10年一緒にやってきたマネージャーの目を見て、「やる。」と答えた。

 メジャーデビュー10周年を迎え、来年3月27日(日)に初の日本武道館単独公演開催を発表した“Ms.OOJA”。その日本武道館公演へのアンセムである新曲「はじまりの時」が、中部電力パワーグリッド「全力の電力。」2021年度のCMソングに起用。楽曲のメッセージと人々の暮らしを全力で支え続ける中部電力パワーグリッドの想いが重なった、ドラマティックな1曲になっております。さらに、7ヶ月連続でデジタルシングルを配信リリースが決定!

 さて、今日のうたコラムではそんな“Ms.OOJA”による歌詞エッセイをお届けいたします。今回はその第1弾。綴っていただいたのは、新曲「はじまりの時」への想いです。曲の誕生のきっかけは2018年。そこから数年の時が立ち、誰もが想像しなかった世の中に…。そんな今だからこそ、この曲を放つ意味とは。そして歌に込めた強い想いとは。是非、歌詞と併せて受け取ってください。

~歌詞エッセイ第1弾:「はじまりの時」~

 2018年5月、アルバム『PROUD』のアコースティックツアーの初日の新潟公演。ちょうどロシアワールドカップに向けて、ドイツから地元新潟に帰省していた酒井高徳選手が遊びに来てくれた。ライブ後の挨拶では、精悍で爽やか好青年な酒井選手に私もミュージシャンもスタッフも全員メロメロ。

そんな彼が出場するロシアワールドカップなら応援しない手はない!!と、2002年の日韓ワールドカップぶりに、予選リーグの日本戦を見始めたら「日本代表!強い!なにこれ!かっこいい!楽しい!」と感動し、それからというもの集中して観戦するために家で一人、誘いも断り、酒も飲まず、テレビの前で応援した。

日本が1つずつ勝ち進んで行く度に泣きながら歓喜し、気付くと日本戦だけでなく決勝トーナメントのほとんどの試合を観てしまうほどのめり込んでいました。夜中の3時から始まる試合を観終えたら朝の5時、眠たい目に朝日が染みた。ベルギー戦で日本が敗退した時もTVの前でその勇姿を讃え一人泣きながら 「ありがとう!!!」と叫んだ(近所迷惑)。

その後も試合を見続け、決勝戦でフランスに負け準優勝となったクロアチアのイヴァン・ラキティッチとMVPに選ばれたルカ・モドリッチが好きで、その翌日に我が家にやってきた2匹の姉妹保護ネコにラキとルカと名付けた。と、まあそれくらいにワールドカップにドハマリしていた。2018年夏。毎年のように行っている札幌の芸森スタジオでの制作合宿に挑んだ。

盟友・Dr.SAKAIとルンヒャンとのコライト制作初日、まず私は何より日本代表に向けた熱い想いを歌にしたい!と二人にアピールした。 そしてピッチから去ったあとのロッカールームで汗にまみれたユニフォームを投げ捨てる選手達の様子を勝手に想像して作った<汗にまみれた シャツを投げ捨てた>という歌い出しの「はじまりの時」ができた。

それから2年後の2020年、まさかの事態となった。新型コロナウィルスの蔓延だ。人に会えなくなった。ライブが出来なくなった。今までの当たり前は当たり前じゃなくなった。数々のライブが延期になり、中止になり、人を集めることが目的のライブなのにそれが一切出来なくなった時、いかにライブというものに自分が支えられていたんだろうと気づいた人は多かったんじゃないかと思う。ファンもミュージシャン自身も。 配信やできる限りのことをして何かを届けていないと自分の精神も崩壊してしまいそうな日々だった。


 そんな中、秋に配信なしの有人のバースデーツアーを行うことを決定した。ことごとく先の見えない情勢の中、何度も何度も協議を重ね、感染症対策のため本来の3分の1の人数しかいれられない、ZEPPライブでは本来ありえない高い金額設定にしなければいけない。そして1日2公演などなど、試練はたくさんあった。はっきりいって、売り切れたとしても赤字にしかならないライブ。みんなが来てくれるかどうかもわからない状態。実際、見送った人もたくさんいたと思う。会場は満席にはならなかった。それでもライブをするからには、観に来てくれる人たちに半端なものは見せられない。


 バンドメンバー、スタッフ、照明、衣装、いつも通り今の私が見せられる最高の布陣で挑んだ。私のわがままを叶えてくれたスタッフには本当に感謝している。8月にリリースしたカバーアルバム『流しのOOJA』を中心とした選曲の中、セットリストを考えている時にふと「はじまりの時」を思い出した。

実は2018年に作った時には、ブリッジ部分を作っていなくて未完成の状態だった。もちろんレコーディングもしていなければ、リリースも決まっていない。それでもこの曲を今届けなきゃいけない!と強く思いライブの最後に披露することになった。このライブで感じたことをこのブリッジ部分に入れたいと思ったから、あえて未完成のまま歌うことにした。

ライブで初めて聴くこの曲をファンのみんなは喜んで受け入れてくれた。その反応を目の前で見て、感じながら、メジャーデビュー10年目を迎え、コロナ禍に立ち向かいながらライブをすること、これまでの歌手人生、そしてこれからの歌手人生、様々な思いが2年前サッカー日本代表のために作ったこの曲の歌詞とリンクしていった。


 そして、2020年10月28日、38歳の誕生日当日、名古屋ZEPPでの1公演目を終え、2公演目を待っている楽屋で突然マネージャーから、2022年3月27日の武道館公演の打診をされた。しかも今この瞬間に決めないともう押さえられない。という。
 
大変な挑戦であることは目に見えていた、決して簡単じゃないことも自分が一番良くわかっている。でもこのタイミングでやらないと、きっと一生チャンスは巡って来ないと思った。メジャーデビューから10年一緒にやってきたマネージャーの目を見て、「やる。」と答えた。「よし。」と言って楽屋を出てどこかに連絡をしている様子のマネージャー。もう後戻りは出来ない思った。でもそれで良いと。思った。

いつもどこか逃げながら生きてきたような感覚があった。本当に挑まなきゃならないことから逃げて、自分を守ってきた。失敗したくないから、笑われたくないから。でも本当はそんなこと関係なく、自分が出来ることを納得するまでやりきるかどうか、自分を信じて、失敗したって無様だって、全身全霊で精根尽き果てるまで何かをやりきったのか?歌に向き合ってきたのか?

それに気づいた時、私の中で静かに覚悟が決まった。


 もしかしたらこの武道館公演が終わった時、私は灰になっているかもしれない。そして歌手をやめてしまうかもしれない。大げさではなく、それくらいの気持ちで挑むべきことだと思っている。

今 手を伸ばせば
繋がる 未来があるだろう
絶望も 希望も連れて行こう
覚悟決めれば それが はじまりの時


そしてそんなバースデーライブを経てブリッジ部分の歌詞が完成した。

逃げない
迷わない
言い訳も後悔もしない

心に誓った
あの日の願いを
もうごまかしたりなんてしないよ


コロナ禍で迎えたメジャーデビュー10周年だったからこそ、持てた覚悟、決断だったかもしれないと今では思っています。そしてそんな10周年にふさわしく今伝えるべき「はじまりの時」は、私の覚悟と決断の歌です。

<Ms.OOJA>

◆紹介曲「はじまりの時
作詞:Ms.OOJA・Rung Hyang・Ryosuke“Dr.R”Sakai
作曲:Ryosuke“Dr.R”Sakai・Ms.OOJA・Rung Hyang