最高の愛の言葉。

 2023年2月5日、様々なアーティストへの楽曲提供でも知られる温詞(あつし)のソロプロジェクト“センチミリメンタル”の新曲「ひとりごと」が配信スタート!今作はドラマ『ひともんちゃくなら喜んで!』の主題歌として書き下ろした楽曲となっております。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“センチミリメンタル”の温詞による歌詞エッセイをお届け!今回はその第2弾です。第1弾では新曲「ひとりごと」の制作過程を綴っていただきましたが、今回はさらにワンフレーズずつをピックアップしながら、歌詞に込めた想いを明かしてくださいました。今作と併せて、エッセイをお楽しみください。



前回のコラムで、「ひとりごと」という楽曲を作るに至るまでの過程などをお話しさせていただいたので、今回は実際に歌詞について触れていきたいと思う。
 
 
どれもこれもきっと君に
出会うためだったんだ
そういうことに出来そうな気がしてるよ
これを幸せと呼ぶのかな
 
幸せとは一体なんなのか、というのはよく議論される話題だけれど、自分なりに考えてみようと思った。
 
バタフライエフェクトという言葉がある。
非常に小さな出来事が、最終的に予想もしていなかったような大きな出来事につながることを意味する言葉である。
 
人生にはいろんなことがあって、胸のつぶれそうな痛みを伴う別れや、仕事や対人関係での苦悩、はたまた小さいことで言えばタンスの角に小指をぶつけただとか醤油を服にこぼしただとか、様々な種類の悲劇がある。
 
でも、それらも全て“君に出会うために必要不可欠なことだった”と思えるような大切な誰かに巡り会えることが「幸せ」なのかもしれないな、というひとつの結論に辿り着き、この歌は歩みを始めた。
 
 
何もかも上手くいかない
真っ黒な日々でも
君の煌めきを見逃さないためだとしたら
意外と悪くないかな
 
星や月の小さく優しい光は暗闇の中でしか見つけられないように、心に影を落とす出来事たちは、君の煌めきをちゃんと見つけられるための背景なのだと考えていけたらいいなという思いで書いた。
 
 
La La La La...
おんなじ想いを分け合えたらいいのに
La La La La...
こころは聞こえないんだな
 
そんな自分の想いが、大切な誰かにとっても同じものであったらいいのに、心の中の本音というのは、覗いたり盗み聞きしたりできないものだ。
 
 
だから いつの日も
思ってること "愛してるよ"
まだ照れくさい ひとりごと
口喧嘩さえも好きだよ
その声に僕の声が重なるから
 
すれ違う時があるのも、
出会って、一緒にいて、向き合っているからこそ。
 
 
抱きしめていいかな
僕のすべてで 守らせてよ
君の生きる未来ごと
たぶん来世でも好きだよ
そういう気持ちなんだよ
覚えといてよ
 
言葉は万能ではないから「愛してる」や「好き」だけではきっと伝えきれない想いがあって、それを自分なりの言葉で表現したものにサビの最後の締めくくりを任せたいと思った。
 
正直、僕は来世が存在するとかしないだとか、自分の中での結論は現状まだない。
それでも、もし生まれ変わって新たな命を生きる時が来たとして、その時にも、もう一度出会いたいな、と思えるような気持ちって、最高の愛の言葉なのかもしれない。
そう思い、このフレーズでサビを締めくくることにした。
 
 
誰も彼も抱いている
人間のほつれを
やさしく包んであげられる
あたたかさを
君に教わったんだよ
 
自分の足りないところを受け入れてもらえたり、逆に相手の足りないところを受け止めるという経験をしたり、体験を重ねていくことで、少しずつ人は優しくなれるような気がする。
 
 
La La La La...
おんなじ日々を生きていられますように
La La La La...
奇跡的な当たり前をしよう
 
大切な人と連絡を取ったり、顔を合わせたり、生活をしたり。
そんな奇跡的なことを“当たり前”にできるということがどんなに幸せなことなのかを忘れないでいたいし、聴くたびにその気付きをくれる楽曲にしたいと思い、この歌詞を書いた。
 
 
子どもみたいな顔して
寝息たてる君を
見つめ気付いた 生命の意味を
数えきれぬほどの
死にたいワケなんかは
たったひとつで消えるんだな
 
センチミリメンタルには「死んでしまいたい、」という楽曲があるのだが、その楽曲のテーマにもなっているように、僕らは「死にたい」という言葉に「もっと上手に生きたい」という矛盾した願いを乗せてきた。
 
しかし言葉が持つパワーは凄まじく、徐々に「もっと上手に生きたい」という本質よりも「死にたい」という考えばかりに支配されてしまったりする。なぜなら、そういった感情に出くわす場面は、大小はあれど数え出したらキリがないからだ。
 
それでも、生きるべき理由がたったひとつでもあれば、僕らは踏みとどまることができる。「死にたい」のではなくて「生きたい」のだと力強く気付かせてくれる。
だからこそ、そのたったひとつに巡り合うということは、何にも代え難い、素晴らしいことだ。
人生は、そのたったひとつを探し、やがて巡り合い、寄り添い大切にし合っていくためにあるのだと思う。
 
そして。
 
だから いつの日も
思ってること "愛してるよ"
君にだけの ひとりごと      
苦楽も共に 刻んでいこう
その声に僕の声で答えていくよ
抱きしめているから
僕のすべてで 守っていくよ
君と生きる未来ごと
たぶん来世でもふたりだよ
そういう気持ちなんだよ
覚えといてよ
 
 
…随分長くなってしまったけれど、
今一度歌詞を全部並べ、ひとつひとつ振り返ることで自分としても改めてこの曲に込めた想いに気付くことができた気がする。
 
「ひとりごと」。
あなたは、この歌を聴きながら、そしてこのコラムを読みながら、誰のことを思い浮かべるんだろう。
そんなことを考えながら、僕はこの文章を書き終えることにする。
また次回。

<センチミリメンタル・温詞>



◆紹介曲「ひとりごと
作詞:温詞
作曲:温詞