモノ
03. 君だけが消えない
04. Perfect Day
05. 二つの横顔
06. 明日の色
07. 人生で一番幸せな日
08. You
09. やさしいサヨナラ
10. 夢
11. 恋衣
12. 僕はここにいるII
13. あなたへ