2023年7月19日に“インナージャーニー”が3rd EP『いい気分さ』をリリース!今作には全5曲が収録。以前よりライヴで披露されていた「手の鳴る方へ」以外はすべて今年に入ってから書かれた新曲で、昨年のアルバムリリース、初のツアーを経て、バンドとして大きな成長を遂げた彼らの最新の魅力が存分に詰まった作品となっております。
さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“インナージャーニー”のカモシタサラによる歌詞エッセイを3回に渡りお届け! 今回が最終回です。綴っていただいたのは、収録曲「ラストソング」にまつわるお話。歌を作る理由、歌う理由を考えていたときに生まれた冒頭のワンフレーズ。感情のままに書いたこの曲への想いを明かしてくださいました。歌詞と併せて、エッセイを受け取ってください。
3回に渡ってここに文章を書かせてもらっているが、最後は「ラストソング」について綴ろうと思う。
年々、文章や歌詞を書くのに時間を要している気がするが(このエッセイを書くのも毎度提出遅れておりすみません、、、)、それは私の中の衝動のフェーズが1度終わり、物事とじっくり向き合って添削を繰り返すようになったのだと思うことにしている。
この歌はそんな時期にすんなりと気持ちを歌うことができたものだから、EPの中で1番大切な曲になっている。とは言ってもやっぱり考えることはやめていなかったな。
もう眠ろうかなと思いながらも、歌を作るのは、歌うのはどうしてだろうと、自室の天井を見上げながらぼんやりと考えていた。そうしたら、
この歌が終わる頃 君の中にいれるかい?
という言葉がメロディと一緒に素直に出てきて、ああ今私は誰かに必要とされたかったのかと気づいた。それってとってもエゴだと思っていたし、誰かを救うぜ! という気持ちでやっているわけではなかったので、歌を誰かの中に残したい、というような情熱がどこかに眠っていたのだと思うと嬉しくもあって感情のままに書いた。
私は歌詞を書くとき、何年後に歌っていてもあんまり恥ずかしくならないものを作るようにしているが、出てきてしまったものは仕方がない。この気持ちが変わることもあるかもしれないけれど、今現在の感情に嘘はないので、進めた。
そこから先は、ただひたすらに、何も持っていなくてもあなたはあなただ、ってことを言いたくて、これは自分自身にも。
以前SNSで、“人には向いていることが何かしらひとつはあるから大丈夫”、という言葉を見かけた。確かに向いていることや才能がある人がいるのもわかるし、それを活かすことでその人の生きやすさに繋がるのはまあわかる。
けれどそういうものが見つからない人もいるし、あったけど無くなった人もいるだろうし、そんなの無くたって充分素晴らしい人生なのに適当な言葉で励まさないでほしい。私はおせっかいが好きじゃないから、それが善意であっても、そういう言葉で何も持ち合わせていない自分のことが嫌になってしまったりする。
自分でゆっくり見つけるから放っておいてくれて構わない。神様に見放されても、あなたはあなただよ、と、何かそういうことで悩んでる人がいたら、もしくは自分自身がそういう状態に陥った時に思い出せるように、どんどん言葉が出てきた。
それから、ライブハウスで歌うことも想像していたから、ここに来ればみんな大丈夫安心して、と、お守りのような、居場所になる歌を作りたかった。そうやってまた私も適当な言葉で励ましている一員かもしれないけど。
弱いままでいいから、何もなくてもこの世界にいるだけで素敵なことをどうしても人間は忘れがちだ。そんな時は、まだ見ていない景色のことをたくさん思い浮かべて、明日生きる理由をできるだけたくさん思い浮かべて、眠る。
結局こうやって生とか死とかに行き着いたりするから、考え続けて歌を作るのは面白い。書けなくなる日が来たら、自分の歌に救われたり過去の自分に嫉妬したりするんだろうな、とも思った。何かが始まると終わりを見据えてしまうような性格だからかなり厄介ではあるけど、私はまだ、書き続けて、歌い続ける予定でいる。
だから、私の歌が終わる頃、あなたの中で生き続けられたらとても嬉しい。
◆3rd EP『いい気分さ』
2023年7月19日発売
<収録曲>
1. PIP
2. ステップ
3. 手の鳴る方へ
4. 夜が明けたら私たち
5. ラストソング