いろいろわかる… 杉山清貴 スペシャル・ロングインタビュー!

 

杉山清貴、ロングインタビュー!「なんか構えちゃうんですよね、自由になれない…」28作目となるソロアルバム『FREEDOM』と、オメガトライブからソロまで 40年の歴史を辿るベスト『オールタイムベスト』が 2023年 5月10日に 同時発売! さわやかでポップで、キャッチーで心地よい!日本の「MR.AOR」!



インタビューの最後に、読者プレゼントあり!



Sugiyama  Kiyotaka

杉山 清貴

28th Album『FREEDOM』
Best Album『オールタイムベスト』


★ 1983年「杉山清貴&オメガトライブ」としてデビューし、ヒット曲多数!
★ 1986年には ソロデビューし『さよならのオーシャン』がヒット!
★ シティポップの先駆者で、Japanese AOR を牽引し続けるシンガーソングライター!
★ 今年、2023年4月21日には、デビュー40周年! 日本の「MR.AOR」!

★ 28作目となるソロアルバム『FREEDOM』は、イメージを裏切らない AOR!
★ さわやかで、ポップで、キャッチーで、おしゃれで、やさしく、心地よい!

★ オメガトライブからソロまで 40年を凝縮した『オールタイムベスト』も同時発売!
★ レコード会社の垣根を越えて、全て当時のオリジナル音源で全33曲収録!

★『オールタイムベスト』と『FREEDOM』を合わせて聴きたい!

 

 

杉山清貴 - Too good to be true (Official Music Video) 28th Album『FREEDOM』収録
 

杉山清貴 - Flow of Time (Official Music Video) 28th Album『FREEDOM』収録


杉山清貴 - Nightmare (Official Music Video) 28th Album『FREEDOM』収録

 
 


■ リリース情報
 
 
 
杉山清貴「FREEDOM」【初回限定盤】

アルバム CD + Blu-ray
2023年 5月10日 発売
KIZC-90716~7
¥9,350
KING RECORDS
 
<CD 収録内容>
1 Too good to be true [作詞:杉山清貴 作曲・編曲:福田直木]
2 Nightmare [作詞:杉山清貴 作曲・編曲:Billy Takakura]
3 I am here [作詞:和 悠美 作曲:Dick Lee 編曲:成田 忍]
4 Flow of Time [作詞:杉山清貴 作曲・編曲:佐藤 準]
5 Goodbye day [作詞:トベタ・バジュン 作曲・編曲:松室政哉]
6 Steppin' in the Rain [作詞・作曲・編曲:神村紗希]
7 楽園 PASSENGER [作詞:前田たかひろ 作曲・編曲:堀川真理夫]
8 オレたちのナイトフィーバー [作詞・作曲・編曲: 成田 忍]
9 祈り [作詞・作曲:和 悠美 編曲:北川翔也]
 
<Blu-ray 収録内容>
Sugiyama Kiyotaka Band Tour 2022(2022年12月24日(土)LINE CUBE SHIBUYA)
01 The Christmas Song
02 brand-new day
03 心のHoliday
04 僕の腕の中で
05 由比ヶ浜。君と・・・
06 Wishing your love
07 波
08 永遠のもう少し
09 LONG DISTANCEを越えた夜
10 風のLONLEY WAY
11 ALONE AGAIN
12 THANK YOU FOR CHRISTMAS
13 渚のすべて (MORNING MOON, RISING SUN)
14 真夏のイノセンス
15 Omotesando'83
16 Stay The Night Forever
17 雨粒にKissをして
18 Yokohama north dock
19 GOSPELの夜 (Gospel Night)
20 Rainy Day in New York
21 さよならのオーシャン
22 Flow of Time
23 Rainbow Planet
24 最後のHoly Night

 

 
 
杉山清貴「FREEDOM」【通常盤】

アルバム CD + Blu-ray / Digital
2023年 5月10日 発売
KIZC-718~9
¥4,400
KING RECORDS
 
<CD 収録内容>
1 Too good to be true [作詞:杉山清貴 作曲・編曲:福田直木]
2 Nightmare [作詞:杉山清貴 作曲・編曲:Billy Takakura]
3 I am here [作詞:和 悠美 作曲:Dick Lee 編曲:成田 忍]
4 Flow of Time [作詞:杉山清貴 作曲・編曲:佐藤 準]
5 Goodbye day [作詞:トベタ・バジュン 作曲・編曲:松室政哉]
6 Steppin' in the Rain [作詞・作曲・編曲:神村紗希]
7 楽園 PASSENGER [作詞:前田たかひろ 作曲・編曲:堀川真理夫]
8 オレたちのナイトフィーバー [作詞・作曲・編曲: 成田 忍]
9 祈り [作詞・作曲:和 悠美 編曲:北川翔也]
 
<Blu-ray 収録内容>
・Nightmare Music Video
・Too good to be true Music Video
・Flow of Time Music Video
 
 
 

 

 

 

杉山清貴「オールタイムベスト」

アルバム CD(3枚組)
2023年 5月10日 発売
KICS-4099~101
¥4,180
KING RECORDS

<CD 収録内容>

[DISC 1] オリジナル音源
01 SUMMER SUSPICION
02 君のハートはマリンブルー
03 ふたりの夏物語 NEVER ENDING SUMMER
04 DEAR BREEZE
05 ガラスのPALM TREE
06 さよならのオーシャン
07 最後のHoly Night
08 水の中のAnswer
09 SHADE -夏の翳り- (スペシャルリミックスバージョン)
10 風のLONELY WAY
11 僕の腕の中で
12 プリズム・レインに包まれて
13 青空が目にしみる
14 夏服 最後の日
15 僕のシャツを着てなさい
16 Glory Love

[DISC 2] オリジナル音源
01 夢を見たのさ
02 Another Wave
03 波がサイコーだし
04 好きなことを!
05 あの夏の君と
06 風の記憶(with 菊池桃子)
07 Lost Love
08 雨粒にKissをして
09 眠れぬ夜に 〜I miss you〜
10 月に口づけ
11 My sweet lady
12 そして…夏の雨に
13 Omotesando'83
14 Rainbow Planet
15 Other Views
16 Hand made
17 海辺の楽園 (トベタ・バジュン feat.杉山清貴)

[DISC 3 BONUS DISC]
1 さよならのオーシャン (2023 Acoustic ver.)
2 僕の腕の中で (2023 Acoustic ver.)
3 あの夏の君と (2023 Acoustic ver.)
4 月に口づけ (2023 Acoustic ver.)

 

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杉山清貴 キングレコード

 

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杉山清貴&オメガトライブ 歌詞一覧

 




■ 杉山清貴 スペシャル・ロングインタビュー

 

 

 杉山清貴が、作り、歌う音楽は、本当に心地よい。まさに、日本の「MR.AOR」だと思う。

 AOR を音楽的に定義することは難しいが、いわゆる AOR と呼ばれている、シカゴ、ピーター・セテラ、ビル・チャンプリン、ボズ・スキャッグス、ボビー・コールドウェル、クリストファー・クロス、スティーリー・ダン、TOTO、エアプレイ、ラリー・リー、ナイトフライト…… らに代表されるような人たちの音楽は、都会的で、メロウで、リラックスして聴ける「心地よい大人のロック」となるだろう。

 加えて、杉山清貴の場合、常にどこか海を感じさせてくれるのが特徴だ。

 1983年4月21日に、シングル『SUMMER SUSPICION』(作詞:康珍化 / 作曲・編曲:林哲司)で「杉山清貴&オメガトライブ」としてデビューしてから、今年、2023年の4月でちょうど40年になる。

 「歌謡曲のエッセンスを含んだ、日本で独自に進化した AOR」、それが今では「シティポップ」と呼ばれ、「杉山清貴&オメガトライブ」の曲も、松原みき、竹内まりや、山下達郎、大滝詠一、吉田美奈子、大貫妙子、尾崎亜美、EPO、南佳孝、大橋純子、角松敏生、杏里 …… らとともに、最近では、日本のみならず世界中で聴かれている。

 1985年12月の「杉山清貴&オメガトライブ」解散後も、半年も経っていない 1986年5月に ソロ・デビュー曲『さよならのオーシャン』(作詞:大津あきら / 作曲:杉山清貴 / 編曲:佐藤準)が発売され、いきなりの大ヒット。その後も、80年代後半にかけてシングル・ヒットを連発し、ソロ・アーティストとしての確固たるポジションを確立した。

