詩織ちゃんへ、あおいより。

 2022年9月29日に“新山詩織”が盟友・山崎あおいとのコラボシングル「Free (feat. 山崎あおい)」を配信リリースしました。デビューから10年、同時期のふたりがこれまでのお互いを想って書き上げたナンバー。「たった一人でも一緒に乗り越えていける人がいれば、いろいろな壁に当たっても、何度でもそこから羽ばたいていける」という気持ちを新山詩織と山崎あおいが交互に歌っております。
 
 さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“新山詩織”と“山崎あおい”による文通的エッセイをお届け!【前編】では、山崎あおいから新山詩織へのお手紙です。ふたりのこれまでの軌跡と今、抱いている気持ちを綴っていただきました。コラボシングルと併せて、お楽しみください。



すっかり秋めいて来ましたが、いかがお過ごしでしょうか。と聞いておきながら、この間も会ったばかりでしたね。
 
詩織ちゃんとの出会いはライブでした。演奏スタイルの似ている私たちは、あの頃「ギタ女」という言葉に飲まれながら、あちこちのイベントで一緒になり、自然とお友達になっていった気がします。……いや、私が「お近づきになりたいですオーラ」で強引に距離を詰めたような気もします。
 
「これ、連絡先です…」と、アドレスを書いたノートの切れ端を渡してくれた詩織ちゃん。初めて遊ぶ日の前の晩「あおいちゃん、黒豆は好き?」とメールが届き、不思議に思いながら「好きだよ」と返事をすると、翌日「お裾分けしようと思ったけど、玄関に忘れちゃって…」と明かしてくれました。手土産に黒豆をお裾分けしてくれようとする、10代の女の子。どこまでも期待を裏切らないな、と感動したのを覚えています。他愛なくて文字にできないものも含めて、10年分の思い出が沢山ありますね。
 
 
会うたび詩織ちゃんには、赤裸々に色々な話をしてしまいます。ですが今回はせっかくなので、なかなか面と向かっては言えない、もう一枚内側のお話をしようと思います。詩織ちゃんの存在を知ってから、出会うまでのお話です。
 
2013年の春頃だったかな。私のインタビューが某雑誌に載ったことがありました。中学生の頃から読み続けた、憧れの雑誌です。噛み締めるように自分の記事を読み、パラパラと紙をめくると、カラーで、私の記事よりも遥かに多いページ数で、デビューへの意気込みを語る女の子がいました。それが、私が初めて詩織ちゃんのことを知った瞬間です。
 
悔しさか、羨ましさか、何なのか。とにかく心臓がぎゅっとなりました(シンプルに「めっちゃかわいい」とも思いました)。音楽の才能があって、唯一無二の声を持っていて、おまけに見た目や雰囲気まで、私が「なりたかった」のが詩織ちゃんそのものです。これから、そんな子と同じフィールドで比べられて、歌っていかなくてはならない。CDショップやタイムテーブルで名前が並ぶたび、嫉妬してしまいそうな自分と、それでも純粋に憧れてしまう自分とで、揺れていました。
 
でも、あのライブの日、お互いに自己紹介をして少しだけ話をすると、卑屈な気持ちは一瞬でどこかへ消えました。
 
最初の会話、覚えていますか? 共演者同士だから「ライブ、良かったですね。」とか「いやいやお名前はよく拝見してましたよ~」とかかと思いきや、詩織ちゃんは「あおいちゃんは免許、持ってますか?」と聞いてきたのです。私が「はい」と答えると、「いいなあ」……。
 
上手く言葉にできませんが、新山詩織は想像以上に新山詩織で、そこに裏も表も打算も駆け引きもなく、もう、120%好きになるしかありませんでした。
 
デビューしてからずっとファイティングポーズを崩せずいた私にも、無防備に、たくさんの話をしてくれた詩織ちゃん。つられて私も心の内のアレコレを話し、話しすぎたかな、と思うこともあるくらい。今ではかけがえのない戦友、みたいに感じています。そんな刺々しい感触ではないけれど。
 
 
同じ時代にデビューして、同じような壁にぶつかって来たから、きっとこれからも同じようなタイミングで悩んだりするんだろうね。でも、それを分け合える人がいるって、とても心強いです。友達はお互いに沢山いると思うけれど、「あの頃」を共有して現在や未来を話せるのは、たぶん詩織ちゃんくらいです。あの頃の詩織ちゃんにも、今の詩織ちゃんにも、本当にありがとう。
 
……なんだか、空回りしたラブレターみたいになってしまいました。お恥ずかしい。読み終わったらスマホごと燃やして捨ててください。これからも一緒にお酒を飲んだり、美味しいお店を報告し合ったり、一緒に音楽を作ったり、一緒に歌ったり。自由でステキに過ごしていこうね。
 
追伸:
ところで詩織ちゃんは黒豆、好きなの?
 
あおいより



◆新山詩織コラボシングル
Free (feat. 山崎あおい)
2022年9月29日リリース
作詞:山崎あおい
作曲:新山詩織

山崎あおい 公式HP:https://yamazakiaoi.jp
新山詩織 公式HP:http://niiyama-shiori.com/