LIVE REPORT

村上佳佑 ライヴレポート

村上佳佑 ライヴレポート

【村上佳佑 ライヴレポート】 『Kei's room vol.9 -Back to Kyoto-』 2022年7月2日 at someno Kyoto

2022年07月02日@someno Kyoto

取材:東條祥恵

2022.07.07

シンガーソングライターの村上佳佑が大学時代を過ごし、アカペラグループのA-Z(アズ)を結成した自身の所縁のある京都では初となるワンマンライヴ『Kei’s room vol.9ーBack to Kytoー』を7月2日にsomeno Kyotoにて開催した。“Kei’s room”とは村上がアコースティック編成で行うライヴのこと。シリーズ化しており、セットリストを変えながら昼と夜の2公演を開催し、生配信もされた夜公演のレポートをお届けする。

ミニアルバム『まもりたい』でメジャーデビューを果たし、今年で5周年を迎え、ソロでの音楽人生のキャリアがひとつの節目を迎えたこと。さらには、自分ひとりでアコギの弾き語りで行なうオーガニックなライヴスタイルを自ら楽しめるようになったことも含め、心身ともに準備万端で挑んだ今回の京都での初ワンマン。

この日は東京も京都も35°C越えの猛暑。ウッドスタイルの壁がブルーの照明で涼しげに映し出される中、観客の拍手に迎えられグリーンのスーツを着た村上が登場。夜公演のオープナーは「Doubtless」。R&Bをベースにカッコ良く仕上げた洋楽テイストな楽曲を歌う村上の声はお洒落で、セクシー。ラグジュアリーさが増して魅惑的だった。そこから息を含んで滑り出す声を立ち上がらせ「モノクロ世界」が始まると、場内だけでなく配信組のチャット欄でも自然とクラップが広がる。《モノクロ世界を塗りかえていこう~》から自身の声でメロディーに彩りを与えていきつつ投下したのは最新曲「なんのために」。自分を突き刺すように、嘆くような重たい言葉の吐露が心にズシンと沁みる。それが最後の最後、《今は早くあなたに会いたいよ》の箇所をフワッと柔らかくも温もりのある声で歌った瞬間、空気がガラッと変わる。その声がマジックを引き起こし、コメント欄は“けいちゃんに会いたい”というつぶやきで埋め尽くされた。ステージと客席、配信視聴者の想いがつながったところでエールソング「Alright」をプレゼント。ブルースからソウル、ゴスペルを咀嚼したメロディーは人々の身体を自然と揺らし、楽しげなクラップを誘っていく。そうして迎えた《Everything is〜》のパート。ここを村上は伸びやかな声で高らかに歌い上げ、聴こえないクアイアが降ってくるようなヴォイシングを響かせることで、モノクロの世界に眩しい光を降らしてみせたのだ。この素晴らしいキラキラとした声の演出に、客席からは盛大な拍手が沸き起こる。

短い挨拶をしたあとは配信組から寄せられたコメントを見ながら“客席は近いですか?”という質問に“近いよ。僕の毛穴まで見られそうなぐらい”とファンと楽しいやりとりを繰り広げながら“夏の暑さにやられそうなので”とラムネを食べ、糖分を補給する。そんなラフなトークともぐもぐタイムを挟んで、次にポップな「二人だけの愛」が始まると、圧倒的にポピュラーな《だし巻き卵》をフックに展開するピュアなラブソングに観客はメロメロに。最後は“関西愛してる〜!”と歌い込んで、彼氏感が満載のこの曲でみんなのハートを鷲掴みにした。心の距離をしっかり縮めたあとは「僕らの明日」へ。ど頭のイントロで入れたアドリブの歌唱、それだけで聴き手のノスタルジックな心情へと深くアプローチしていった場面が息を飲むほど美しかった。シルキーな歌声というフレーズが特徴の村上だが、ライヴを観ると曲のメロディーパートごとにさまざまなテクニックを屈指して、実に幅広い声を繊細に響かせているのがよく分かる。それが口説くなく、余裕で“さらり”とやっているように聴かせるところがなんともにくい。

