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BURNOUT SYNDROMES ライヴレポート

BURNOUT SYNDROMES ライヴレポート

【BURNOUT SYNDROMES ライヴレポート】 『全国ワンマンツアー2019 「明星〜We have a dream〜」』 2019年3月23日 at 恵比寿LIQUIDROOM

2019年03月23日@恵比寿LIQUIDROOM

撮影:Jumpei Yamada/取材:土内 昇

2019.04.01

開演前に陰アナがライヴに於ける諸注意を伝える...が、その途中で“メンバー、まだ来てないの?”と焦り出す。果たしてメンバーは来るのか? そんな不安感という期待感を観客に抱かせ、バックドロップに現在の時刻を示す針時計の絵が現れた。いかにもBURNOUT SYNDROMESらしい演出にほくそ笑んだのは筆者だけではないはずだ。

やがてバックドロップの時計がテンカウントを刻み、いよいよ開演時間。まずはオープニングムービーが始まる。時は2069年3月23日、科学者に扮した石川大裕(Ba&Cho)がタイムマシンを開発したところから物語はスタートする。人生で一番忘れられない日に戻るために作ったというタイムマシン。その“忘れられない日”というのが、ライヴ当日である2019年3月23日なのだ。なんでも会場に向かう途中で車が事故って90分遅刻し、恵比寿LIQUIDROOMに着いた時にはもうお客さんは誰もおらず、この件が原因で3カ月後にバンドは解散してしまったらしい。つまり、50年前の2019年3月23日に戻り、遅刻している26歳の自分たちに代わって90分間、ライヴをするというのだ。もちろん、他のメンバーも召集し、しかも若返りの薬を飲んで。その夢を叶えるため、ついにタイムワープが行なわれるーー。

“お待たせー!”とステージには3人...50年前の自分に戻った3人の姿。石川の“2019年3月23日、最高の日にできますか?”という煽りに観客が盛大に声を返し、高く拳を突きあげると、「世界を回せ」の軽快なサウンドがライヴの口火を切る。のっけからタオルが旋回し、「ハイスコアガール」で定番の“上上下下左右左右〜”のフリ、「100万回のアイ・ラヴ・ユー」ではワイパーを誘い、フロアーは序盤にして終盤さながらの一体感を作り上げた。

その後も廣瀬拓哉がタイトなビートを繰り出し、石川は小技の効いたベースをうねらせ、熊谷和海がソリッドなギターと伸びやかなヴォーカルを聴かせ、ライヴはますます加速...と思いきや、場内にけたたましく警告音が鳴り響き、“時限転移装置がバグってしまった!”と焦る石川。そうこうしていうちにこの場にいる全員が江戸時代に転送され、場所も鍛冶場へ。まさにそれは「MASAMUNE」のシチュエーション。刀鍛冶の金槌を打つ音がビートとなり、観客のクラップを呼ぶ。そして、このフックを機にライヴは中盤のハイライト、前述の石川博士が秘密道具として取り出した“春夏秋冬体験機”によるメドレーへと突入する。“春、新学期”と「文學少女」を皮切りに、“6月、雨の季節に”と「檸檬」と、「Dragonfly」「月光サンタクロース」など四季折々のナンバーが矢継ぎ早に投下され、場内に渦巻く熱量を引き上げる。

季節は再び春となり、“この季節にぴったりな曲、全てのあなたの門出を祝う歌を持ってきました”(熊谷)と「サクラカノン」をしっとりと歌唱。そのタイトル通りカノンを盛り込んだ胸に染み入るハートフルなサウンドが客席を感動させたあと、さらなる秘密道具が登場した。ノックした回数によって行く場所が変わる“どこでも窓”によって今度は海外へ空間移動。中華テイストの「国士無双役満少女」、アメリカ合衆国の国歌の導入から石川が英語でスピーチをしたあとに《I have a dream》と高らかに歌う「SPEECH」が披露されるのだった。

威風堂々とした「SPEECH」の余韻の中、再び警告音が場内に響きわたる。ライヴ開始から90分が経ち、こちらの時代の3人が間もなく会場に到着し、若返りの薬の効果も切れるとのことで、メンバーは慌てて自分たちの時代へ。無事、彼らの夢は叶ったのである。そして、ステージには遅刻していた26歳の3人が到着! “遅れて、ごめーん”と客席を通ってステージに上がり、彼らにとっての90分を取り戻すべく、「花一匁」からフルスロットルでライヴを繰り広げる。《かってうれしい はないちもんめ〜》のフレーズでコール&レスポンスを誘い、続く「FLY HIGH!!」や「ヒカリアレ」でも大合唱を巻き起こし、クライマックスに向けて会場のテンションはリミッターを超え、この日の最高潮を更新していく。

本編ラスト「ナミタチヌ」でフロアーの床を波打たせ、大団円を迎えた本公演。アンコールでは石川がMCカワタイとなってラップ調で地元である大阪のことを歌った「商売繁盛」、さらにDJ ヒロセこと廣瀬がグッズ紹介で、まずは和やかなムードを作り上げる。また、“僕らが中学・高校生の頃によく通っていた奈良を紹介したいんですけど”(DJ ヒロセ)と「若草山スターマイン」を演奏。すぐさまフロアーはお祭り騒ぎとなり、会場中に笑顔が咲き乱れた。そして、いよいよオーラス。“最後にもう一回、時間旅行をしましょう。俺たちが結成仕立ての頃に作った大切な曲を”(石川)と「ラブレター。」が届けられ、会場全体がピースフルな温かい空気に包み込まれる中、グランドフィナーレを迎えるのだった。

しかし、演出はまだ終わらない。客電気が落とされ、始まったエンディングムービーは本公演のエンドロール。さまざな構成のキャストとしてクレジットされている名前が全てが“石川大裕”というのは、どこまでも笑いを忘れない関西人スピリッツと言えよう。そうやってもう一度、会場中を笑顔にしたあと、さらに告知として12月20日にZepp Tokyo開催決定のアナウンスが! 場内が歓喜の声で沸いたことは言うまでもないだろう。最後の最後まで観客を笑わせ、喜ばせるBURNOUT SYNDROMESのこだわりはさすがである。

撮影:Jumpei Yamada/取材:土内 昇

BURNOUT SYNDROMES

バーンアウトシンドロームズ:関西在住の3ピースロックバンド。2005年結成。日本語の響き、美しさを大切にした文學的な歌詞やヴォーカル、その世界を彩る緻密に計算されたアレンジで、スリーピースの限界に常に挑戦している。16年3月にシングル「FLY HIGH!!」でメジャーデビューを果たす。

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