あなたを想って壊れてしまう前に。

 2022年8月でデビュー5周年を迎えた“足立佳奈”が、毎月の連続配信リリースを行うことを発表。その連続リリース第7弾として10月28日に新曲「リミット」リリースしました。楽曲制作は、「ゆらりふたり」をはじめ「面影」「ひとりよがり」など数多くの楽曲を手掛けたCarlos K.とタッグを組み、作詞は足立佳奈本人が手掛けております。
 
 さて、今日のうたコラムでは、アニバーサリーイヤーを記念して、5月~12月に毎月“足立佳奈”による歌詞エッセイをお届けいたします!今回は第6弾です。綴っていただいたのは、新曲「リミット」にまつわるお話。もう動かない時計の針、もう動かない恋…。いなくなってしまった大切なひとを思い出しては苦しくなるあなたへ。この歌詞とエッセイを受け取ってください。



部屋の時計の針が今朝止まっていた。
 
3日前の夜
あなたがいなくなったあの日。
信じられない気持ちでいっぱいだった。
なんだか現実じゃない気がして。
まだ戻れるような気がして。
 
動かない時計の針をみて理解した。
 
もう本当に終わったんだなって。
 
時計をみてこんな気持ちになったこと、
今までなかった。
 
 
正直、終わってしまう少し前から
あなたの目には誰が映ってるんだろう。
そう思ってた。
今までは、あなたの気持ちや行動は、
常に私と一緒だって感じることができた。
 
でも、ちょっとずつ変わっていくあなたを見て疑ってしまう私がいた。
 
香水をつけないタイプのあなたが、
香水をつけるようになったり、
古着が大好きだったあなたが、
綺麗なシンプルな服で出かけるようになったり。
 
ねえ、誰を見てるの?
 
朝早くに出かけるのも、
夜遅くに帰ってくるのも、
仕事だから仕方ない。
そんなの分かっているはずなのに。
 
だんだん、仕事だからって自分に言い聞かせるのも苦しくなってた。
 
あなたが大好きだから何も言えなかった。
あなたが大好きだから変わっていく姿も隣でみられるだけで幸せだった。
 
でもそれは私だけだったみたい。
難しいね。
 
 
部屋に置いていった忘れ物を見つけて、
また会えるって思ってしまう。
そんなに期待しないようにしながら。
 
マフラーに、
セーター、バック、たばこ。
 
コレサワさんの「たばこ」のMVを思い出した。
あの女の子みたいに、
私もふとたばこを吸ってみた。
 
私には合わなかった。
 
あなたといる時は、
嫌がってた私だけど、
今はそんな思い出さえも恋しく思う。
 
たばこだけじゃない。
 
あなたが好きだと言ってた髪色にしてみたり、
行きたがってた美術館に行ってみたり、
欲しがっていたレコードを飾ってみたり。
 
そんなことしても、ただあなたを思い出して苦しくなるだけなのに。
なんにも変わらないのに。
 
 
止まってしまった時計の針。
止まってしまった恋。
 
私の針は自分で動かさなくちゃ。
新しい時計を買ってみよう。
 
あなたを想って壊れてしまう前に。

<足立佳奈>



◆紹介曲「リミット
作詞:足立佳奈
作曲:足立佳奈・Carlos K.