たった一行の歌詞に心を動かされ、人生が変わる人もいるはず。

 2020年5月13日に“マイアミパーティ”が2nd E.P.『p.q.b.d』をリリースしました。彼らは、溢れる焦燥感と機関銃の様に連射される言葉を グッドメロディに乗せてリスナーの胸を撃ち抜く4人組ロックバンド。今作には、サビで爆発するキラーチューン「p.q.b.d」をリード曲とした、全6曲(新曲3曲+ライブ音源3曲)が収録されております。

 さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放ったマイアミパーティの“さくらいたかよし”による歌詞エッセイを3日連続でお届け!今回は第1弾第2弾に続く最終回。綴っていただいたのは、収録曲「」にまつわるお話。彼が音楽という“道のり”のなかで、今までもこれからも大切にしていきたいこととは。是非、その想いを受け取ってください…!

~歌詞エッセイ最終回~

最近、物を書くことが昔と比べて少しだけ増えて来た。とても嬉しく思っている。今までは自分の部屋で、あるいは近所のコーヒー屋さんで、身に起きた出来事や詩のようなものを書いてブログやSNSにアップしているだけだった。たまに閲覧数が増えると、嬉しかった。

人から頼まれ、コラムやエッセイを書くようになると、人目を気にするようになった。自由気ままにブログを書いていた時は、椅子にもたれかかって、だらりと書いていた。だらりとした姿勢で、わりかし真面目なことを書いていた。

だけれど、コラムやエッセイ、他人から見られる事を前提に物を書く時は少し違う。初めて椅子に座った子供のように背筋をピンと伸ばし、書いた文章を何度も読み返して、消して、書いてを繰り返す。蛇口をひねったように出てくる言葉に、いつもより少しだけおしゃれな服を着せ、肩をポンと叩いて送り出す。

歌うことも最初はそうだった。憧れているミュージシャンが使っていたギターに似ているギターを買って、そのミュージシャンと同じような高さでギターを背負い、鏡の前に立ち、そこからしばらく鏡を見つめてはうっとりした。憧れのミュージシャンに近づいた気がしていたのだ。

気持ちと技術というのは、大体は見合ってないもので、その時もそうだった。ミュージシャンになれたつもりでいたが、その時の僕はギターを買ってそれを背負っただけなのだ(この時想像していたより何倍もギターは難しかった)。

しばらくして、ギターが弾けるようになり、それに合わせて歌を歌えるようになった。部屋で一人で歌ってる時間が、何より楽しかった。だけれど、それだけじゃ満足できなくなって、ライブハウスで歌うようになった。徐々に耳を傾けてくれる人が増えて、会場が少しずつ大きくなった。

いろんな人を巻き込むのは難しい。例えば、小説を読む人の中にも、起承転結のわかりやすいストーリーを求めている人もいれば、絶妙な比喩表現を求めてる人もいて、時たま主人公が発する名言のようなものを待っている人もいる。様々だ。

ただ単純にまっすぐに「君が好き」という言葉だけ使っていても、同じようなメロディや同じような演奏で歌い続けても、振り向いてくれる人はやっぱり限られてしまう。

だから僕は今までも、これからもありとあらゆる方法で、表現で歌っていくつもりだ。やっぱり、少しでも多くの人に歌を聞いて欲しい。「わかってくれない!」で終わらせるのではなく、「どうしたら振り向いてくれるだろうか」と色んなアプローチをしていこうと思う。

そんな僕がやっているバンド“マイアミパーティ”が5月13日にCDを全国発売した。その中に「道」という曲が入っている。これはまさに、これまでの道のりを歌にした。

僕らがいつもライブをしているのは、ホールやアリーナではなく、ライブハウス。音がでかい。そんな中で僕の歌ってる歌詞、一言一句聞き取ることは難しい。だから、僕はお客さんの耳に届いた言葉、どの言葉が届いてもいいように、AメロにもBメロにもサビにもCメロにも、自信のある言葉を散りばめた。爆音の中、ふと聞き取ることのできた、たった一行の歌詞に心を動かされ、人生が変わる人もいるはず。まさに、僕がそうだったから。

読んでくれてありがとうございました。
いつかライブハウスで会えることを祈っております。

おわり

<マイアミパーティ・さくらいたかよし>

◆紹介曲「
作詞:さくらいたかよし
作曲:マイアミパーティ

◆2nd E.P. 『p.q.b.d』
2020年5月13日発売
329-LDKCD ¥1,364+税

<収録曲>
1.p.q.b.d
2.未来予報
3.道
4.シスター Live ver.
5.レイトショー Live ver.
6.一縷 Live ver.