冬の蜂

太田裕美

冬の蜂

作詞:松本隆
作曲:筒美京平
発売日:1991/09/15
この曲の表示回数:26,730回

冬の蜂
あれは中禅寺の山影の
赤や黄色も褪せる頃
水藻絡むオールふと止めて
ボート岸に寄せたあなた

細い糸を張ったまなざしを
たてに切るような葉の雨
こんな小さな葉も死ぬ前は
炎えて美しくなるのね
指先にとまる冬の蜂
弱弱しく薄い羽が小刻みに震えた
翡翠の色した雨雲背に置いて
くちびる翳らせ あなたはポツリ言う
飛び交う蜂すら刺せなくなるのなら
心が刺せない愛も仕方ないよね

宿の湖畔沿いの部屋の椅子
そっと急須傾けた
頬に硝子窓の雨の色
滑る影が泣き真似した

烟草五本分の時が過ぎ
急に私の髪撫でて
君にふれることが出来るのも
今日が最後だねと言った
指先を飛んだ冬の蜂
残る力振り絞って雨空にかすれた
湖畔に降りつむ霧さえ消えうすれ
雲間に射す陽の眩しさ見上げてた
刺せない蜂さえ あんなに飛べるなら
私も独りできっと生きてゆけるわ

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