 そして、今年、2023年5月10日には、デビュー40周年を記念し、40年の歴史を辿る初のオールタイム・ベストアルバム『オールタイムベスト』と、3年振りとなる オリジナルアルバム『FREEDOM』が同時発売された。

 『オールタイムベスト』は、シティポップを代表する作曲家 林哲司が提供した「杉山清貴&オメガトライブ」の一連のヒット曲『SUMMER SUSPICION』『君のハートはマリンブルー』『ふたりの夏物語 NEVER ENDING SUMMER』などから、ソロ・デビュー曲『さよならのオーシャン』、自身最大のヒット曲『最後のHoly Night』や、『水の中のAnswer』『風のLONELY WAY』などのヒット曲が、レコード会社の垣根を越えて、全て当時のオリジナル音源で収録されている。

 さらに、2020年に発売された 前作、27作目のオリジナルアルバム『Rainbow Planet』の収録曲まで、ソロのオリジナル・アルバムから『夢を見たのさ』『あの夏の君と』『風の記憶(with 菊池桃子)』『月に口づけ』『Rainbow Planet』『Other Views』……など、まさに、杉山清貴のこれまでを凝縮したような 全33曲が収録されていて聴きごたえがある。

 そして、この『オールタイムベスト』に、同日発売された 28作目となる最新のオリジナル・アルバム『FREEDOM』を加えることで、杉山清貴の40周年は完成する。

 最新アルバム『FREEDOM』は、前作の『Rainbow Planet』に続き、実によくできたいいアルバムだ。明るく、さわやかで、ポップで、キャッチーで、おしゃれで、やさしく、心地よい。何度も聴きたくなり、ずっと聴いていられるアルバムになっている。40年もの間、休むことなく音楽を作り続け、時代と共に歌声や楽曲は変わっていっても、抜けの良いボーカルは変わらず心地よく、その声のイメージは全く変わらない。

 それどころか、歌声は、爽やかさはそのままに、年と共に響きがより豊かになっていて、より太く伸びやかで、説得力が増している。

 自身が「やりきった」と話す 2016年に発売された 24作目のソロ・アルバム『OCEAN』を作ったあとは、それまでずっと続けていたセルフ・プロデュースをあっさりとやめて、Martin Nagano をプロデューサーとして立て、今作『FREEDOM』が 4作目となる。

 もちろん、杉山清貴は、詞も曲も書くが、最近は、自作の詞曲にこだわらない。新作アルバム『FREEDOM』でも、3曲で作詞をしているだけで、『さよならのオーシャン』や『最後のHoly Night』などのような曲が書けるのに、作曲は 1曲もしていない。

 自分の可能性をさらに広げるために、信頼できるプロデューサーにゆだね、やり方を変えたことで、逆に、これまでと変わらない「杉山清貴のイメージ」「杉山清貴らしさ」を作り出している。それは、「自分より他人の方が自分のことをよくわかる」と考えているからだろう。そういう、肩肘はらず、自然体で、余裕を感じさせるところがまたいい。

 しかし、新しいところを開拓していきたいという情熱は変わらない。プロデューサーを置いたこともそうだが、それによって若い作曲家との新しい出会いもあり、ライブでのバンドメンバーも若い人たちとやっている。

 杉山清貴という人は、そのイメージどおり、明るく爽やか、気取らず謙虚で、ハワイの甘い香りの風のような実に気持ちのいい気さくな人だ。

 

<もくじ>

1 40年目、28作目のオリジナルアルバム 〜「最近は、詞を書くのが楽しいなと…」〜
2 セルフプロデュースをやめた理由 〜「なんか構えちゃうんですよね、自由になれない…」〜
3 変わらない歌声 〜「若い頃よりも高いところはラクに出るんです…」〜
4 初のオールタイム・ベストアルバム 〜「自分の選んだ色だけに染まっていってしまうんで…」〜

5 前身のバンド「きゅうてぃぱんちょす」 〜「もう、洋楽・邦楽、関係なく、なんでも…」〜
6 オメガトライブとしてデビュー 〜「プロになったら売らなきゃいけないんで…」〜
7 バンド解散後、5ヶ月でソロデビュー 〜「もう必死でしたよ…」〜
8 シティポップ・ブームで再注目 〜「やっぱり、新しいところを開拓していきたい…」〜



1 40年目、28作目のオリジナルアルバム 〜「最近は、詞を書くのが楽しいなと…」〜

ーー 28作目となる杉山清貴の最新オリジナル・アルバム『FREEDOM』は、明るく、さわやかで、ポップでキャッチー、おしゃれで、やさしく、実に心地よい。何度も聴きたくなり、ずっと聴いていられるアルバムだ。25作目のオリジナル・アルバム『Driving Music』(2017年)以降、ソロ・デビュー以来、それまでずっと続けていたセルフ・プロデュースをやめ、Martin Nagano がプロデュースして 4作目となる。まさに、杉山清貴のイメージどおりの 良質な「和製 AOR」で、抜けの良いボーカルも、響きが豊かで、やさしく、変わらず心地よい。

杉山: ありがとうございます。いや、もう、おっしゃっていただいた通りで、出来上がって聴いて「気持ちいいな」と思いましたね。で、この 9曲っていう曲数が「かなり少ないかな」って最初は思ったんですけど、結局、「ちょうどいいかな……」っていう感じになりましたね。

ーー 「もっと聴きたい」と思うところで終わっているのがいい。

杉山: そうですね。それこそ、何かアナログ的な感じで……(笑)、曲数的には。

ーー 今作でも、Martin Nagano がプロデュースしてからの一連のアルバムと同様に、自身の詞曲にこだわっていない。杉山清貴 自身は、全 9曲中 3曲で作詞をしているだけで、作曲はしていない。

杉山: 僕が詞を書いてるのは、もちろん最初から詞がなかったんですけども、結構、Martin(Nagano)さんが連れてくるアーティストさん、作家さん、みんな詞も書くので、だから、基本的に「詞も書いててください」って言ってるんですよ。その曲を書いてくださったアーティストの方に詞も書いてもらうのが一番いいので、「書いてください」っていうことで……。ですから、僕は、その楽曲のデモテープを聴いたときに、「これ、ちょっと言葉を乗せたいな」って思ったりして書くことが多いですね。

ーー 今回、杉山清貴が作詞した3曲『Too good to be true』(作曲・編曲:福田直木)、『Nightmare』(作曲・編曲:Billy Takakura)、『Flow of Time』(作曲・編曲:佐藤 準)もそうやって選んだのだろうか?

杉山: そうです。ばーっと曲を聴いて、「コレは(詞を)書きたい」っていう感じ……。最初、とくに、『Flow of Time』って曲は、去年、結構、早めにいただいてて、「(作曲が)準さん(佐藤準)だったら、オレ書くわ!」って書いたんですけど……。なんて言うかな……、メロディを聴いたときに、「自分の言葉がはめやすいかな」とか「この言葉を入れたい」とかっていうところで僕は立候補してるんです。

ーー 『Flow of Time』を作曲した 佐藤 準 は、杉山清貴のソロデビュー曲で大ヒットした『さよならのオーシャン』(作詞:大津あきら / 作曲:杉山清貴 / 編曲:佐藤準)で編曲を担当している。『Flow of Time』の間奏には、AOR を代表するようなバンド「シカゴ」の『Saturday in the Park』のアレンジがオマージュとして入っている。

杉山: そうそうそう……(笑)、準さん(佐藤準)の遊びね。あと、実際、『Goodbye day』(作詞:トベタ・バジュン / 作曲・編曲:松室政哉)とかは、もう、本当は僕が書く気満々たんすけど、満々すぎちゃってね……(笑)、あまりにも考えすぎちゃって、「無理かもしれない……」と思って……(笑)。あと、他の詞で時間がちょっとかかってたってのもあるんですけど……。

杉山: でも、わりと、なんか最近は、詞を書くのが楽しいなと。メロディはもう、何となく自分が作るものはわかってるので、別に何か新しいものはないなと思ってますんで……(笑)。

