一回、相手の気持ちになるのがカノエの作り方なのかなって。

 2019年12月4日に“カノエラナ”がニューアルバム『盾と矛』をリリースしました。全10曲が収録されている今作。リード曲「嘘とリコーダー」は<先生僕がやりました>と語り調で始まり、ド頭から挑戦的で非道徳的な歌詞が印象的。また、巷で話題の“タピオカ”にスポットをあてたライブ人気曲「タピオカミルクティーのうた」や、カノエの夢の中に出てくるファンタジーな世界観を表現した「jOKER」などバラエティに富んだ内容に。
 
 さて、今日のうたコラムではそんなカノエラナ本人による、スペシャル歌詞エッセイを3週に渡りお届け!今回は第1弾「1113344449990」第2弾「嘘とリコーダー」に続く、最終回です。綴っていただいたのは、アルバムの9曲目を飾る花束の幸福論にまつわるお話。エッセイの終盤では、周りからよく「人間味が無いとか、生活味が無いとか」言われがちだというカノエラナ独自の作詞法も明らかに…。歌詞と併せて、最後までじっくりご堪能あれ…!

~M-9「花束の幸福論」歌詞エッセイ~

 ファンシーに書いているんだけど、コードもファンシーなんだけど、ドス黒フィーバーな曲(笑)。自分の中では「(タイムカプセル)」(2nd Album『盾と矛』M-7収録)のアナザーバージョンとして捉えていて、「(タイムカプセル)」の主人公二人がもうちょっとポップな人生を歩んだらどうなったかな?と。でも最終的にはポップにしきれず、どうしてもグロい方向に行っちゃうんですが、明るくしたヴァージョンがこの曲です。

 あと、「花束と導火線」(ライブ会場限定CD「ぼっち2」M-8収録)って曲(くっつくことが出来ない二人が「どうしようか?」ってなっている物語)ともリンクしていて、何と無くあの二人も一緒の人生を辿っていて、彼ら彼女らにとってのハッピーエンドになったバージョンです。

 この二人はお互いがめっちゃ好きで、「あたしたち離れられないよね?」「ね。」って確認し合っている、狂人的な道を歩むか歩まないか?嫉妬とか拘束でがんじがらめになってる状況だが、世間と全くかけ離れた二人だけの世界にどっぷり浸り生きている。

“君の左目に真っ赤な薔薇が咲いた”

 これは「薔薇は咲いちゃったんでもう外には出れないよ」ってニュアンスです。ちょっと怖いですね。私の恋愛観では無いんですが、愛の形が歪んでいる方が面白く感じて、それを書きたいなーと。曲のコードは暗いと本当に真っ黒になっちゃうんで、ハッピーに明るく仕上げてます。そうする事によって逆に気持ち悪さを出すって狙いもあります。
 
 パッと聞きはハッピーな曲だけど、よくよく歌詞を読んだら「えっ」って、三度見するような。お互いが痛みに痛みつけちゃう、それが二人の中のハッピーエンド。全くの他人からすると「それはちょっと変なんじゃないの?」って。でも「他人だし関係なくない?」みたいな価値観。私のめっちゃ好きなワールドです。彼ら彼女らにとっての幸福論。

“「花は死んだあとも綺麗で羨ましい」”

 「死んだ」ってフレーズを頭に持ってくるとちょっと「ドキッ」とする。この曲は危険信号が出ている曲ですよ、って何となくお知らせしておいて、最後まで聴いた後に「なんだったんだろう?」って後味を悪くするって目的のフレーズです。

 人って花が綺麗ってちぎったりしますよね?「ブチッ」ってちぎって写真を撮ったり。でも、そのお花は「ブチッ」ってちぎられた時に死んでしまう。死んでいるけどめっちゃ綺麗。人って酷いことするなって。

 最近気付いたんですが、一回、相手の気持ちになるのがカノエの作り方なのかなって。ものに対しても。例えば私がお花だったらどう思うのだろう。「撮られるためにこんな懸命に咲いていた訳じゃないのに、なんで急に千切られて死ななければいけないの?」とか考えたりして。でも人間側はなんとも思わないじゃないですか。「花が綺麗だから取っただけだよ、何か問題あるの?」って、「えっ、生きてるのに…」。そんな矛盾が残酷に感じられてしまう。この表現も裏テーマになってます、何かに成り代る。って表現。

 いろんな人から人間味が無いとか、生活味が無いとか、何をどうして生きてるのかわからない、ってよく言われるんですが、なんで言われるのかな?って考えたときに、すぐに別のものに成り代わって自分が一回消えるからじゃないかな、と。だから実体が感じられない。

 世の中の現象は常に矛盾が付き纏っている、生きるための盾と矛が必要だ。そう考えた時に自然と捻くれ拗れた文章がよく出てきます。この曲は、カノエラナの本質がわかる曲だと思います。

<カノエラナ>

◆紹介曲「花束の幸福論
作詞:カノエラナ
作曲:カノエラナ

◆ニューアルバム『盾と矛』
2019年12月4日発売
通常盤 KRKB-1004 ¥2,500+税
初回限定盤 KRKB-1003 ¥3,500+税

<収録曲>
01.1113344449990
02.嘘とリコーダー
03.ダンストゥダンス
04.猫の逆襲
05.タピオカミルクティーのうた
06.jOKER
07.(タイムカプセル)
08.セミ
09.花束の幸福論
10.最後の晩餐