忠義ざくら

桜ほろ散る 院の庄
遠き昔を 偲(しの)ぶれば
幹をけずりて 高徳(たかのり)が
書いた至誠の 詩(うた)がたみ

大君(きみ)のみ心 安かれと
闇(やみ)にまぎれて ただひとり
刻む忠節 筆の跡
めぐる懐古に 涙わく

天莫空勾践(てんこうせんをむなしゅうするなかれ)
時非無范蠡(ときにはんれいなきにしもあらず)

風にさらされ 雨に濡(ぬ)れ
文字はいつしか 消えたれど
つきぬ誉(ほまれ)の 物語
永久(とわ)に輝く 花のかげ
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