ーー 今回、杉山清貴が作詞した 3曲も、言葉の乗せ方がうまく、メロディとのマッチングがいいから、歌詞カードを見なくても言葉が耳に残る。やはり、自分でも曲を書く人の言葉の乗せ方だと感じる。言葉もサウンドなので、その意味に加えて「音としての響き」も大事だ。

ーー たとえば、アルバム 1曲目に収録されている『Too good to be true』(作詞:杉山清貴 / 作曲・編曲:福田直木)のサビの「♪Too good to be true〜」や「♪I will keep loving you」など、「このメロディには、この言葉しかない」と思わせるくらい見事なはまり方だ。よく思いつくなと思う。

杉山: ありがとうございます。「♪Too good to be true〜」とかってのは、最初、聴いたときに「♪タッ タラララ〜」っていうのが……、それこそ、あの AOR の時代に「good to be なんとか〜」っていうのが多かったんですよ。で、「使いたいな」と……、ハマるので。で、いろいろ、昔の歌詞を思い浮かべながら、最初に「Too」を付ければ「♪タッ タラララ〜」にハマるなと思って、で、ハマるところをはめて、そっから詞の全体の構成を考えていったんですよ。

ーー 『Too good to be true』は、前作のアルバム『Rainbow Planet』(2020年)に収録されている『Other Views』と同じく、福田直木 による作・編曲の曲で、1992年生まれながら、メロディもアレンジも「まさに AOR」という感じのいい曲だ。

杉山: そうなんです。ありがとうございます。

ーー 『Nightmare』(作詞:杉山清貴 / 作曲・編曲:Billy Takakura)でも、サビの「♪You just feel the love」がうまくはまっている。

杉山: その英語のところから考えて、詞の世界観を構築していくって感じでしたね、今回は。

ーー そして、その「♪You just feel the love」直後の「♪こんなにも 自由だと 感じれるなんて」が、一度、聴いただけで耳に残る。

杉山: ありがとうございます。そこは、まさに、狙い通りです……、はははは……(笑)。

ーー 杉山清貴の場合、そうやって、サビのキャッチーなメロディのところから詞を考え、そこから全体を構成していくようだ。

杉山: え〜っと……、そうですね……、固めるまで何日かかかって、で、方向性が見えたらもう、なんかそのまま「す〜っと」降りてくる感じですね。だから、それまで、最初にその方向性を決めるのが難しいですよね。

ーー 曲先行で詞を乗せる場合、メロディの音数に言葉を合わせなければならないため、正解のない難しいパズルを解くようなことになる。

杉山: そうですね〜。だから「♪Too good to be true〜」とかも、この言葉がありきで、「じゃあ、どんな詞にしようか……」っていうのをいくつか書いていって、「違うな」「違うな」「違うな」ってなって、「違うから明日やろう、明後日やろう」ってやって、それで、何かのタイミングですっと完成させられるっていう……。でも、全然、苦痛じゃない。どっちかっていうと、今、作詞は楽しいですね。

ーー 逆に、今回、自分で作詞をしていない曲の中で、印象的な言葉を聞いた。

杉山: あっ、あの〜『楽園 PASSENGER』(作詞:前田たかひろ / 作曲・編曲:堀川真理夫)で、「なんか面白いな〜」と思ったのが、最後に「あしたという明るい日が来る」(「♪それでも明るい日と書く "明日" と言う日は来る」)ってあるじゃないですか。それって、僕らの世代だと、60年代ぐらいに流行った「♪明日(あした)という字は 明るい日と書くのね~」(『悲しみは駆け足でやってくる』アン真理子)を思い出しちゃって……(笑)。でも、それが、今の若い人たちにするとすごく新鮮な言葉で、「あ〜、なんかもう 1回使い終わったんだけど、また時代が変わるとそれが新鮮になるんだな」っていうのをすごい感じました。

ーー 『楽園 PASSENGER』では、「♪イチバン今日が若いから そう明日より」というところもいい。

杉山: そうですね〜、これもちょっとおしゃれな感じですよね〜、「イチバン今日が若い」……。

 

2 セルフプロデュースをやめた理由 〜「なんか構えちゃうんですよね、自由になれない…」〜

ーー 杉山清貴は、1986年のソロ・デビュー曲であり大ヒットした『さよならのオーシャン』(作詞:大津あきら / 作曲:杉山清貴 / 編曲:佐藤準)をはじめ、『最後のHoly Night』(作詞:売野雅勇 / 作曲:杉山清貴 / 編曲:笹路正徳)、『水の中のAnswer』(作詞:売野雅勇 / 作曲:杉山清貴 / 編曲:松下誠)、『SHADE〜夏の翳り〜』(作詞:青木久美子 / 作曲:杉山清貴 / 編曲:佐藤準)、『風のLONELY WAY』(作詞:田口俊 / 作曲:杉山清貴 / 編曲:林哲司)……などのシングル・ヒットした多くの曲を自身で作曲している。しかし、ここ最近のソロ・アルバムでは、あまり作曲をしていない。最新作となる今作『FREEDOM』では、1曲も作曲はしていない。

杉山: そうなんですよ。べつに、(曲を)書きたいっていう意欲が湧かないんですよ……(笑)。なんだろうな……、やっぱり、僕らの世代が曲を書くモチベーションって、それこそ、あの時代、昔の AOR みたいに、「あっ、このアレンジかっこいいな! こういう曲作りたいな!」っていうとこから始まるんすよね。もう「サウンドから欲しい」っていうのがあるので……。で、そのサウンドも、別にもう今「何でもあり」な時代なんで、そこに固執する必要ないかなと思うと、「まあ、別にメロディはいつでも生めるし、今、別に書かなくてもいいかな」って……。「いい曲書く人がたくさんいるからいいや」と思って……、はははは……(笑)。そもそも、僕の中では、2016年の『OCEAN』ってアルバム出したときに、もう完結しちゃったんです。

ーー 『風の記憶(with 菊池桃子)』(作詞:秋元康 / 作曲:杉山清貴 / 編曲:小林信吾)や、『あの夏の君と』(作詞:渡辺なつみ / 作曲:杉山清貴 / 編曲:小林信吾)、『好きなことを!』(作詞・作曲:杉山清貴 / 編曲:HINATAspring)などが収録されている 2016年に発売された 通算 24作目のソロ・アルバム『OCEAN』は、ソロ・デビュー以来、24作にわたって続けてきたセルフ・プロデュースで作られた最後のアルバムだ。その後は、プロデューサー に、Martin Nagano を起用している。

杉山: はい、そうです。だから、あそこで一応完結してるので……。まあ、やりきったっていうか、「自分のやりたい世界は、もうずいぶんやったかな」というか、もう全部出したから、それで、セルフ・プロデュースするのは一区切りついたかなと。

ーー そんな境地になるものだろうか?

杉山: まあ、僕の場合はね……、なりましたね。で、今は、詞に興味がありますね。曲は、(南佳孝らとの)ユニットとかも結構やってるから、そういうところで違う世界観で作るのがおもしろくって。ただ「杉山清貴の世界」ってなると、なんか身構えるというか、固まっちゃうんですよね〜。

ーー ファンが求める杉山清貴のイメージ、ブランドイメージとも言えるようなものがある。聴く方は、毎回、そのイメージを同じように期待するから、それを裏切れないという気持ちになるのだろう。

杉山: そうなりますよね。自分が作るとなると、やっぱそっちにどうしても意識がいっちゃうんですよね。だったら、ユニットみたいに全く違う世界観で作ってるのが今は楽しいかなっていう……。それを自分の世界でもやればいいんですけど、なんか自分のってなると構えちゃうんですよね〜、自由になれない……、ははははは(笑)。

ーー そういう「ある程度、やりきった」という思いと、おそらく、第三者からの客観的な目で「杉山清貴の世界」を作ってもらいたいという思いから、プロデューサー に Martin Nagano を起用したのだろう。「完結した」と言うアルバム『OCEAN』のあと、2017年『Driving Music』、2018年『MY SONG MY SOUL』、2020年『Rainbow Planet』、そして、今作『FREEDOM』で、Martin Nagano がプロデュースして 4作目となる。Martin Nagano との出会いは、南佳孝からの紹介だった。

