好きなことで生きていく

 2023年4月19日に“レトロリロン”が1st EP『インナーダイアログ』をリリースしました。既発曲3曲+新曲3曲を収録した今作。インナー(内側)+ダイアログ(対話) という単語をつなげて“自分自身との対話”という意味になっており、このEPが自分自身と対話するきっかけになってほしいという思いが込められている作品です。
 
 さて、今日のうたコラムでは最新作を放った“レトロリロン”の涼音による歌詞エッセイを3週連続でお届け。今回は第2弾です。綴っていただいたのは、今作の収録曲「きれいなもの」にまつわるお話。なぜ、音楽を始めたのか。そしてなぜ、音楽を続けているのか。そんな夢の軌跡と今の想いを明かしてくださいました。



―好きなことで生きていく―
 
 
将来は宇宙飛行士になることが僕の小学校の頃の夢だった。
 
物心ついた時から何事も1番でないと気が済まなかった僕は、ほとんどの人が行くことのできない宇宙を夢に描いたのだ。しかし、いつしかそんな夢は消え去り今は曲を書いて歌を歌っている。
 
 
時は遡り、中学2年生になった頃、僕は人と関わることに初めて恐怖を覚えた。
 
全ての人が自分の敵に見え、少しずつ歯車が噛み合わなくなり、僕は晴れて一人ぼっちになった。塞ぎ込む日々の中、自分の不甲斐なさに幾度となく追い込まれ、途方に暮れていた。
 
そんな時だ。音楽に救われてしまった。
救われてしまったのだ。
 
 
この衝動は簡単には抑えることができず、気づけばギターを手にしていた。
そして溜まりに溜まった自己承認欲求を、思い切り音楽にぶつける。
これが自分の天職なんだと本気で思っていた。
 
しかし、好きだけで“続ける”ということは簡単ではなかった。
10年間歌い続けたが、結果は一つも出ない。何度も辞めようと考えた。
けれど何故か辞めることが出来なかった。全てを捧げてきたつもりだったのに、全然思い描いたそれには届かないのだ。
 
 
とてもきれいだった夢はいつからか重荷となり、僕を水の中に引き摺り込んでくる。
それでも一筋の光がきれいだったから僕は息をすることを諦められなかった。
 
 
どれだけ苦しくても、どれだけもがいても僕は音楽を手放せない。
救われてしまった。魅了されてしまった。一体何故そうなったのかを知りたい。
そうやって這った先にある答えを見るのが僕の夢だ。
 
そんな夢を叶えるため、僕は曲を書いて歌を歌っている。
 
<レトロリロン・涼音>



◆紹介曲「きれいなもの
作詞:涼音
作曲:涼音

◆1st EP『インナーダイアログ』
2023年4月19日発売
 
<収録曲>
1.カウントダウン・ラグ
2.Restart?
3.Document 
4.Don’t stop
5.きれいなもの
6.深夜6時