救助船

 2023年11月1日に“カノエラナ”4th Single「Queen of the Night」をリリースしました。今作はTVアニメ『ティアムーン帝国物語~断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー~』エンディングテーマ、TVアニメ『Helck』第2クール エンディングテーマ、そして、少女漫画誌「なかよし」で連載中の大人気作品『千紘くんは、あたし中毒。』イメージソングといった収録楽曲3曲全てがタイアップ楽曲で構成されております。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな“カノエラナ”による歌詞エッセイをお届け! 大きな波は望まないはずだったのに、自分の意思で大海原に向かっている今。その“航海中”の想いを綴っていただきました。ぜひ今作と併せて、エッセイを受け取ってください。



救助船
 
ゆらゆら飛んだ 海なら満ちた
遠いむかしの 記憶の底の
沈んでたのは ガラスの瓶の
内に潜るは 微かな香り
 
夏の匂いが 濃くなる前に
何処かへ行こう 約束をした
行く宛なんて わからないけど
大丈夫だよ 大丈夫だよ
 
大きくなると 小さくなって
砂の浜には 汚れが打って
大丈夫だと 言ったことさえ
遠いむかしの 記憶の底だ
 
広げた地図に 明日を記す
ただひたすらに 海原を急く
その時落ちた ガラスの瓶に
ヒカリが消える 終わりを書いた
 
どんな時でも 進み続けた
航海やめた 船も見てきた
折り返しざま 肩を叩いて
駆ける言葉は 水面に消えた
 
誰よりずっと 知っているのに
誰よりずっと わからないまま
矛盾の中で しぶとく生きて
先へ進もう 先へ進もう
 
広げた地図に 明日は見えず
ただひたすらに 海原を急く
あの時落ちた ガラスの瓶に
ヒカリかがやく 未来があった
 
巡り巡って 私へ戻る
私が生んだ 絶望のうた
きっと今度は切望のうた
ヒカリかがやく 希望を書いた
 
誰かにとって 胸を打つもの
誰かにとって 相容れぬもの
誰かにとって 見向かないもの
私にとって 大切なもの
 
きっと旅路は 無駄じゃなかった
多くの人の 熱さに触れた
帆を張るように 底の底から
空気を吐いて 音に変わった
 
海の底では 聴こえなかった
瓶の中では 聴こえなかった
うたをうたおう なつかしいうた
離れないよう 強く結んだ
 
振り返ったら 近くにあった
遠回りでも 線は繋がる
エンを縁取り 空に掲げる
私にとって 眩しい光
 
私の海は凪いでいる。
ほんのたまに少しだけゆれることもあるけれど、
基本的にはゆるやかな航海だ。
大きな波は望まない。
そう思って生きてきたのに、自分の意思で大海原に向かっている。
なぜ? わからない。
あまり自分のことがよくわからない。
ずっとずっと考えているけれど
私は自分がよくわからない。
わからないなりになんとかやってきた。
誤魔化すのは得意な方だ。
けれどもなんだかずっと不安定で、
どっちつかずの航海なのかもしれない。
矛盾矛盾矛盾。
私は自分を知っていきたい。
じゃないと他人もわからない。
日により自分が変わっても、
変わらない何かをつくりたい。
 
<カノエラナ>


◆4th Single「Queen of the Night」
2023年11月1日発売
 
<収録曲>
01. Queen of the Night
02. ヒカリ
03. ハニーホリック