1年前の5月にオスの愛猫が旅立ちました。

 2022年4月13日に“THE BACK HORN”がニューアルバム『アントロギア』をリリース。アルバムタイトルの“アントロギア”は、古代ギリシャ語で<花を集めること>を意味し、今日では詩文を集めた詩集を表すことに由来。様々な花が持つ色彩のように4人の“今を生きる希望”が描かれた作品となっております。今作には、これまで通りメンバー全員が作詞作曲で参加し、様々な組み合わせにより制作された全12曲が収録。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“THE BACK HORN”による歌詞エッセイを4週連続でお届け。第3弾は岡峰光舟が執筆。綴っていただいたのは、収録曲「夢路」にまつわるお話です。大切な家族との別れから生まれたこの曲。歌詞と併せて、エッセイを受け取ってください。



夢路

この曲は別れの曲です。
1年前の5月にオスの愛猫が旅立ちました。
 
俺がベースの練習や作業をしていると彼はいつも出窓からのんびり眺めてました。いや、半分以上は寝てました。
 
そして闘病。徐々に弱っていく4月位から「こいつの曲が作りたいな。」と傍で眠る彼を見ながらベースで曲を作り出しました。出てくる音楽は何故か悲壮感がなく、勇ましくて温かく、優しいものでした。
 
そして5月にお別れ。
俺にとって初めて一緒に暮らした家族との別れ。その瞬間の光景は何故か俯瞰で自分の脳裏に刻まれています。よく晴れた日なのに突然雷雨がきて、そしてまた光が差し込んできて、彼の名を、呼び続ける声を引き連れるように旅立っていきました。
外からは子供たちがはしゃいでいる声が響き、窓からは眩い光。
 
暫くしてゆっくりと詞を書き始めました。
この曲は時間の制限を設けずに、言葉や情景が思いつき、浮かんだ時に少しずつ紡いでいきました。
 
飛行機に乗っているときに広がる空と雲を眺めながら。
新幹線から見える自然や街や人々の営みを通過しながら。
雨の街を散歩しながら。
ライブで、フロアで音楽を聴いてくれてるお客さんを見ながら。
家族とご飯を食べながら。
 
色んな状況や季節を感じながら詩を書いていた11月に、14年間一緒に暮らしていたもう1匹の愛猫も旅立ちました。
 
もちろん深い哀しみと寂しさがありましたが、どこか「またこいつら仲良くケンカして、じゃれ合えれてよかった。いつもどっちか居ないと探してたもんなぁ。」とホッとしている自分もいました。
 
そして言葉がまだ見つかってなかった箇所の詞がピタっとはまり、夢路が完成しました。
 
そういった背景があるこの曲ですが、悲しいだけではなくて、力強くて優しい希望も描けたことが自分には誇らしく思えました。猫たちと泣いて笑って、生命の儚さを知り、生きる希望も教えてもらいました。
 
皆さんにも様々な別れがあると思います。
この曲が皆さんの心の傍に寄り添えれば嬉しいです。
 
<岡峰光舟(THE BACK HORN)>


◆紹介曲「夢路
作詞:岡峰光舟
作曲:岡峰光舟