さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放つ“大比良瑞希”による歌詞エッセイを3週連続でお届け!今回は第1弾、第2弾に続く最終回。綴っていただいたのは、彼女にとって“歌詞を書く”とはどんなことなのかというお話です。歌詞を書いてみたいけれど、書き方がわからない、正解がわからない、というあなた。是非、この記事を読んでみてください…!
~歌詞エッセイ最終回~
こんにちは。じわじわあつくなってきて、いい感じですね。こんな日は、先日無事にリリースできましたアルバム『IN ANY WAY』の中から、M5「RESCUE」をぜひ、流してみてほしい大比良瑞希です。
さて前回は、深海生物の謎に迫ります。という、謎な終わり方してしまいましたので、第3回の書き始めに困り、仕方ないので検索してみてしまいました「深海生物の謎」。歌詞のエッセイを書いてください、とのことだったのに、完全にズレていきそうです。こわいです。
ただ実際、検索先をたどってみると、どんどん引き込まれちゃう。海は皆好きで身近な場所なのに、その海の底の、95パーセントはいまだ人目に触れたことがない、らしい。深海でクジラが歌を歌っているのは本当か、どうして深海のタコはあんな巨大なのか、水中都市の噂はどうなのか、そんなことを考えただけでも、ワクワクする。やっぱり答えがわからないもの、想像し放題な物事って、脳内がくすぐられる。大人になって、毎日のTo Doに追われると、なかなかこんな事を考えることも少なくなっちゃいますけどね。
歌詞を書く行為は私にとって、このくらい奥深いところがあります(無理やり繋げた)。実際、書き始めて10年以上経つけど、全然辿り着かないし、答えもわからないし。手中にいつまでも入ってくれない感覚が、ちょっとあります。なんでだろう。でも好きだ、という片思いなこの感覚。
歌詞を書いてみたいと思っている人、それなのに歌詞の書き方がわからない人、きっと結構いるんだろうな、と思うのは、歌詞の書き方の本や記事って結構たくさんあるから。そして事実、私もそうだったから。
そもそも私が歌詞を書き始めたのは、中学3年生の頃。今ふと思い出したけど、確か映画『チェケラッチョ』を見て、主人公がとても簡単そうに歌を作っていて、これなら私でも曲作れるんじゃないかと思い立ち、家に帰って簡単な気持ちでポロっと弾き歌ったら、ポロっとできちゃった、最初はそんな雰囲気だった気がする。それからは、自分だけのオリジナルソングを作ることに夢中になって、授業中も夜中も歌詞を書いていました。
10年以上経った今、あの時より難しく考えてしまう時がある。考えれば考えるほどこんがらがって、焦って歌詞の本など読んでみたこともあるけど、一向に解決しない。いつの間に、あの頃の日常のポロっとした感覚を、どこかに忘れてきてしまった。気付くと足が着かず深海まで潜り込んでいて、真っ暗な中どんどん迷い込んでいくような日々があった。深海を知らなかった頃の方が、海は簡単に楽しく描けていたような、誰しも大人になったらそんな感覚に陥る時って、きっとあるよね。
うまく書こうとしてしまうし、正解を探そうとしてしまうけど、でも実際歌詞の書き方に、正解も法則も、本当はないと思うのです。正解は私であって、あなたであって。創作において、本来正解やルールや法則なんて、なくていい。新しくていいし、オリジナルでいい。歴史を変えてきたミュージシャンこそ、そうだったりするように。何にも縛られず自由に、ありのままの脳内を注ぎ込むことを、いつになっても全身で楽しんでいるかどうか、の方が大事だし、伝わるはず。
深海の奥深くで一人、息を潜めて右左迷うのは楽しみつつ、表面ではキラキラザブーンと勢い良く。海のバランスで歌詞を書くって、新しくていいかも? こんなこと、自分でもこのエッセイを書き始めていなければ、出てこなかったことです。不思議。1文字が連なっていけば、すでに第一歩。これからも、たくさん言葉と背景を紡いでいきたいと思います。
というわけで、エッセイ3回分読んでくださった方、どうもありがとうございました。きっとまたどこかでお会いできますように…!
<大比良瑞希>
◆2ndアルバム『IN ANY WAY』
2020年6月3日発売
UXCL-241 ¥2,500(本体)+税
<収録曲>
01.Eternal My Room
02.甘い涙
03.無重力
04.SAIHATE
05.RESCUE
06.In a small lake
07.ムーンライトfeat.七尾旅人
08.いかれたBABY
09.ミントアイス
10.からまる feat. 大比良瑞希/KERENMI
11.Somewhere
12.Real Love -熊井吾郎Remix-