イチオシ!

器用に生きられない自分だったからこそ、言葉に蓄積されたんだ。

 今日のうたコラムでは、作家・作詞家として活躍している“高橋久美子”さんのスペシャル歌詞エッセイを3週に渡ってお届けいたします。今回は第1弾第2弾に続く、最終回です。これまで、作家としての活動と並行して、大原櫻子、コアラモード.、私立恵比寿中学、ももいろクローバーZ、足立佳奈など、数々のアーティストに歌詞を提供してきた彼女。
 
 2019年10月16日“原田知世”がリリースするバラード・セレクション・アルバム『Candle Lights』に収録される新曲「冬のこもりうた」の作詞も担当しております。尚、同アルバム収録の「銀河絵日記」と「2月の雲」も高橋久美子の作詞楽曲。そんな彼女が歌詞エッセイの最終回で綴ってくださったのは、言葉と共に生きてきた軌跡です。最初に歌詞を書いたときのこと、チャットモンチーの歌詞のこと、初の詩画集のこと、原田知世さん「2月の雲」のこと…。是非、最後までじっくりとご堪能くださいませ…!

【歌詞エッセイ最終回:歌詞と詩】

 私が詩を書き始めたのは中学生の頃で、人に言えない気持ちを成仏させるためだけに書いていた(今読むと恥ずかしい)。高校生、大学生になっても同じで誰にも見せるつもりなどなかった。歌詞はすごい。書いて、人が見るどころか歌ってくれるのだ。大学で軽音部に入り、オリジナルバンドを始めたとき、歌詞を書いてほしいとボーカルの先輩に頼まれた。詩を書く要領で書いてみたら、なんなく書けた。じゃあ次は曲をつけてみてと言われて、練習室にあるグランドピアノで作ってみた。一応ついたが、あまりパッとしなかった。先輩がサビはこんな風にしてみたら?と言葉の最後を伸ばして、その延長でスカ―ンと抜けたサビを作ってくれた。おお、いい感じ。なるほど、音楽には構成があるのか。私にはAメロやBメロという概念がなかった。ただただ言葉を連ねていくと、にょろにょろごにょごにょした曲になることがわかった。でも、曲は先輩が作る方がいい。私は詩だけ書くことにした。

 大学4年でチャットモンチーに正式加入し、チャットで本格的に歌詞を書き始めた。やっぱり、ただただにょろにょろとした作文のような詩であった。構成もへったくれもなかった。けれど、えっちゃんの手にかかればどんどん曲ができていった。それもとびきりメロディアスでスパイシーなのが。「シャングリラ」や「サラバ青春」「ハナノユメ」などは大学の頃に作ったものだった。「シャングリラ」は

“時には僕の胸で泣いてくれよ”

の「よ」の部分がはみ出るから、そこだけ一拍多くすることにした。後で人に言われて、なるほど、そこだけ5拍子だなあと気づいたが、自分たちにその意識はなかった。「言葉を変えてほしい」とえっちゃんから言われたことはほとんどなく(足りないときは付け足したが)あくまでメロディーが言葉に寄り添っていた。当時何を考えていたのか、どんどんと記憶が薄れていくけれど、歌詞を読めば、あるいは音楽を聴けば、私の気持ちがよくよくわかる。長い作文や日記を読むよりもわかると思う。

“何でもない毎日が本当は
記念日だったって今頃気づいたんだ”


なんて歌っている「サラバ青春」にはびっくりするけど、私はしっかりと気づきながら生きてきたんだなあと思う。器用に生きられない自分だったからこそ、言葉に蓄積されたんだ。

 そうして気づけば私は十年以上作詞をして、詩も書いてきた。歌詞として詞は飛び立つことになったが、詩は見せるつもりがなかった。けれど今度は詩画集という形で出版され、人々の手に渡っていくようになった。歌詞よりも音がない分、歌ってくれない分、言葉が体当たりする。出版されるのはものすごく勇気がいることだった。家族や友人には見せられない。だったら何故出すのだろう。わからない。本当に変な気持ちだ。

 十二月に発売される詩画集『今夜 凶暴だから わたし』は、34才から約4年間をついやして書いてきた詩の中から選抜隊が入ることになっている。やっぱり嬉しい。誰かの人生のお供をできることは幸せなことだなと思う。私の分身のような、それでいて自分さえも知らない自分のような気がする。

 さて、今週でコラムも最後ですからね。最後に原田知世さんの「2月の雲」をご紹介します。こちらも私の作詞で、とても気に入っています。

“君のこといつも見てた
君のこと何も知らない
君のこと全部わかるよ
嘘じゃない”

“私を全部伝えたいよ
私を忘れてもいい
私は息を吸って
歌うから”


 この曲は、先に曲ができていて、「ムーンライダーズの『9月の海はクラゲの海』のアンサーソングのようなイメージなんだよね」と作曲・プロデュースの伊藤ゴローさんが仰っていて、私も初めて曲へのお返事のような気持ちで歌詞を作ってみた。手紙の返事を書くようでとてもおもしろかった。歌詞を作るのは楽しい。曲やアレンジや声とコラボレーションして晴れやかに空を飛べる。

 ああ、今コラムを書いていてわかった。詩だけを書いていた中学生頃よりも私は随分と明るくなった。人が好きになった。人を思うようになった。それは音楽のお陰である。これからも歌詞と詩の両輪でゆっくりと進んでいけたらいいなと思う。連載3回、読んでくださってありがとうございました。

<高橋久美子>

◆Information
12月中旬に詩画集
『今夜 凶暴だから わたし(仮)』を
ちいさいミシマ社から出版。
詩:高橋久美子 絵・紙版画:濱愛子 価格未定
様々な女性の視点から書かれた高橋の鋭い言葉と、個性的な風合いを持つ濱の紙版画が寄り添い呼吸する。今を生きる全てのあなたへ。

<高橋久美子イベント情報>
11/2「朝活!高橋久美子の作詞教室」
11/4 食と農業のイベント「東京米友達」 
11/8 Kaco×高橋久美子の「音楽×朗読ライブ、アイノメ」
等、イベント情報は高橋久美子公式HPを御覧ください。公式Twitterも!

◆原田知世バラード・セレクション・アルバム
『Candle Lights』
2019年10月16日発売
UCCJ-2171 3,000(+tax)

<収録曲>
1. Love Me Tender - Haruomi Hosono Rework
2. 冬のこもりうた (新曲)
3. ソバカス
4. 2月の雲 - Hiroshi Takano Rework
5. 夏に恋する女たち
6. イフ・ユー・ウェント・アウェイ
7. ハーモニー
8. 銀河絵日記 - Goro Ito Rework
9. いちょう並木のセレナーデ
10. ベイビー・アイム・ア・フール
11. SWEET MEMORIES
12. 夢のゆりかご

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