友人について

 2023年5月10日に“クジラ夜の街”がメジャーデビュー1st EP『春めく私小説』をリリースしました。今作には、ライブでもすでにファンからも 大反響のダークファンタジーな世界観を描いたEPリード曲「BOOGIE MAN RADIO」を含む全6曲が収録!
 
 さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“クジラ夜の街”の宮崎一晴による歌詞エッセイを3回に渡りお届け!最終回は今作の収録曲「踊ろう命ある限り」にまつわるお話です。心のなかでふたつの感情が揺れて、悶々として、堂々巡りが止まらないあなたへ。この歌詞とエッセイを受け取ってください。


絶交した友人と
100%仲直りできる薬があるとして
あなたは飲みますか?
 
俺は、飲みます
飲んで、あいつとまた友達になりたい
10年来の親友
人生で、母の次に長く時間を共にしたであろうあいつと、また夜通し遊びたい
夕日の丘公園まで自転車走らせたい
レイマンのゲームで盛り上がりたい
何事もなかったみたいに、一緒に笑いたい
 
これを読んでる皆さんも
取り戻したい友情があるなら
飲むって人は多いんじゃないでしょうか
なにせノーリスクで復縁できますからね
なんなら多少苦くても
吸うタイプのしんどいやつでも
俺は喜んで口にすると思います
 
では、少し条件を変えて
 
絶交した友人に「ごめん」と言えたら
100%仲直りできるとして
あなたは謝りますか?
 
薬と同じでノーリスク、必ず復縁できます
さてどうでしょうか
 
俺は、謝りません
だって、謝りたくありません
なんでこっちから謝らないといけないんだ
そんなのおかしい
もういいです
さようなら
レイマンもやれなくて結構です
 
すみません
 
仲直りはしたいけど
こっちから歩み寄るのは嫌だ
そんな気持ちの人は
俺以外にもそこそこいるでしょう
なんだか本当に、腹が立つよなぁ
向こうが手を差し伸べてくれないことにも
オトナになれない自分にも
 
あいつがいないと
寂しいってことは
もう痛いほどわかってるんです
でも一方
俺は悪くない、あいつのせいだっていう
グツグツとした溶岩みたいな怒りもあって
この二つの感情が乗っかった天秤は
憎たらしいほど均衡でびくともしないんですよ
 
そうだ
こんな堂々巡りをしているうちに
俺は大切なものを失ったのでした
余計なことを考えすぎて
瑣末な固定観念に囚われて
シャワーヘッドにガン飛ばして
1人妄想の口喧嘩に明け暮れる
そんな鬱屈とした日々を
過ごしていた最中
クジラ夜の街にタイアップの依頼が舞い込む
 
「最高に明るい曲を書いてほしい」
 
俺は祈りにも似た“踊ろう命ある限り”という曲を、書き殴りました
英題は“My Life”
こんな風に生きれたら
明快に生きれたら
どれほど良いか、どれほど良かったか
そんな理想を、歌にぶつけたのです
 
俺のように堂々巡りをしてしまっている人にも届いてほしい
この世は、受けた生は、一度きりのボーナスなんだから
悶々としてるだけじゃ意味がない
半生を反省に費やすなんて、悲しいから
飛び出せよ
話せよ
殴りかかれよ
じっとしているよりずっと良いから
 
なんて、言いつつも
こんな歌を、歌いつつも
俺はまだ何も言い出せないまま
心に鎮座する天秤は壊せないままです
でも
少しはぐらついた気がしました
だんだんと
だらだら悩むだけの俺が
変わりつつあるのかも
 
かも、ですが

<クジラ夜の街・宮崎一晴>


◆紹介曲「踊ろう命ある限り
作詞:宮崎一晴
作曲:宮崎一晴

◆メジャーデビュー1st EP『春めく私小説』
2023年5月10日発売
 
<収録曲>
1. 時間旅行 (Prelude)
2. 時間旅行少女
3. BOOGIE MAN RADIO
4. 浮遊 (Interlude)
5. ハナガサクラゲ
6. 踊ろう命ある限り