杉山: そうなんですよ。「誰か(プロデューサーで)いい人いませんかね?」みたいなことを、いろんなところで聞いてて、で、出会ったんだと思うんですけども……。僕も全然存じ上げなかったですし、最初、「変わった人だな……」と思って。元々エンジニアの方で、だから音にうるさい……(笑)。音にうるさいっていうことは、全てにうるさいんですよね……(笑)。だから、ミュージシャンにもうるさいし、作家にもうるさいし……、だから、ちょっと……、なんだろうな……、面白い人材ですよね。とても面白いですよね。なかなかいないと思います。

ーー Martin Nagano との 1作目となった 25作目のアルバム『Driving Music』(2017年)では、初めてだから、探り探りな面もあっただろうと思う。

杉山: そうですね……。

ーー しかし、結果、出来が良かったから、これまで 4作続いている。

杉山: 僕がその『Driving Music』の時に、「あっ、この人(Martin Nagano)は、作家(作詞作曲家)の持ちネタが面白いな」と思ったんですよ。それこそ、あのアルバムで、『雨粒にKissをして』(作詞:杉山清貴 / 作曲・編曲:manzo)て曲があるんですけど、その「manzo」って全く知らなかった人だったんですけど、「こんな曲書くやついるんだ!」っていうような新しい発見を(Martin Nagano は)ものすごく持ってきてくれるんですよね。

ーー 同じ様に、今作『FREEDOM』でも、福田直木、Billy Takakura、堀川真理夫、松室政哉、神村紗希 ら、若い作家が多く参加している。そういう若い作家が書いてくるメロディが新鮮だと言う。

杉山: はい、そうですね。やっぱ、自分の中にはない世界ですし……。

ーー しかし、結果的には、ちゃんと、見事に「杉山清貴の世界」が出来上がっている。

杉山: ああ……、そうですね〜。『Too good to be true』(作詞:杉山清貴 / 作曲・編曲:福田直木)の福田(直木)くんとかは、もう、まかせときゃ、いい作品書いてきますから……(笑)。

 

3 変わらない歌声 〜「若い頃よりも高いところはラクに出るんです…」〜

ーー プロデューサーに Martin Nagano を起用したことで、歌録りのレコーディングも変わった。

杉山: (Martin)Nagano さんがプロデューサーになってからは、スタジオ入って、何回か歌って、「もうだいたい録れてますから大丈夫ですよ〜」って言われて「えっ?」みたいな感じで……、はははは……(笑)。自分でセルフ・プロデュースしてたころは、自分でボーカルの「OKテイク」も決めてたんで、もう納得いくまでやっちゃうんですよね。

ーー 「もっといいものを……」と思うと、正解がないだけに、きりがない。

杉山: そうそう。きりがないし、納得いくまでやっても、結局、ファースト・テイクが良かったりとかするので、そこら辺はもう割り切って、もう(Martin)Nagano さんにまかせてます。あの人の耳を信じて、「録れたよ」って言うんだったら、もう録れたんだなっていう……(笑)。だから、「それ以上やらしてくれ」とかも、最初の頃は、やっぱり言ってたんですよ……、「もう2〜3回やらせてくださ〜い」って。でも、最近は、もうないです。だからラクです。

ーー 多くの歌手が言うように、一番最初に歌ったテイクが一番魅力的だったりする。回数を重ねると、きれいに整ってはいくが、最初にあった魅力がなくなっていったりするものだ。ホイットニー・ヒューストン や 美空ひばりも、レコーディングでは数回しか歌わず、ほとんどファースト・テイクが使われたと聞く。

杉山: そうなんです、そうなんです。ただただキレイになっていくだけなんですよ。だから、早いですよ、だいたい、4テイクとかで、1時間くらいで終わっちゃう。「あと、よろしく〜!」みたいな感じで……(笑)、「外科手術をしてください」とかって……、はははは……(笑)。

ーー いまのレコーディングでは、何本か録った歌から、それらのいいところだけを繋いで 1本の歌にするのが普通だ。そのことを「外科手術」と言ったのだ。歌ったあとは、自分の良さを知ってくれているという信頼のもとに、プロデューサーの Martin Nagano に完全にまかせている。自分が判断するよりも、その方が良いものができると思っているためだ。

杉山: まあ、そういうのもね……、なんか普通に言えるようになったっていうかね……。昔だったら、ちょこちょこ(歌を)切り貼りするのって、すごく恥ずかしいなと思ってたんですけども、「いやもう関係ないっすよ、そんなの! いいものを作ればいいんですよ!」ってね。歌えてないわけじゃないので。

ーー 今回のアルバムでは、『Too good to be true』や『Nightmare』、『Flow of Time』といった、期待通りの曲に加えて、新しいタイプの曲も収録されている。メジャー調、3連バラードの『Steppin' in the Rain」(作詞・作曲・編曲:神村紗希)も新鮮だ。

杉山: ああ……、これもちょっと初めてですよね、こういう曲は。

ーー とくに「♪踊るように 生きていける」のペダルポイントになっている(ベース音が動かず、上のコードのみが変化している)ところが心地よく耳に残る。

杉山: はい、そうなんです。そこ、めっちゃ気持ちいいですよね。

ーー そして、このアルバムで、いや、ここ最近のソロ・アルバムを聴いて驚くのは、60歳を過ぎてもなお、歌が進化しているということだ。以前よりも、響きが豊かになっている。

杉山: ああ……、よく最近、言っていただけますね。

ーー 全く年齢を感じさせない、むしろ若々しい歌声で、高い音でも苦しそうでなく、伸びやかで心地よい。

杉山: 苦しくはないですけど、タイヘンですよ……はははは……(笑)。

ーー 多くの場合、加齢と共に声も衰えていくのが普通だが、たとえば、今回、同時発売された『オールタイムベスト』に収録されている「杉山清貴&オメガトライブ」時代のヒット曲と聴き比べてみると、今の方が、明らかに響きが豊かで太い。もちろん、1980年代のレコーディングでの音作りの傾向もあるだろうが、それを差し引いても、当時よりも歌声が太く響き豊かになっていて、説得力も増している。

杉山: ああ……、うれしいです。ありがとうございます。いや、でも、やっぱ、若い頃は細かったですよね。まあ、そのぶん、今は体の厚みも……、はははは……(笑)。

ーー その歌声を維持、いや、進化させていくために、何をやっているのだろう?

杉山: いや〜、とくになにも……。トレーニングとかもやってないです。波(ボディボード)はやってますけど……(笑)。声は……、もう歌に関してはなんにも……、もう行き当たりばったりで、「出るか? 出ないか?」みたいな感じで生きてきてるんですけど……(笑)。まあ、そういう流れの中でも、やっぱり声帯は衰えますから、いつか、こんなキー出なくなるのはわかってるので、だから、「じゃあ、どうやったらこの声が出るかな」って、いろいろ発声を変えたりとかしてます。でも、なんか、若い頃よりも高いところはラクに出るんです。それは別に声が高くなったわけではなく、テクニックを覚えたからなんだなって……(笑)。

ーー 高い音などは、とくに若い頃は、ついついチカラで出しがちだが、同じように思い切って声は出しても、むしろ抜いた方がよく響くし、出やすいものだ。

杉山: そうですね、それもありますね。

ーー しかし、「声の出し方を変えている」などということは、聴いていて全く気づかない。

杉山: します、します。そこら辺は、もう 根本 要(スターダスト☆レビュー)先輩と 2人で話し合って、要さんとも「もう俺たちはな、マイクを通しなんぼの声だからな。そこのテクニックさえ押さえといたらいいんだよな……」「そうですよね〜」っていう……(笑)。それは、もう(山下)達郎さんが昔から言ってて、「我々は、マイクを通してなんぼの声だと」、「オペラ歌手じゃないんだから、マイクを通して、どれだけ言葉を伝えて、声を聴かせることができるか」っていうところに意識を持っていくっていう。で、それはもう、いくらでもテクニックでカバーしながら、補いながら、ある程度はできると思います……って感じですね。

ーー 声の出し方は工夫しても、昔から聴いている人の印象が変わらない様に、「キー」と「歌い方」は変えないようにしている。

 

