寝顔の後ろでずっと泣いていたことなんて一生知らないでしょう。

 2020年5月20日に“CHIHIRO”が新曲「もうおしまい」を配信リリースしました。3ヶ月連続配信リリースの第2弾となる今作。切ない失恋を描きながらも、前向きになれるメッセージが込められており、アレンジャーにはトオミヨウを迎えて制作。CHIHIROの新たなスタンダードナンバーが誕生したといえる1曲となっております。

 さて、今日のうたコラムではそんな新曲を放った“CHIHIRO”の歌詞エッセイをお届け!<さよなら私の恋 人生の中できっと多分... 一番好きだったよ でも運命じゃなかったんだ>と幕を開ける歌。この物語には一体、どんな背景が見えてくるのでしょうか。新曲「もうおしまい」に通ずる小説風のエッセイ、是非、歌詞と併せてご堪能ください。

~歌詞エッセイ:「もうおしまい」~

私の楽曲は泣き歌と呼ばれる失恋ソングが多いのですが、歌詞に共感してくれる方が多くて今回の歌詞もすごくリアルに言葉を選んで描きました。

新曲の「もうおしまい」は曖昧な恋を終わりにする恋の歌です。おしまいという言葉はマイナスなイメージもありますが、終わりにすることで新しい扉が開くはじまりのきっかけの言葉でもあると思います。大好きな人とのさよならを決断する、選択する事はとても勇気が必要です。この曲を聴くことで、何かきっかけになる、勇気になるそんな前向きなパワーになる力になれたらって思ってます。

今日は新曲の「もうおしまい」の世界観を描いたエッセイを描かせて頂きました。楽曲にあわせて読んでみてください。


ーもうおしまいー

雨の降ったあとのけだるい匂いが消えない夜。
今日もなんてことのない一日が終わろうとしていた。


午後22時30分
「今から行ってもいい?」
いつもこうやって彼から
気まぐれに突然ラインが届く。

だめだって分かっていながら私は即答する。

「いいよ」

彼には恋人がいる。
でも9か月前から私達は曖昧な関係が続いてる。

“だめだよね....”

毎回自問自答しても“会いたい”を選んでしまう。
馬鹿だな....
そう、寂しさってやっかいだ。


午前0時25分
インターホンが鳴る。

彼の顔をインターホン越しに久しぶりに見た。
心が舞い上がりそうになった...でも抑えた。

玄関を開けた途端
決まってキスをしてくる。

触れる温度も鼻につく香水の香りも
その声も笑顔も...全部
一瞬で魔法にかかってしまうんだ。

“ずるいよ...”心で呟いた。

いつもこの魔法のせいで
私は恋人ごっこをしてしまう。



私は彼と過ごす時間が好きだった。


少しライトを落として
彼の好きな曲を夜中に二人で聴く時間。
ベッドの上で横顔をみながら色んな話をする時間。

私の中にある隙間に心地よく入ってくる、
そんな不思議な人。

この部屋にいるこの時間だけは
永遠のような錯覚になる

私だけのものだったらいいのに...
これが運命だったらいいのに...



午前2時20分
彼のLINEが鳴る。

「彼女?」

少し無言になった彼は冷静に

「うん...そう。」

「こんなことしてていいのかな、私たち」
「うーん、だめだけど、落ち着くんだよね。一緒にいると」

落ち着くって何だろう...
彼は返事をいつもぼやかす。

「ねぇ、私の事好き?」

「うん...そうだね」

何度この質問しただろう...
私が欲しいのは“うん”じゃなくて“好き”なのに...

いつか欲しい2文字をくれるかな.....
心変わりを待っていたけど
その時は来る気配もなさそうだ。

重くしないように責めなかった。
離れたくなくて核心は迫らなかった。

でもね心が痛いよ.....

彼は私が泣きそうな顔してるのにも気づかないまま...
ベッドに横になっていつのまにか眠ってた。



午前5時55分。
私は一睡もできないままだった。

いつも彼がこの部屋に来た日は寝れなくて
色んな感情で胸がいっぱいになる。

好きとやめようが行き来して
夜から朝に変わる光に現実を知らされる。

あと少しで1年。
平行線は平行線のままで
何も変化してないことに気づいた。
むしろその線は滲んできている。

私だけが本気なこの恋は
泣くことが増えただけ..
傷つくことが増えただけ..

寝顔の後ろで
ずっと泣いていたことなんて一生知らないでしょう。

私の好きな人は誰かの恋人。
きっと変わらない現実。



「もうおしまい...」

彼の背中に小さく伝えた。
光が見えない恋なんてきっと幸せになれない。



ずっと必死に切れないように
握ってた糸は赤色じゃなかった。

ーサヨナラ、私の恋ー

次は愛し愛される恋探すんだ。

<CHIHIRO>

◆紹介曲「もうおしまい
2020年5月20日リリース
作詞:CHIHIRO
作曲:CHIHIRO