さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“まるりとりゅうが”のRyugaによる歌詞エッセイをお届け!今回は第2弾です。綴っていただいたのは、新曲「シール」のお話。失恋を“シール”で表現したこの曲の、誕生のきっかけを明かしてくださいました。忘れたい人がいても忘れられないあなたに、このエッセイと歌詞が届きますように…!
~歌詞エッセイ第2弾:「シール」~
シールを剥がそうとしたら剥がしている途中で切れてしまったり、剥がした跡がベトベトだったり。そんな出来事、誰もが人生で一度は経験したことあるのではないだろうか。もしくは想像できるのではないだろうか。実際、僕には経験がある。
とあるなんでもない日だった。自分のお気に入りのモバイルバッテリーに貼ってあったシールを突然剥がしたくなった。お気に入りの物に貼っていたということから見ても、当時、貼った瞬間は、そのシールが自分にとって素敵なものであったに違いない。それなのに、そのシールを剥がそうとしたのだ。人は気分で感覚や価値観が変わるものだし、ここまではよくあることだとしよう。
しかし、綺麗に剥がれてくれれば良いものの、かなり頑固なシールだった。当然剥がしている途中に切れはするし、跡はベタベタだった。僕はベタベタな部分を綺麗にしようとさらに爪で擦った。しかしベタベタは綺麗になるどころかもっと広がっていった。その瞬間、頭の中でふと「この状況が失恋に似ている」と感じたのだ。僕はすぐに音楽部屋に行き、歌詞を書いた。今まで歌詞を書いてきた中でも最速だった。まるで知っている曲の歌詞をメモに書き出しているかのような感覚だった。
あなたを必死に剥がしてるのに
綺麗に剥がれてくれない
あなたとの日々
擦れば擦るほど広がって
比喩的な表現だが、わざわざ説明せずとも、すっと理解できるような、個人的に絶妙な表現だった。失恋をシールで表現、説明できるのがとても不思議ではあるが、これが言葉の面白いところなのだろう。
こんな曲ができた、と家族のLINEグループにデモを送ると、父から「シール剥がし使えば綺麗に剥がれるよ」と空気の読めないリアクションが返ってきた。だがそれも説明できるのだ。「シール剥がし」は「次の恋愛」と言える。好きな人ができると、案外前の恋愛から素早く「次の恋愛」に切り替えられる人も多いだろう。
「ドライヤーやオイルなどを使えば剥がしやすくなるよ」。そんな意見も聞こえてくる。だがそれも「ドライヤーやオイル」=「相談相手」という説明にできる。相談に乗ってくれる人がいると一人で抱え込むよりも気持ちが楽になり、「忘れる」ということを少しづつ受け入れられるかもしれない。
「シール」とは、魔法の表現なのだ。
忘れたい人がいても忘れられない、本当は忘れたくない。そんなもどかしい状況と日々戦っている人に、是非一度聴いてもらいたい楽曲が完成した。
<まるりとりゅうが・Ryuga>
◆紹介曲「シール」
作詞:Ryuga
作曲:Ryuga
◆1st Full Album『まるりとりゅうが』
2021年6月30日発売
UNIVERSAL MUSIC STORE限定盤 PDCN-1017 ¥4,950(税込)
通常盤 UPCH-20589 ¥3,300(税込)
<収録曲>
01. 気まぐれな時雨
02.リナリア
03. わけじゃない
04. 幸せになって
05. 甜言蜜語
06. らしく。
07. ONE STEP
08. サニー
09. どこにもないの
10. 嫉妬 (Album ver.)
11. シール
12. 幸せになって (Piano ver.)