4 初のオールタイム・ベストアルバム 〜「自分の選んだ色だけに染まっていってしまうんで…」〜

ーー 2023年4月21日には、「杉山清貴&オメガトライブ」としてデビューしてから 40周年となった。通算 28作目となる最新のソロ・アルバム『FREEDOM』と同日、2023年5月10日に、「杉山清貴&オメガトライブ」でのデビューから40周年を記念した初のオールタイム・ベストアルバム、その名も『オールタイムベスト』も発売された。

ーー 「杉山清貴&オメガトライブ」のデビュー曲『SUMMER SUSPICION』(作詞:康珍化 / 作曲・編曲:林哲司)から、『君のハートはマリンブルー』(作詞:康珍化 / 作曲・編曲:林哲司)、『ふたりの夏物語 NEVER ENDING SUMMER』(作詞:康珍化 / 作曲・編曲:林哲司)などから、ソロ・デビュー曲で大ヒットした『さよならのオーシャン』(作詞:大津あきら / 作曲:杉山清貴 / 編曲:佐藤準)をはじめ、『最後のHoly Night』(作詞:売野雅勇 / 作曲:杉山清貴 / 編曲:笹路正徳)、『水の中のAnswer』(作詞:売野雅勇 / 作曲:杉山清貴 / 編曲:松下誠)、『SHADE〜夏の翳り〜』(作詞:青木久美子 / 作曲:杉山清貴 / 編曲:佐藤準)、『風のLONELY WAY』(作詞:田口俊 / 作曲:杉山清貴 / 編曲:林哲司)……などのシングル・ヒット曲はもちろん、前作となる 2020年のソロ・アルバム『Rainbow Planet』収録曲の『Other Views』(作詞:杉山清貴 作曲 / 編曲: 福田直木)などにいたるまで、オールタイムで絶妙な選曲されていて、まさに、杉山清貴の歴史を辿る内容となっている。

杉山: 僕は、選曲には、もう全く関わってないです。でも、おもしろいと思います。僕、昔からベストを作るときには関わらないっていう……、はい。自分が入っちゃうと、自分の選んだ色だけに染まっていってしまうんで、そうじゃない耳で聴いてくれる人たちが選んだ方が絶対いいなと思うんで。

杉山: とくにね……、何だろうな……、キング(レコード)さんになってから面白いアルバムも作ってるので、そういう中からピックアップしてくれてるのは楽しいですよね。(菊池)桃子との『風の記憶(with 菊池桃子)』(アルバム『OCEAN』)が入ってるのが嬉しいですね。

ーー ソロ・アルバムは、4枚目までは、「杉山清貴&オメガトライブ」時代と同じ「VAP」から、その後、5作目〜11作目までは「ワーナー」、12作目〜22作目までは、ふたたび「VAP」から、そして、23作目、2014年の『Island afternoon III DA KINE OF DA BUDS』以降は、「やりきった」と話す『OCEAN』を含め、最新作まで「キングレコード」から発売されている。

ーー 『オールタイムベスト』に収録されている全ての曲に、それぞれ思い入れがあるとは思うが、あえて、とくに気に入っている曲を聞いてみた。

杉山: えっへへへ……(笑)、いや、それはもう決められないですね〜。まあ、でも、ちょっと、こう、昔の80年代、90年代とかに出してたベストよりも、やっぱり、ここ数年のやつも入ってるので、だから、ちょっと僕から離れてた人とかお客さんとかは、面白いんじゃないかと思うんです。昔のも入ってるし、「こんなの全然、聴いたことない!」ってのも入ってるので。

ーー まさに「オメガは好きだったけど、最近の杉山清貴は知らない」という人には、ぴったりのアルバムになっている。『オールタイムベスト』を通して聴くと、もちろん、時代によって音は変わってきているし、歌声も進化してはいるが、杉山清貴のボーカルの印象は変わらない。だから、通して聴いても違和感がない。

杉山: ああ……、ありがとうございます。いや〜、なんか「気がついたら40年……」なんですけど、そんな「早いな」っていう気もしないですし……、う〜ん……、なんか、要は休んでないので、ず〜っと続いてるので、あんまり何か「何十周年」とか考えたことはないです。せいぜい休んだって言っても、「なんか特別なことがあるからアルバムを作らなかった」とかっていうだけの話であって、なんですかね……、やっぱり新譜を出し続けるってすごい労力なんですけども、出させてもらえる環境にいるってのはすごくありがたいです。

ーー たしかに、「杉山清貴&オメガトライブ」解散後も、わずか 5ヶ月でソロ・デビューしているし、40年、休みなく続けていることになる。

 

5 前身のバンド「きゅうてぃぱんちょす」 〜「もう、洋楽・邦楽、関係なく、なんでも…」〜

ーー 杉山清貴が、子供の頃から ビートルズ(The Beatles)が好きだったことはよく知られている。小学校 4年生の時、友達のお兄さんが聴いていたビートルズに衝撃を受け、その後、中学生のころまでに、お小遣いでビートルズの全てのレコードを買い集めた。それでは、それ以前、物心ついたころに好きだった音楽は、どういうものだったのだろう?

杉山: いや〜、その前は……、にしきのあきら(錦野 旦)です……(笑)。『空に太陽がある限り』(作詞・作曲:浜口庫之助、1971年)とか……。やっぱり、昭和ですから、「レコ大」とかがメインの時代じゃないですか。やっぱり、そういう(レコ大で)大賞を取ったシングル盤を買ってくるとか、そんな感じで……、普通ですよね。デビュー曲で、新人賞とった『もう恋なのか』(にしきのあきら、作詞・作曲:浜口庫之助、1970年)とか買ってましたよ。なんか、ああいう歌が好きでしたね。あと、ジュリー(沢田研二)も好きでしたね。

ーー そして、ビートルズに憧れて、ギターを弾き始めた。

杉山: ギターを弾いたのは 中1 です。それまでは聴くだけになってて、で、やっぱり「ビートルズ、自分で弾いてみたいな」っていうところから、いとこから中古ギターをもらって、練習して……、ビートルズの歌本買ってきて、全然、コードがわかんないのを一生懸命勉強しました。

杉山: で、ギター弾けるようになってくると、吉田拓郎さんとか井上陽水さんとか、そこら辺も聴いてました。結構、なんでも聴いてましたから。あの……、中学のときは、ビートルズバンドを組みながら、フォーク・ユニットも組んだりとか……(笑)。

ーー ビートルズやフォーク以外に、洋楽もよく聴いていた。

杉山: え〜っと……、やっぱ、グランド・ファンク・レイルロード(Grand Funk Railroad)とか、そういうアメリカのロックとかも聴いたし……。いや、結構、そのビートルズがスタートで、ワーッと広がったっていうか、洋楽に意識がいって……。ちょうどあの時代って、ビートルズが解散はしてましたけど、結成10周年って年だったんですよ。それで、文化放送が、1年間ビートルズ括りで番組を作ってたんですよ。それを聴くようになって、そのまま流れでビートルズ関連じゃない番組も聴くと、洋楽のヒットチャートが聴けるじゃないすか。そういうところから「こんなかっこいい曲があるんだ」って、近所のレコード屋に行って買い漁るみたいな。

ーー 高校のころは、意外にも、いわゆるロックンロールもやっていた。

杉山: 高校のときも、高校の仲間とバンドやってました。高校のときは……、「キャロル」とか「ダウン・タウン・ブギウギ・バンド」とか「頭脳警察」とか……、はははは……(笑)、そういうのやってたね〜。

ーー 1978年に高校を卒業すると、地元、横浜の関内にあるライブハウスで働き始めた。

杉山: そうです。僕が高校2年のときに、その関内のライブハウスが出来たんです。しかも、高校生たちを自由に……、なんですか……、土日とか開放して、フリーにセッションできるようなライブハウスだったんですよ。で、そこに通うようになって、もう、学校からそのまんま夜までずっとみんなでいて……、っていう流れのまんま、僕は高校卒業して、そこに入ってバイトをさせてもらったんです。

杉山: で、そこでバイトしながら、ちょこちょこ弾き語りとかやってたんですけど、やってるうちに仲間が「杉山、ちょっとバンド組まねぇ?」っていう話になって、で、バンドをいくつか組みながら、最終的に「きゅうてぃぱんちょす」にいくっていう……。

ーー この「きゅうてぃぱんちょす」というバンドは、「杉山清貴&オメガトライブ」の前身となるバンド。2018年5月5日に、東京「日比谷野外音楽堂」で行われた「杉山清貴&オメガトライブ」のデビュー35週年の再集結ライブでは、この「きゅうてぃぱんちょす」名義で、当時の曲も演奏された。この模様は、翌 2019年にライブ盤(2CD + DVD)として発売され、「きゅうてぃぱんちょす」名義で演奏された曲も 4曲収録されている。

杉山: その当時、「きゅうてぃぱんちょす」では、ドゥービー(THE DOOBIE BROTHERS)のカバーとかやってましたね。あと、イーグルス(EAGLES)とかもやってましたし……、あと、あのころ、何やってたっけなぁ〜……、もう、洋楽・邦楽、関係なく、なんでも……、あと、ツイスト(世良公則&ツイスト)とかもやってましたね……(笑)、はい。

ーー このころは、バンドでデビューしたいと思っていたのだろうか?