“今、北海道で新曲を書いています”と現状報告をしながら村上がジャケットを脱ぐと、コメント欄には“安定の白シャツ”という文字が並ぶ。村上がそのコメントを見つけて読み上げると、客席からも“そのとおり”と言わんばかりの拍手が起こる。こうしてファンにいじられながら(微笑)、次はリクエストカバーコーナーへ。4曲の候補曲の中からBruno Marsの「Talking to the moon」を歌唱...し出したと思ったら、途中でなぜかストップ! “1部でもあったんだけど、なんで止まっちゃったんだろう? 悔しいのをとおり越して怖いわ(笑)”と言い、再度やり直し。弾き語りだからこそのフリーテンポを生かし、たっぷりとタメを効かせ、ギターも強弱をつけながら英詞を滑らかに歌う村上はとても楽しそうで、艶感増し増しの歌声が耳に心地良く響く。

そして、“夜はセクシーに。1部とはセットリストを変えて”と伝え、バラード3連発でたっぷりと観客をラブソングへと陶酔させていったところは、この日のハイライトだろう。ミドルレンジの声でメランコリックな感情を引き出し、《隣に君はいない》と歌っていった「ビネット」、原曲をさらにテンポダウンさせ、観客にすがるように独白して言葉を紡ぐ「Somebody」、ギターのアルペジで空間にフェイクを漂わせ、《あなたにとってのたしかなものに/僕はなりたい》と願い、最後の転調からソウルフルなファルセットヴォイスで止めを刺していった「Close my eyes」は圧巻の展開だった。心に入り込んでくるメロディー、一音一音涙腺を刺激していく声色に静かに身を委ねる観客たちの気持ちを、チャット欄に書かれた“このまま時よ止まれ”というコメントが表していた。続けて、《味方だからね》という歌詞で全世界の女性を励ます「美しい人」をパワフルに歌い上げ、ラストは“村上と言えばこれだよね”と言って自身のデビュー曲で軽やかなポップチューン「まもりたい〜この両手の中〜」をさわやかにアクト。会場のみんなを笑顔にして本編を終了した。

手拍子のアンコールに呼ばれ、再び舞台に登場した村上は最後に“一番昔に書いた曲を”と話し、東日本大震災が発生した頃に書いたというこの曲について“無責任に“頑張れ”という曲は書きたくなくて。僕は人一倍母に愛されて育ったという自負があるので、母が亡くなったらどうするんだろうという気持ちでこの曲を書きました”と解説を添えたあと、「空に笑う」を歌唱。どこまでも広がる空に祈りを込めるように歌声を立ち上がらせ、その声を客席へと降らせた。最後は柔らかなメロディーで観客の心に寄り添い、包み込むようなやさしい声で曲は締め括られる。

あっと言う間だったが、音源データだけでは収まらない声のバリエーションや奥行き、楽曲と言葉の深みなど、村上佳佑というアーティストの可能性が深い余韻として刻まれたライヴだった。

取材:東條祥恵

村上佳佑

ムラカミケイスケ:1989年、静岡県生まれのシンガーソングライター。幼少期に5年間、アメリカのジョージア州アトランタにて生活し、帰国後は静岡県富士市で高校生活を送った後、京都府の立命館大学へ入学。大学時代に出会ったメンバーで、話題を集めたアカペラグループ・A-Z(アズ)を結成。09年にフジテレビの『ハモネプリーグ』で番組史上最高となる99点で優勝し、各所から称賛を得た。11年まで同グループで活動するも大学卒業を機に解散。その後ソロに転じ、本格的に作曲を始める。16年にクリス・ハートの乱読ライヴ、47都道府県ツアーにコーラスとして参加。そして、『NIVEAブランド』の16~17年のCMソング「まもりたい~この両手の中~」にデビュー前のアーティストとしては異例の大抜擢。17年6月にミニアルバム『まもりたい』を発売した。18年11月に自身初となる1stアルバム『Circle』をリリース。21年に3カ月連続で配信シングルを発表し、22年4月に配信シングル「Alright」を発表。同年6月にデビュー5周年を迎え、配信シングル「なんのために」をリリースし、7月に京都での初ワンマンライヴ『Kei’s room vol.9』を開催する。

SET LIST 曲名をクリックすると歌詞が表示されます。試聴はライブ音源ではありません。

  1. 3

    03. なんのために

  2. 4

    04. Alright

  3. 7

    07. Talking to the moon/Bruno Mars

  4. 9

    09. Somebody

  5. 10

    10. Close my eyes

  6. 12

    12. まもりたい〜この両手の中〜

  7. 13

    <ENCORE>

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