さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“SHE'S”の井上竜馬による歌詞エッセイをお届けします。家族、バンドメンバー、友達、そして音楽。彼自身にとって、いろんな温かい存在がお守りになっているからこその、歌に対する想いを明かしてくださいました。是非、今作の歌詞と併せて、このエッセイを受け取ってください。
~歌詞エッセイ~
「あ~竜馬、これ持って行っとき」
領収書の精算をする為に普段はあまり持ち歩かない長財布の中を漁っていると、母から上京するときに貰ったお守りが出てきた。
母は基本的にクールだ。でも誰よりも兄と僕、息子2人を愛しているし、案じている。そんな素ぶりは見せないけれど、僕ら兄弟は知っていた。
兄が仕事で上京して見送りから帰ってきた時も、しばらく寂しそうで元気がなかった。そして家の小さな引き出しには、1枚で良いのに2枚ずつSHE’SのCDが並んでいる。表には出さないけれど心配だから、きっとあの時も急に思い出したようなふりをして、僕にお守りを渡してくれたんだと思う。
僕にはそんな温かい家族がいる。
バンドメンバーもいれば、友達も本当にいい人たちだ。
それでも漠然と、孤独を感じる時がある。
不安の波に飲みこまれそうになる時がある。
そんな時は決まって
Augastanaの「Boston」が耳に流れてくる。
これは僕のもう一つのお守りだ。
厳密には、音楽のお守りは沢山ある。
Peter Cottontaleの「Feels Like Church」だって、聴いてるだけで楽しすぎて無敵の気分にしてくれるお守り。
Maeの「Suspention」は、いつだってSHE'Sを始めた頃を思い出させてくれるし、ELLEGARDENの「Supernova」もバンドに目覚めた中学の記憶を蘇らせる。
その思い出一つ一つが、時に自分を守ってくれる温かい存在だ。勇気がみなぎったり、とことん一緒に落ち込んだりしてくれる。
僕はただ、自分がこんな風に沢山の音楽に救われて夜を越えてきたから、自分たちの音楽もそうであってほしいと祈っている。
“寄り添おう”なんて考えず、ただ思ったことを歌いたいことを歌にして、あとは祈っている。
君に届きますように。
君のお守りになりますように。
君の深く暗い夜を乗り越える相棒のような曲が
一つでも見つかるといいな。
そんな祈りを10年経っても変わらずこめて制作した。
君のお守りの話もいつか聴きたいな。
そのラインナップにSHE'Sの歌が入っていたら
きっと僕は照れ隠しをしながら「わかる。俺もその曲好き」なんて言って笑って語り合うのかもしれない。
<SHE'S 井上竜馬>
◆5th アルバム『Amulet』(読み:アミュレット)
2021年10月6日発売
<収録曲>
1. Rained (inst.)
2. 追い風
3. Delete/Enter
4. Imperfect
5. If
6. Chained
7. So Bad
8. Spell On Me
9. Take It Easy
10. Do You Want?
11. Amulet