杉山: これがねぇ……、あの頃、プロって言うと「レコードを作ってコンサートをやる……」これがプロだと思ってて、「これやりたいよね」ってみんな言ってて、「じゃあ、プロになるためにはどうしたらいいか……、コンテストかなぁ〜」みたいな感じで……。で、たまたま、よくヤマハのスタジオを(練習で)使ってたので、そのスタジオにディレクターの人たちがいるわけですよ。青田買いを狙ってる人たちがたくさんいて、僕らが声かけられて「ポプコン出ない?」って言われて、「じゃあ、出ましょう」みたいな……。

 

6 オメガトライブとしてデビュー 〜「プロになったら売らなきゃいけないんで…」〜

ーー ヤマハ音楽振興会の主催で、1969年から1986年まで行われていた「ポプコン」(ヤマハポピュラーソングコンテスト)は、当時、プロへの登竜門としてよく知られており、NSP、谷山浩子、八神純子、渡辺真知子、中島みゆき、因幡晃、世良公則&ツイスト、安部恭弘、佐野元春、長渕剛、円広志、チャゲ&飛鳥……ら、多くのアーティストを輩出していた。全国の各都道府県の予選があり、その後、各地区のブロック大会を経て、静岡県掛川市「つま恋」での本選会が行われていた。

ーー 「きゅうてぃぱんちょす」は、この「ポプコン」の本選(決勝大会)に、1979年10月(第18回)、1980年5月(第19回)、1980年10月(第20回)と、3回 連続で出場している。これはすごいことだ。

杉山: 優秀なんですよ……(笑)。でも、優秀なんだけど、本戦会では賞が取れないっていう……、ははは……(笑)。

ーー 「きゅうてぃぱんちょす」が最初に出場した 第18回のグランプリは、「クリスタルキング」の『大都会』で、優秀曲賞には、「ジプシーとアレレのレ」(現在のスターダスト☆レビュー)の『おらが鎮守の村祭り』が選ばれている。第19回では、グランプリが「伊丹哲也と Side by Side」の『街が泣いてた』、優秀曲賞には「雅夢」の『愛はかげろう』が選ばれている。

ーー 「きゅうてぃぱんちょす」は、第18回では『My Life』、第19回では『GOSPELの夜』で入賞、第20回は、当時、友人だった、その後、有名な作詞家になった 松井五郎 が書いた『乗り遅れた747』を演奏したが、とくに賞を取ることはできなかった。ちなみに、これら 3曲は、2018年の「杉山清貴&オメガトライブ」デビュー35週年の再集結ライブで演奏され、その時のライブ盤に収録されている。

ーー 「ポプコン」で賞を取ることはできなかったが、「ポプコン」に出場したことで、その後のデビューに繋がった。当時、「レイジー」や 角松敏生 らを手がけていた音楽事務所「トライアングル・プロダクション」の社長、藤田浩一 から声をかけられた。

杉山: ポプコンの時に声をかけられたわけじゃなくて、それから何年か経って、人の紹介で会ったんです。その時、「実は、俺、ポプコンのつま恋の本選会、見に行ってたんだよ」って話になって、「なんかいいバンドいないかな」っていうふうに探してたみたいです。賞を取ってレコード会社から声をかけられるとかじゃなくて、何年も見ていてくれて、あとからそういうふうに声をかけてくれたっていうのが嬉しかったですね。

ーー その時、藤田浩一 からは、「きゅうてぃぱんちょす」をデビューさせるにあたって、「バンド名はオメガトライブ」「楽曲は用意する」「レコーディングの演奏はスタジオミュージシャン」という条件を提示された。

杉山: そうです、そうです。もう飛びつきましたね。ようするに、(事務所社長の)藤田さんとしては、その藤田さんが考えてた企画に合うバンドが「きゅうてぃぱんちょす」だった……、ってことなんですよね。だから、「ポプコン」のあとですぐにってわけではなくて、何年かして、その企画が固まってから声をかけてくれたんだと思います。

ーー 杉山清貴は、父親から「大卒の年齢になるくらいまでに形にしろ」と言われていたこともあり、このデビューの話に飛びついた。しかし、「バンドのメンバーは、替えることなくそのままで」ということは飲んでもらった。

杉山: そうですね、まあ、その時は「半喜び」くらいで、「大喜び」したのは、その(デビュー)曲を書いてくれるのが 林哲司 だって知った時に大喜びしましたけど……。「おお! 松原みきの『真夜中のドア』の人じゃん! 竹内まりやの『SEPTEMBER』も書いてんじゃん!」って。

ーー こうして、「きゅうてぃぱんちょす」は「杉山清貴&オメガトライブ」となり、オリジナル楽曲をは封印し、杉山清貴が 24歳の 1983年 4月21日に『SUMMER SUSPICION』(作詞:康珍化 / 作曲・編曲:林哲司)でデビューした。

杉山: その時は、「自分の(書いた)曲で」っていうのは、全くなかったですね。もう、そんなプロになったら売らなきゃいけないんで、そんな「売れる曲なんか書けないっすよ、俺たち」って言ってて……。でも、演奏をね「スタジオミュージシャンで」ってのは、「う〜ん……」って、やっぱりちょっと引っかかったんですけど、まあ、でも、「ぼちぼちデビューできんだったらしといた方がいいよね」って……。でも、「そうだよな、有名なバンドだって最初の頃は演奏してないしな」って自分を納得させながら……。もう、この時は、「自分たちのやりたいこと」とか言ってる場合じゃないなと……、与えられたものをなんとか演奏して形にしなきゃって思ってましたね。

ーー その後、「作詞:康珍化、作編曲:林哲司」という作家陣によって制作された、夏や海をイメージさせる歌謡曲とは一線を画す都会的な楽曲と、AOR風のおしゃれなテンション・コードを使ったアレンジに、杉山清貴のさわやかで伸びやかな歌声が乗ることでヒットを連発した。ちなみに、レコーディングで演奏したスタジオ・ミュージシャンは、ドラムが 村上“ポンタ”秀一、林立夫、青山純、山木秀夫ら、ベースは 高水健二、富倉安生、伊藤広規ら、ギターは 今剛、松原正樹、松下誠、吉川忠英……らといった、超一流のトップ・ミュージシャンたちだっただけに、そのサウンドは洗練されたもので、当時、新鮮な驚きとともに受け入れられた。

ーー デビュー曲から「杉山清貴&オメガトライブ」として発売された シングル 7作の表題曲は、すべて、「作詞:康珍化、作編曲:林哲司」によって作られたが、カップリング曲やアルバム収録曲は、メンバーも作曲を担当したりもしていた。デビュー曲『SUMMER SUSPICION』のカップリングには、杉山清貴が作曲した『渚のSea-dog』(作詞:SHOW / 作曲:杉山清貴 / 編曲:後藤次利)が収録された。「きゅうてぃぱんちょす」時代の曲を焼き直したものだった。

杉山: あのころは、オメガのメンバー全員が曲をどんどん書いて、プロデューサーに渡していくんです。「曲書かないと印税入らないから、おまえらずっと給料だぞ」って言われてて……(笑)。

ーー シングルのカップリングでも、アルバムの収録曲でも、作詞・作曲家への印税は、曲数で割った金額が均等に入る。

杉山: そうです、そうです。だから、メンバー全員から曲を集めて、あとは、林さん(林哲司)と藤田さん(事務所社長でプロデューサー)で精査していって、「じゃあ、これはアルバムに入れようか」「これはシングルB面かな」って感じですね。

