LIVE REPORT

ポップしなないで ライヴレポート

ポップしなないで ライヴレポート

【ポップしなないで ライヴレポート】 『美しく生きていたいだけツアー』 2022年3月27日 at 恵比寿LIQUIDROOM

2022年03月27日@恵比寿LIQUIDROOM

撮影:ゴンダイメグミ/取材:千々和香苗

2022.04.11

2021年12月にミニアルバム『美しく生きていたいだけ』をリリースしたポップしなないでが、同作を掲げたツアーの東京公演を恵比寿LIQUIDROOMにて3月27日に開催。自身最大キャパの会場に集まった観客を見て、かわむら(Dr)が“実際にステージに立ったらもっと怖いものかと思っていたけど、僕らを大好きな人がいっぱいいるだけだった”と話す場面があったが、その言葉の奥には自分たちの音楽がひとりひとり心に届いていることの実感と心強さがあったように思う。これまで痛みを握りしめるように歌っていた彼らは『美しく生きていたいだけ』でより生々しい感情表現に踏み込み、前を見て進んでいく覚悟も持っている。

この日はバンドメンバーとして、ミツビシテツロウ(Mp)、山内かなえ(Gu)、カワノアキ(Ba)が参加したが、1曲目「フルーツサンドとポテサラ」ではかめがいあやこ(Key&Vo)とかわむらのふたりでステージに立つ。挨拶代わりにたっぷりと聴かせた緩やかな前奏と、ポロポロと呟くようなBメロ、明るくキャッチーなサビなど、一曲の中にいくつもの顔があるのに、ど真ん中には漠然とした不安と寂しさが広がり、その感情をまるごと受け止めてリズミカルに歌ってのける「救われ升」が痛快だった。

また、目まぐるしく転調するビートで楽曲自体はクールに表現する「クラヤミライダー」は人と人が交われない様子を描いているが、山内とカワノを呼び込み、バンドセットで披露した「支離滅裂に愛し愛されようじゃないか」では《1人で平気と強がる日々は/ダサいよ!喪失感振り回す》と歌い、観客の手を握ってともに歩んでいく頼もしい姿勢がうかがえる。この2曲は『美しく生きていたいだけ』の曲順では逆に収録されているため、ライヴならではのポジティブな流れには、今のポップしなないでのモードが素直に表れているように感じた。

R&Bテイストでグルービーかつアッパーに仕上がった「city pops」はこの日のセットリストのスパイスになり、「tempura」ではコロンとした可愛いらしい鍵盤の音とドラムの4つ打ちに合わせて自然と手拍子が起こる。間奏ではゆったりとフロアーが揺れ、ミラーボールも回っていたりと、踊れるミディアムバラードに仕上がっていたのも印象深い。

そんな心地の良いムードから一変、「魔法使いのマキちゃん」「Creation」「SG」の3曲の流れは痛いくらいの切なさがそのまま剝き出しになっていて、感情の奥底へと潜っていく時間だった。特にかめがいが虚しさを埋めるように熱唱する「SG」は、何度ライヴで聴いてもその迫力に圧倒される。どんな音楽を作っても孤独を抱え続けているという変わらぬ一面を実感したが、そのあとに披露された「UFOを呼ぶダンス」は、一度聴いただけでは何を意図した曲なのか分からないダンサブルな新曲で、そんな奇抜な展開も彼ららしい。

終盤に演奏された「でも暮らし」は、日常に潜む退屈を表した《味が無くなった/ガムを噛んでるみたいな/毎日のくせにさ/ルールが多すぎる》と、そんな日々にもちょっとした励みがあることを思い出させる《白い吐息吐いてさ/道路越しに見た朝焼けは「永遠」》という歌詞にリアリティーがあり、このライヴが終わったあとも少し上を向いて歩けるような気持ちになった。そして、かめがいの“ポップしなないではみんなの心にある孤独の部分に触れられる音楽だと思っています”という言葉のあとに5人体制で披露した「2人のサマー」。胸がチクリとする寂しさと、じんわりと温かみが広がるバラードで本編が締め括らたわけだが、そんなセンチメンタルな気分だけでなく、苦い感情から目をそらさず、泥臭くても野心を持って歩む彼らの逞しい姿にエールをもらったライヴだった。

撮影:ゴンダイメグミ/取材:千々和香苗

ポップしなないで

ポップシナナイデ:2015年結成のかめがいあやこ(Key&Vo)、かわむら(Dr)による、セカイ系おしゃべりPOP。かわむらの作るどこか寂しげだが前向きな歌詞世界と、かめがいの表情豊かでクセの強い魅力的なヴォーカルで、ミニマムな構成ながら完成された音楽性を持つ。独自の楽曲哲学に沿ったMVや、確かな表現力により世界観を再現するライヴパフォーマンスが話題となっている。

SET LIST 曲名をクリックすると歌詞が表示されます。試聴はライブ音源ではありません。

  1. 1

    1.フルーツサンドとポテサラ

  2. 6

    6.どうすんの?

  3. 10

    10.SG

  4. 16

    <ENCORE>

  5. 17

    1.言うとおり、神さま

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