誰を愛したって終わるでしょ、なんて本気で言うの。

惑わせたいそうです まやかしたいそうです
ネオンライト 照らす からだ

彼女は19歳 ほんとうは一切
傷付きたくないからで

17平米 9万1000円
狭くて高い ワンルーム

誰を愛したって 終わるでしょ、なんて
本気で言うの
「PINK」/土岐麻子

 常に【街の人の音楽】を作り続けてきた“土岐麻子”が、2017年1月25日にオリジナルアルバム『PINK』をリリース!新たに【現代版シティ・ポップ】を意識して作られたそのサウンドも心地よくて最高なのですが、さらに注目していただきたいのが歌詞です。作詞はすべて土岐麻子。ひとつひとつの歌に、生きること、恋すること、愛することの酸いも甘いも教えてくれる、街の片隅の“物語”が詰まっております。今日のうたコラムではまず、このアルバムの表題曲「PINK」をご紹介。

まるで僕らは 脇役みたい
安い ドラマ 主役は誰

彼は29歳
にじんだ視界 煙がしみる

夜が散らかした 朝日の町は
夢からさめたよな顔で

すすけた路地に
欲望を手招く看板のピンク!
「PINK」/土岐麻子

 この曲は、街のどこかで暮らしている女性と男性、それぞれの生きざまが描かれた歌詞となっております。リアルな生活背景がイメージできますよね…。本当はゆるがないものや愛おしいものを探しているのに、傷つきたくないから本気の恋をしないようにしている19歳の女性。本当は、やさしい誰かや空しい毎日を埋められるものを探しているのに、いつまでも自分の人生の主役になろうとしない29歳の男性。しかし、彼らは諦めているわけではなく、どちらも“人肌”のなかであがいて、もがきながら生きているのです。

はりつめた 幾千の弦を
一斉にはじけば
無口な想いが 震えてすぐに
響き 叫びに変わるよ
近づいて もっと触れたいよ
そう近づいて
ピンクの血潮の 素肌の下に
Tonight Tonight なにかがあるなら

Under the PINK カフェのキャンドルライト
Under the PINK 小さなブルーライト
Under the PINK 地下のブラックライト
誰を探してる

Under the PINK 止められないほど
Under the PINK 愛おしいものを
Under the PINK 人肌のなかに
夢見ているから
「PINK」/土岐麻子

 土岐麻子はこのアルバムについて『タイトルの“PINK”は…たとえば夢の色のこと。現実を塗り替えるのが想像力だとするならば、その色のイメージがピンクでした。このアルバムが皆さんの想像力のお供になってくれたら最高だなという願いがあります。また、肉の色のこと、それは透けた肌の色のことでもあります。孤独な時、人が求める安心は、たとえばピンクの向こう側にあるかもしれません。このアルバムが他人の人肌のようなものになってくれたら、これまた最高です。』とコメントしております。

 アルバムのタイトルを背負った表題曲「PINK」もまさにその言葉どおりの1曲。歌詞を読むだけで、彼女や彼の“人肌”に触れられるような気がしませんか? <無口な想いが 震えてすぐに 響き 叫びに変わるよ>…この叫びとはきっと「変わりたい」「変えてほしい」という想いでしょう。ドライな自分を装って生きていても<Under the PINK>=<ピンクの血潮の 素肌の下>では、惹かれ合う同じ色の“ピンク”をずっと求め続けている…。そんな彼らの“夢”が伝わってきますね。

毎日がはかない
とびきりのバレンタインみたい
ふたりきりの時間
とけてゆく甘さ
その一瞬を 大事に味わいたい
「Valentine」/土岐麻子

憂鬱をのせた
タルトを一切れ
一口で食べる
誘惑のフォークで
次の一切れ
そしていつの日か
孤独だけが太ってゆくの
「脂肪」/土岐麻子

いつでもずっと信じたかった
愛とはすべて許すことと
でも気づいたら なにひとつも
彼に許されてこなかった
「Rain Dancer」/土岐麻子
 
 また、そのほかのアルバム収録曲もオシャレで気持ちの良いサウンドの中に、ときに甘く、ときに苦しく、ときに切ない物語が綴られておりますので、是非、歌詞と併せてじっくり楽しんでみてください。そしていろんな“人肌”に触れてみてください!

◆ニューアルバム「PINK」
2017年1月25日発売
AL+DVD RZCD-86245/B ¥4,500+税
AL RZCD-86246 ¥2,900+税

<収録曲>
1 City Lights
2 PINK
3 Valentine
4 Fancy Time
5 脂肪
6 Rain Dancer
7 Blue Moon
8 Fried Noodles
9 SPUR
10 Peppermint Town