クリープハイプ

逆にもうブスとしか言えないくらい愛しい。

 2019年11月16日に現メンバー10周年を迎えた“クリープハイプ”が、下北沢CLUB Queにて開催された10周年記念ライブで新曲愛す(読み:ブス)を初披露しました。同曲は、11月18日(月)のFM802『ROCK KIDS 802』で初オンエア。さらに11月22日までの5日間、FM802での独占OAが決定しております。さて、歌ネットではその新曲の歌詞掲載がいち早くスタートです!今日のうたコラムでもご紹介!

逆にもうブスとしか言えないくらい愛しい
それも言えなかった
急ぎなほら遅れるよ やがてドアが閉まるバス
「愛す」/クリープハイプ


 こうして幕を開ける歌。まず、最初のひと言<逆に>が印象的ですね。おそらくこのワンフレーズの前には、ある想いが省略されております。それは「今まで君には<ブス>だとかしか言えなかったから、愛なんて伝わっているはずないよな」という後悔。だけど“<逆に>=実は”そこにはいつだって<もうブスとしか言えないくらい愛しい>気持ちがあったのです。

 そんな本音を冒頭で吐露している主人公。ただ、結局“<それも>=そんなことさえも”言えなかったため、本当の気持ちは歌に閉じ込められたまま。そして<君>は<バス>に乗り込み、二人の間を断ち切るかのように、やがてドアは閉まります。新曲「愛す」に綴られているのは、その別れのとき、今さらだけど、今だからこそ、溢れ出す想いなんです。

君がいいな そばがいいな
やっぱりそばには 君じゃなくちゃダメだな
違うよ 黄身って 誤魔化して
蕎麦の中の月見てる

ベイビー ダーリン 会いたい
メイビー ダーリン 曖昧
ベイビー ダーリン 会いたい
ような気がしないでもない
「愛す」/クリープハイプ


 とはいえ、歌のなかに溢れ出す想いすら、やっぱり素直ではありません。愛しさを<ブス>なんて言葉で誤魔化していたように、<会いたい>気持ちを<曖昧>で薄めてしまったり。茶化すように<君>を<黄身>だと、<そば>を<蕎麦>だと、言い直してみたり。でも、深読みすればこれも<逆に>比喩として考えられるのかもしれません。

 つまり本当は“蕎麦には黄身じゃなくちゃダメ”なのと同じように<そばには 君じゃなくちゃダメだな>と言いたいのです。そばにいてくれると人生をより美味しくしてくれる存在。まるで<月>に似た<黄身>みたいに輝いている光のような存在。それが<君>なんだと、そんなことを思いながら<蕎麦の中の月見てる>のではないでしょうか。

肩にかけたカバンのねじれた部分がもどかしい
何度言っても直らなかった癖だ
もう元に戻してあげられなくなるんだな
自分でその手を離したくせに
「愛す」/クリープハイプ


 歌の後半にはこのようなフレーズも。この場面では、<肩にかけたカバンのねじれた部分>をいつも<元に戻して>あげていたこれまでと、気づきながらも手を出せない<もどかしい>今と、<もう元に戻してあげられなくなる>これからという、過去・現在・未来が伝わってきます。二人の軌跡や終わりを噛みしめるのって、こういう何気ない<癖>を思い出した瞬間だったりしますよね…。

 そしてここで、今まで<肩にかけたカバンのねじれた部分>を何度も<元に戻して>あげていた“この手”こそが<その手を離した>のだと明らかになるのです。自ら別れを選び、今、バス停で<君>を送り出そうとしている主人公。でも歌詞を読む限り、決して愛が途絶えたわけではなさそう。では、どうして<その手を離した>のでしょう。

いつもほらブスとか言って素直になれなくて
ちゃんと言えなかった
ごめんね 好きだよ さよなら 時間通りに来るバス
逆にもうブスとしか言えないほど愛しい
それも言えなかった
急ぎなほら送れるよ やがてドアが閉まるバス
「愛す」/クリープハイプ

いつもほらブスとか言って素直になれなくて
ちゃんと言えなかった
好きだよ いまさら ごめんね 時間通りに出るバス
逆にもうブスとしか言えないほど愛しい
それも言えなかった
ねじれてもう戻らない 見上げれば空には月
「愛す」/クリープハイプ


 悲しいくらいにひねくれている主人公のことです。もしかしたらどこか遠くへ行こうとしている<君>のためにわざと<自分でその手を離した>のかもしれません。好きだからこそ、離れるという形の愛を選んだのです。憎み合っての別れならわざわざ<君>を送ったりしないでしょう。そう考えると、胸中に溢れる<ごめんね>と<好きだよ>の切ない痛みがいっそう際立ちます。

 また、サビの歌詞表記に注目してみると<急ぎなほら送れるよ>というフレーズがありますね。歌の冒頭に綴られていたのは<遅れるよ>という表記でした。でも<送れるよ>には、主人公の“最後くらい素直な気持ちでちゃんと君を送り出せるよ”という気持ちが込められているのではないでしょうか。同時に“僕は大丈夫だよ”という強がりも含まれているような気もします。

 ラスト<見上げれば空には月>と幕を閉じてゆく歌。思い出すのは、あの<蕎麦の中の月>でしょう。これからはもうそばに<君>はいなくなります。それでも<月>に似た<黄身>みたいに輝いている<君>の存在は、離れても心を照らし続けてくれるはず…。そんな希望的なフレーズにも感じられるのです。<逆にもうブスとしか言えないほど愛しい>ひとがいるあなたへ。是非、その想いを重ねながら、クリープハイプの「愛す」を味わってみてください。歌詞のひとつひとつの表記にも注目です…!

◆紹介曲「愛す
作詞:尾崎世界観
作曲:尾崎世界観
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