その根っこを誇りに思えるような人生を。

 2021年8月25日に“postman”が配信シングル「アネモネの根」をリリース!前作の第103回全国高等学校野球選手権愛知大会テーマソング「ダイヤモンド」に続く新曲です。花を咲かせるために土の中でもがく葛藤と苦悩、そして決意が込められたミドルバラード。バンドの新たな方向性を導き、メッセージ性を全面に打ち出した楽曲となっております。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放つ“postman”の寺本颯輝による歌詞エッセイを3回に分けてお届け。今回は最終回。綴っていただいたのは、新曲のタイトル「アネモネの根」にも通ずる3つの“ご自身のルーツ”について。その三つ目は漫画のお話。影響を受けている作品、そして、音楽と漫画に通じている点とは…? 是非、歌詞と併せてお楽しみください!

~歌詞エッセイ最終回~

どうも寺本颯輝です。三週に渡って書かせていただいているこの「うたコラム」も遂に最終回となってしまいました。8月25日に配信リリースした新曲「アネモネの根」に寄せて、寺本颯輝の根っこ=ルーツ、つまり“テラモトの根”についてお話ししてきました。もう三回目なんだからこのネーミングセンスには慣れてね。

第一回は「野球」、第二回は「お笑い」。どちらの根も、今の自分の音楽に繋がっている大切な部分だったので、いつかどこかで話しておきたいと思っていました。そして最終回である今回は、本業である音楽のルーツを掘り下げてこのコラムを締め括ろうと思っていましたが、音楽のルーツはそこかしこで話している気もするし、折角いただいた機会なので音楽とは別の分野にすることにしました。

最終回に相応しい三つ目のテラモトの根は、“漫画”である。

ミュージシャンになりたいと思う前、野球選手の他になりたかった職業があった。それは漫画家であり、postmanは少年野球チームで組んだ幼馴染バンドと各所で話しているが、実は楽器を手にする前、四人で漫画を描こうとしていた時期もある(前回のうたコラムを読んでもらえばわかるが、いわたんばりんではなく前任のドラマーのたまちゃんを含んだ四人)。僕は小さな頃から絵を描くのが大好きで、友達と野球をしている時以外はずっと絵を描いている少年だった。何故か自由帳ではなくスケッチブックに描くのが格好いいと思っていた。

ではまず根っことして、人間性の部分に影響を受けている作品を挙げてみよう。ずばり、宮崎駿先生『風の谷のナウシカ』、井上雄彦先生『リアル』、空知英秋先生『銀魂』、森恒二先生『自殺島』の四つである。

作者が伝えたいメッセージ、世界観、愛の描写、重んじるべき仁義、など様々な要素に影響を受けていて、その中でも特に主人公の生き方や考え方にはそれぞれ見習うべきものがあり、こんな人間になりたいと切望している(銀さんは見習っちゃダメな所多いけどね)。

そんな漫画というものがどうして音楽に繋がるのかというと。夜や雨といった自然の情景やどこかで見たノスタルジックな風景、はたまた生きていて一度も見たことのないような想像の世界。そんな絵が目を閉じた時、瞼の裏に映し出されるような音楽を作りたいということ。そしてその空想と現実世界で起こる出来事を重ね合わせたメッセージを音楽に込めたい、という想いが僕の中にあるからである。

全て聴き手の解釈と想像で構わないので曲の例は出さないが、常にそんなことを考えながら作っていて、メンバーも楽器でそれらをどこまで表現出来るか試行錯誤する。あと何と言っても漫画は少年にさせてくれる。ワクワクなしでものづくりは出来ないのだ。

では最後に。譲れない頑固な思いや拭いたくても拭い切れない過去、護り抜きたい信念や諦められない夢、大切な人や場所やモノに対する深い愛情や願いなど、それは誰の手でも、何人かかっても、何年かかっても決してひっこ抜けない根っこみたいなものだと思います。その感情や月日なくしてはきっと花は咲かない。

どんな不格好な姿形をしていても、どれだけ泥まみれでも、いつか大きな花を咲かす為の根っこです。その根っこを誇りに思えるような人生を。

前作に引き続きこの「うたコラム」という素敵な場所をご用意して下さった歌ネットさん、本当にありがとうございます。そして皆さま最後まで読んでいただきありがとうございました!「アネモネの根」沢山聴いてください!ライブハウスで逢いましょう。

<postman・寺本颯輝>

◆紹介曲「アネモネの根
作詞:寺本颯輝
作曲:postman