BiTE A SHOCK
青春って、何気ない日常の集合だ(RYUUSEi)
2025年7月16日に“BiTE A SHOCK”が新曲「Ready Steady Blue」をリリースしました。青春のきらめきと、今という瞬間に飛び込む若者たちの心情を“青(ブルー)”で描いた、エネルギッシュなポップロックナンバー。恋とも友情ともつかない曖昧な関係、飛び込みたくてもためらってしまう気持ちを、勢いのあるサウンドで一歩を後押しする楽曲。
さて、今日のうたではそんな“BiTE A SHOCK”による歌詞エッセイを3週連続でお届け。最終回はRYUUSEiが執筆。自身にとっての“青春”を考えてみたとき、浮かんでくるのは、野球部に入っていた高校時代…。あなたは“青春”と訊いて何を思い浮かべますか? ぜひ歌詞と併せて、エッセイと受け取ってください。
青春って、何気ない日常の集合だ。
ありふれた会話、当たり前に過ごしてきた日々。
そんな何気ない時間が時を経て、青春になるなんて。あの頃の僕は想像もしていなかった。
もし時間を巻き戻せるのなら戻ってみたい。
そう思うほど、過去の自分を羨ましく感じる。
でも、それで良いのだ。きっと未来を生きる僕も、今を生きる僕を羨んでいるのだろう。
きっと人生はその繰り返しなのだ。
“青春”と聞いてあなたは何を思い浮かべるのだろう。
放課後に友達とゲーセン行ってコインゲームするとか、好きな子と廊下ですれ違うだけでその日が幸せになるとか、そんな他愛もない日常。
僕は青春にそんなイメージを持った。
ひたすら青くて甘酸っぱい「あの頃」。
これは僕の青春だ。
高校の野球部は甲子園に出場するほどの強豪校だった。公立中学の野球部で主将をしていた僕は安易な考えのもと、その野球部に入部した。
そして迎えた初日の練習。グラウンドで動く先輩たちの姿は、まるでプロ野球選手のように見えた。目を疑った。僕のような特に何かが秀でたところのない「凡人」は、そのグラウンドに存在しなかった。練習初日にして、「自分の選択が間違っていた」と確信させられた。
どんなキラキラした高校生活を送るのだろうと、ワクワクしながら入学式に出席した彼の考えと正反対の高校生活が始まった。
毎日走って、毎日野球をした。
凡にとってその日々は、とにかく練習についていくことで必死で、体力を温存する余裕はなく、目の前のことにただただ一生懸命に取り組む。これで精一杯だった。身体中に痛みを抱えながらも、遅れを取らないようにもがきつづけた。
頻繁に大きな課題にぶち当たりながらも、全てを全力で迎え撃つあの頃の僕は、まるで漫画の主人公のようだった。だが、僕には彼らのような「覚醒」も「潜在能力の解放」も訪れることはなかった。しっかり最後までもがき続けて、高校3年間という名の連載に静かに終止符が打たれた。
あれ、全然話と違くない?
凡が天才に勝って無双する展開は?
青春と呼べるキラキラした場面は?
てか全く青くなくない? アオハルってなに?
そう、僕の青春には、キラキラした放課後の制服デートも、友達とバカ笑いして下校するシーンも現れない。僕のイメージした華やかな青春とは、まるでかけ離れているのだ。
それでも、野球に全てを捧げたあの3年間は間違いなく僕の青春だったと言い切れる。
必死にやり切ったあの時間は、今も僕の中に全て青春として残り続けている。
あの時、間違いだったと思った選択も、今では間違っていなかったと考えられるようになった。
当時は地獄のような日々にうんざりすることも少なくなかったけど、不思議なもので今となっては、経験してよかったと思える。
そして、その姿も少しはキラキラしていたのかもしれないとさえ思えてくるのだ。
青春とは、何気ない日常の集合だ。そして、後になって初めてその価値に気づくものだ。
僕にとってのそれは、高校野球に全てをかけて、一生懸命に喰らい付いた日々だった。
青春とは「何をしたのか」ではなく、「どう過ごしたのか」が重要なのだ。
だからこそ、青春は学生時代に限ったものではないのかもしれない。
そう考えると少しワクワクしてくる。
今、この一瞬も、いつか「あの頃」と呼ぶ日がやってくる。青い春は今も、これからも、あなたの周りに転がっている。
あなたの中にある『青春』という名のアルバムには、まだ白紙のページが残されているに違いない。今まさに、あなたは青春の真っ只中にいる。
いつか今の自分を羨んでしまう、そんな瞬間を過ごしてみたくはないか。
<BiTE A SHOCK・RYUUSEi>
◆紹介曲「 Ready Steady Blue 」 作詞:深川琴美(Relic Lyric, inc.) 作曲:Ryuji Yokoi・高瀬愛虹(Relic Lyric, inc.)
◆新曲「Ready Steady Blue」
2025年7月16日発売