シャンプーが無くなるその度に僕は誰かと巡り会う。

 2019年6月19日に、岡林健勝によるソロ・プロジェクト“Ghost like girlfriend”が1stフルアルバム『Version』をリリースしました。先日のうたコラムでは今作から「pink」をご紹介。この歌の<僕ら>は、わざと愛を見ない振りして<曖昧な関係>を保っているような二人でしたが、1曲のなかでその心が淡く変化してゆく模様が描かれております。

大体3ヶ月毎くらいに僕の髪の匂いは変わる
シャンプーが無くなるその度に僕は誰かと巡り会う
「Under the umbrella」/Ghost like girlfriend

 さて、今日のうたコラムではさらに、同アルバムから梅雨の季節にピッタリなラブソング「Under the umbrella」をご紹介いたします。どうやら、この歌に描かれている<僕>もまた、自分の“愛”を手放しで信じられる主人公ではなさそう。その原因となっているのが<大体3ヶ月毎くらいに僕の髪の匂いは変わる>というこれまでの経験でしょう。

 歌詞を読み進めていくと想像できますが、多分<僕>の<シャンプー>はその時々の恋人により選ばれているもの。しかしそれは<大体3ヶ月毎くらい>で変わり<シャンプーが無くなるその度に僕は誰かと巡り会う>のです。つまり恋人も<大体3ヶ月毎くらい>で変わり、ひとりの恋人とそれ以上、長続きできないということではないでしょうか。

傘を盗られて立ちすくむ僕に話し掛けてくれた
透明な天井のその下で僕ら初めて笑った

「それじゃまた」って手を振り合って
びしょ濡れになった身体にシャワーを
買い忘れたシャンプーに気付いた

さよなら、また明日
去り際が目蓋から離れない
さよなら、また明日
今日は色々と疲れた
「Under the umbrella」/Ghost like girlfriend

 そんな<僕>の過去を踏まえた上で、幕を開けるのがこの歌です。まず、冒頭では<僕ら>の“出逢い”が描かれます。シャンプーがなくなり(=独り身になり)、雨のなか買い物に行った主人公。そこで<傘を盗られ>るというアクシデントが起こるのですが、その災難が逆に<君>が<僕に話し掛けてくれた>というラッキーなきっかけに。

 そして<君>の“ビニール傘=<透明な天井>”の下で笑い合う二人。相合傘というちょっとした“密室空間”でグッと距離が縮まり、一度きりの縁ではなく「それじゃまた」と言える繋がりが生まれたのでしょう。こうして<僕>は、これまでのジンクスどおり<シャンプー>が無くなり<君>という新しい人と巡り会いました。帰ってから<買い忘れたシャンプー>に気づくほど、高揚した時間であったことが伝わってきますね。

TSUTAYA で「タンポポ」を借りて
雨に刃向えてない姿に昨日の俺みたいって笑って
腹を空かせて

まだ止まない雨を聴きながら
平らげた飯の余韻で寝転んだ
髪の匂い、2人揃えて

さよなら、また明日
言わなくたっていつの間にか
暑くて布団から脚を起こさぬように出す夜が増えた
「Under the umbrella」/Ghost like girlfriend

 些細なきっかけから恋人同士になった二人。ここからは“ビニール傘=<透明な天井>”の下ではなく“部屋の天井”の下で一緒に過ごす時間が描かれてゆきます。映画を観て、ご飯を食べて寝転んで、お揃いのシャンプーで髪の毛から同じ匂いをさせて。そんな日々を繰り返しているうちに、いつの間にか「さよなら」なんて言葉は遠ざかり、<暑くて布団から脚を起こさぬように出す>ような思いやりも日常になりつつあります。

幸せがあまりにも過ぎるとね
不安が降り止まなくなるのはいつも
近付いて、近付き過ぎて、すれ違うから

2人して詰め替えたシャンプーが無くなりそう
それだけで何となく怯えてる自分が情けないけど

降り止まない不安は余所目に見るくらいで良いか
幸せの真下で僕ら夢中に過ごせたのなら
「Under the umbrella」/Ghost like girlfriend

 とはいえ、ふとしたときによぎるのが<大体3ヶ月毎くらいに僕の髪の匂いは変わる>という自分の経験です。今回もやっぱり同じなんじゃないのか。もうすぐで<2人して詰め替えたシャンプーが無くなりそう>だし。いつも<幸せがあまりにも過ぎると><不安が降り止まなく>なって、終焉を迎えてきたのだという事実も改めて実感しています。
 
 だけど、この恋が今までと違うのは、<降り止まない不安>に押しつぶされず、それを少し客観的に見ることができそうなところ。そして<降り止まない不安>以上に<幸せの真下で僕ら夢中に>過ごしたいというプラスのパワーが勝っているところ。今や二人を守る<透明な天井>は、日常という名の“幸せ”なのでしょう。

だからどうか出来れば変わらずこのまま居られるように
さよならはまだいつか
髪の匂いは揃えたままで
「Under the umbrella」/Ghost like girlfriend

 こうして幕を閉じてゆく歌。この二人の「さよなら」がずっとずっと遠くでありますように。どれだけ歳を重ねても<髪の匂いは揃えたまま>共に歩み続けられますように。そんなことを願わずにはいられないのが、Ghost like girlfriend「Under the umbrella」です。是非、お揃いの髪の匂いをさせている、大切なひとを想いながら聴いてみてください…!

◆紹介曲「Under the umbrella
作詞:Okabayashi Kensho
作曲:Okabayashi Kensho

◆1stフルアルバム『Version』
2019年6月19日発売
初回限定盤 UPCH-29331/2 ¥3,200 (+tax)
通常盤 UPCH-20517 ¥2,800 (+tax)

<収録曲>
1. Last Haze
2. girlfriend
3. Midnight Rendez-Vous
4. sands
5. pink
6. あれから動けない
7. shut it up
8. burgundy blood
9. Under the umbrella
10. fallin’
11. feel in loud