ーー それでも、シングル表題曲は用意されるもので、次々とヒットする中、トータルの色は「オメガトライブ」のブランドイメージとして固まっていった。バンドでのライブは楽しかったが、その状況の中で、自分たちの色が出せると思えなくなっていったため、最終的に解散することになる。「杉山清貴&オメガトライブ」のメンバーは、後日「オメガトライブは、バンドではなくプロジェクトであり、自分達はその一員だった」とも話している。

 

7 バンド解散後、5ヶ月でソロデビュー 〜「もう必死でしたよ…」〜

ーー 人気絶頂期だったにも関わらず、1985年12月、わずか 2年8カ月の活動で、「杉山清貴&オメガトライブ」は解散した。しかし、それから 5ヶ月足らずの、翌年、1986年 5月に、杉山清貴は、シングル『さよならのオーシャン』(作詞:大津あきら / 作曲:杉山清貴 / 編曲:佐藤準)でソロ・デビューした。解散したあと、すぐに「バンドは解散したけど、契約が残っている」と事務所の社長から言われたそうだ。

杉山: まあ……、そういうことですよね。オメガが解散して、12月24日(「FIRST FINALE ツアー」横浜文化体育館での最終公演)が終わった時点で、「もう、僕は自由だ〜!」って、「うわ〜!」ってなってたんすよ。

杉山: 解放されたと言うか……、まあ、ただ「きゅうぱん(きゅうてぃぱんちょす)が終わったな……」っていうだけで、なんだろうな……、心境的には、別に……「またバンドでも組もうかな〜」みたいな感じで、呑気にいたところ、年が明けて、(事務所社長の)藤田さんから「お前はソロデビュー、ソロアーティストだ」って言われて、「レコード会社との契約残ってるからな、お前が勝手に辞めたんだからな」って言われて、それで、「あっ、はい……」って……(笑)。

ーー 自身が作曲したソロ・デビュー曲『さよならのオーシャン』は、いきなりヒットした。

杉山: いや〜、もう、ホント、それもありがたいですよね。(事務所社長の)藤田さんがね、僕がまだ『さよならのオーシャン』のサビが煮詰まってて出来てないような頃に、「1986オメガトライブ」がもう作られたんですよ。それで、「(1986オメガトライブ の)デビュー曲ができたぞ!」って電話がかかってきて、電話口でずっと聴かされて……、これはプレッシャーですよね。

杉山: もう、オメガが解散した時点で、藤田さんは「1986オメガトライブ」にかかりきりになるわけですよ。僕は、もうほっとかれるので、もう自分で全てやるしかないので……、だから、ある意味、社長が僕に電話口で(「1986オメガトライブ」のデビュー曲)『君は1000%』を聴かせたのは、多分、ケツ叩かれたんですよ、「お前、しっかりしろよ!」ってね。で、燃えて作ったのが『さよならのオーシャン』だったんですよ……(笑)。

ーー 杉山清貴は、もともと「ソロになったら、曲は自分で書こう」と考えていた。デビュー曲候補として、何曲か書いて出したのだろうか?

杉山: いや、いや、いや、もう『さよならのオーシャン』だけで、それをいろんなタイプで作ったんです。「サビだけあのままで、AメロとBメロが違う」とか……。で、作って出して、「う〜ん、ちょっと違うよな〜」とか言われて、それでバップ(当時の所属レコード会社「vap」)で、ピアノ弾いて、ギター弾いて、作りなおして……っていう、「手を替え品を替え」で改善させてったっていう感じですね。もう、1曲通して完成するまでは夜も眠れないくらい、1日中、ず〜っと頭の中で考えてて、渦巻いてましたね……(笑)。

杉山: それに、タイアップありきの時代でしたから、自分の曲を書いてるんですけど、CMソングを書いてる作家のような気分でもありましたし……。それまで、アルバム曲やB面曲は書いてましたけど、それらは、「出してハネられたらしょうがいない」って思ってましたけど、この『さよならのオーシャン』に関しては、ハネられるわけにはいかなかったですからね。だから、もう必死でしたよ。だから、もう本当に想いがつまった曲ですから、ずっと崩すことなく歌い続けなきゃいけないなって思いますね。まさに、杉山清貴のソロの原型、プロトタイプの曲ですね。

ーー こうして出来上がった ソロ・デビュー曲の『さよならのオーシャン』は、杉山清貴 本人も出演した「ダイドードリンコ『ダイドージョニアンコーヒー』」の CMソングに起用されヒット。そして、それ以降も、『最後のHoly Night』(作詞:売野雅勇 / 作曲:杉山清貴 / 編曲:笹路正徳)、『水の中のAnswer』(作詞:売野雅勇 / 作曲:杉山清貴 / 編曲:松下誠)、『SHADE〜夏の翳り〜』(作詞:青木久美子 / 作曲:杉山清貴 / 編曲:佐藤準)、『風のLONELY WAY』(作詞:田口俊 / 作曲:杉山清貴 / 編曲:林哲司)……など、立て続けにシングル・ヒットを飛ばした。

杉山: ホント、ありがたいですよね。でも、あれは、もう勢いですね。なんか、『さよならのオーシャン』を書き終えて、「あっ、こういう感じで作っていけばいいんだな」っていう感触があって、おかげさまでヒットチャートに入って、「じゃあ次」「じゃあ次」ってなってくるじゃないすか。そうすると、もう、曲を書くペースが出来上がってるので、話が来る前にもう出来上がってる曲がいくつかあって、それを全部渡しておいたんですよ。なんか、本当に調子よかったですね、多分……(笑)。

ーー どれもいい曲だ。

杉山: いや、ホントにね、「よくあんな曲書いたな」って思いますね……はははは……(笑)。

ーー オリジナル・アルバムも、ソロ・デビューしてから、わずか 1年半の間に 3枚というハイペースで発売され、それらで、ほぼ全曲を自身が作詞している。そして、アルバムは、セルフ・プロデュースで作られていた。とくに、1990年に発売された 5枚目のソロ・アルバム『SPRINKLE』(スプリンクル)は、ロサンゼルスで録音され、ジョン・ロビンソン(Drs)、ニール・スチューベンハウス(B)、マイケル・ランドゥ(G)、トム・キーン(Kbd)といった、いわゆる 本場 AOR の名だたるミュージシャンたちが参加し、編曲もトム・キーンが担当したことで、まるで「和製 AOR」といったアルバムになった。

杉山: いや、すごいですよね。僕が憧れてたミュージシャンばっかですから……(笑)。その前のアルバム『here & there』(1989年)で、LA に行ってるんですけど、その時は、新川博さんがアレンジャーでちゃんといたんですよ。で、一緒に LA に行って、僕は後ろにくっついて「お〜、あの人がいる、この人がいる……、お〜、ポール・ジャクソン・ジュニアだ!」みたいな感じで。

杉山: で、そのレコーディングが終わって、「じゃあ、次は自分でやるしかないかな」と……。で、ある程度、デモテープをきっちり作って、それを持って LA に行ったんですけど、ちょうどその『here & there』作ったときの向こう(LA)の インペグ屋さん(演奏ミュージシャンのコーディネイター)が、「じゃあ、次も一緒にやろうよ」って言ってくれてて、それで「誰がいい?」って言われたんで、結構、たくさん出しました……(笑)。まず、ジェフ・ポーカロ とか、ルカサー(スティーブ・ルカサー)……、ルカサーは、『here & there』でも弾いてもらってて、ジェフ・ポーカロ とは できなかったんですけど……。でも、そういう感じで、気のいい人たちが集まってくれた感じです。で、トム・キーンは、それからずっとの付き合いになるんです。

ーー AORファンならたまらないメンバーだ。

杉山: いや、もう、「ナメられちゃいけない」と思って、ずっと緊張ですよ……はははは……(笑)。

 

8 シティポップ・ブームで再注目 〜「やっぱり、新しいところを開拓していきたい…」〜

ーー 最近、どんな音楽を聴いているのか聞いた。

杉山: 最近、「音楽を聴こう」と思って聴てるのは……、なんか別にもう、とくにこれっていうのはないっすよね。家では、もう、ずっと流しっぱなしな感じで、で、「おっ!」って思ったものはすぐに検索して……、みたいな。ヒップホップも聴くし……、なんか、やっぱ YouTube とか、ああいうので流しっぱなし系が多いですね、最近は。たとえば、ソウルとかのチャンネルにしたりだとか……、ヒップホップだと、90年代の オールド・スクール・ヒップホップとか、そんな感じで聴いてるんで、「今、これにはまって、これを聴いてるんです」っていうのはないんですよ。

杉山: もう、結構、なんでも聴いちゃってるんで……、あっ、最近、アニメの主題歌とかも面白いですね。いま『地獄楽』ってアニメがあって、「MAN WITH A MISSION」がやってるんですけど、かっこいいんですよ曲が……。「かっこいい曲作るな〜」とかね……、そんな感じですよね。

ーー 「歌謡曲のエッセンスを含んだ、日本で独自に進化した AOR」、それが今では「シティポップ」と呼ばれ、ここ近年、日本国内にとどまらず海外でも人気となっている。その「シティポップ」を代表する作曲家 林哲司が提供した『SUMMER SUSPICION』をはじめとした「杉山清貴&オメガトライブ」の一連のヒット曲も、松原みき、竹内まりや、山下達郎、大滝詠一、吉田美奈子、大貫妙子、尾崎亜美、EPO、南佳孝、大橋純子、角松敏生、杏里 …… らとともに、最近では、日本のみならず世界中で聴かれている。杉山清貴、前作のソロ・アルバム『Rainbow Planet』のときには、海外の新聞でも「シティポップ」の大特集が組まれ、杉山清貴が大きく紹介されたりもした。

杉山: いや〜、不思議な感じですけども……。それこそ、僕らの世代で考えちゃうと、「海外で日本語の歌が聴かれるなんて『SUKIYAKI』(坂本九『上を向いて歩こう』)以外ないでしょ」って思ってましたから、それがすごく不思議だったことと、でも、やっぱり、今はインターネットの時代だから、「そうだよな〜、たしかにな……」とも……。

杉山: やっぱり、とくに、70年代、80年代のシティポップって言ってますけど、やっぱり、(山下)達郎さんですよね。やっぱり、山下達郎ありきのところから、多分、あの音楽って派生していってるので……、僕らの経験からいくと。だから、やっぱり、「ああいうサウンドを日本人がやってたんだ」っていうのは、多分、海外の人はびっくりしたと思うんですよ。

杉山: で、クラブでよくかかってたと思うんだけど、「ダンサブルで」っていうところから、なんか今のアメリカにない音楽だと思うんですよね……、まあ、アメリカに限らず。やっぱりメロディが……、メロディアスで日本独特の世界ですし、メロディがしっかりしてて、サウンドもかっこいい……、まあ、そこっすよね、多分ね。

杉山: 僕は、なんか自分のことに置き換えると、オメガトライブってのは、すごいシティポップな感じで「あ〜、わかる、わかる、わかる……」って思いますけど、でも、ソロになってからの僕は、全然、自分ではシティポップだという認識がないのでね。

ーー たしかに、ソロになってから、ましてやここ最近の杉山清貴の音楽は、「シティポップ」というよりも「和製 AOR」というイメージが強く、まさに、日本の「MR.AOR」だと思う。ちなみに、ボビー・コールドウェル『Heart of Mine』、ボズ・スキャッグス『We're All Alone』、J.D.サウザー『You're Only Lonely』、ジョージ・ベンソン『Nothing's gonna change my love for you』、ホール&オーツ『Everytime You Go Away』……など、AOR の名曲も数多くカバーしている。

ーー 今後の方向性を聞いてみた。

杉山: そうですね〜。もう、なんか、その時、その時の流れに乗っていくだけなので、なんか別に「こういうのやりたい、ああいうのやりたい」っていうのは、もう、とくにはないですね。なんか、楽しいければいいかなっていう……、自分がなんか盛り上がれればいいかなと。

ーー たしかに、ソロで 35年も休みなくやってきて、28枚もソロ・アルバムを出していれば、もう、たいがいのことはやってきている。だからこそのプロデューサーで、Martin Nagano なのかもしれない。

杉山: へへへへ……(笑)、そうなんですよね〜。だから、もうホントに『OCEAN』(24th 2016年7月06日)ってアルバムの時には、「ああ、もうとりあえず打ち止め〜」って感じですね。もう「海」もやりきったし……、僕が本当にやりたかったのは、やっぱり「海」だったので……。で、その「海」をやりきったので、あとはもう「どんなふうにでも料理してください」という……、「"街" でも何でもやります」みたいな……(笑)。

杉山: でも……、やっぱり、あんまり懐古主義になりたくないなっていうのは思いますね。やっぱり、新しいところを開拓していきたいなっていうのはありますね。

ーー やはり、常に新しいものを作っていきたいものだ。

杉山: そうですね……、見つけて……できたら、楽しいかなと思いますね。それには、やっぱり、(Martin)Nagano さんが必要なので……、あのオジサンさんは絶対に必要です……(笑)。

ーー 何かのインタビューで、杉山清貴が「今は古くならない時代だ。"これ、もう古いよ" って言われない時代になった」というようなことを話していて、とても面白いと思った。

杉山: はい、全くないと思います。「古い」っていうのは、それを体験した人たちだけが思っているだけであって、もう若い人たちは、全てが新しいものだと……。

杉山: だから、それこそ、僕らが 20代のころの 80年代に、隣の時代の 70年代を見ちゃうと、「古い、古い……」ってなるじゃないですか。でも、もう、そんなの超えちゃってるので、全部が新鮮なんじゃないすかね。だからそういった意味では、とてもいい時代だと思いますね。あの「古い」って言われんのが一番腹立ちますからね……(笑)。「これやりたいのに、古いとか新しいとか関係ないだろ!」って思ってたんですけど。

杉山: だから、それこそ余談ですけど、僕、ソロになって最初に野外やった時に、結構、洋楽をばあ〜っとやったんですよ……、それこそ、ドゥービーとか、そういうのを……。その中で、ジョージ・ハリスン の『What is Life』(『美しき人生』)って、あれをやりたかったんですけど、みんなが「あのイントロが、もう古臭いよ〜、これ〜」ってメンバーが言い出して、「でも、このイントロありきじゃん!」って言うんだけど、「いやいやいや、アレンジ変えようよ〜」って言われて、なんか「ポリス」(The Police)みたいなアレンジにしたんですけど、「そうか〜、古いのか〜」っていうのがすごいショックで……、だって、僕の中で、ジョージ・ハリスン は、古くないわけですから。でも、プレイヤーからすると「こういうギターの音は古いよ」って世界だったんでしょうね。でも、それがもう今はないので、ありがたいっすよね。関係ないですよ、本当に。今は、やっぱ新鮮ですもんね、なに聴いてもね。

ーー この取材をした週末に、恒例の日比谷野音でのコンサートが予定されていた。

杉山: 特別な趣向は、とくにないです……(笑)ははは……、淡々と。まあ、でもなんか今年は40周年なので、自分の歴史を振り返るという感じじゃないすけど、「ハワイ」「海」が結構メインになりますね。

ーー ソロ・アルバムで曲を書いている作家にも若い人が多いが、コンサートでのバンドメンバーも若い人を起用している。

杉山: はい、バンドも若いので面白いです。あのね……、年寄りだとね、「5曲 続けて」とか演奏できないんですよ……(笑)。だから、やっぱり体力がある若者が、やっぱり野外には向いてますよ。

ーー ベテランのミュージシャンはうまいが、若い人には、勢いがあっていい。

杉山: そうなんです。で、とくに、やっぱあの時代のサウンドとかって、結構、ややこしいんですよね。だから、年寄りは、あんまりやりたがんないんですよ……(笑)、「もっとシンプルにしようぜ〜!」って言い出すんで、「いやいや、昔のあのままのアレンジでいきたいんで」って……(笑)。だって、あれを作ってた時代は、僕ら 20代なわけですから、だから、それを 50代が演奏するよりは 20代が演奏する方がいいに決まってると思います。

(取材日:2023年5月16日 / 取材・文:西山 寧)

 
 
 
 
 
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