最後の恋しか正解じゃないんなら今はどんな間違いでも良い。

 2021年2月17日に“クボタカイ”がNew Digital Single「Youth love」をリリースしました。「MENOU」「MIDNIGHT DANCING」に続いてリリースとなる今作は、ただまっすぐに進み、その中で覚える喜びや痛みや切なさが描かれております。淡く儚いけれど、その瞬間を大切にする若者の愛を、クボタカイならではの視点で歌う1曲です。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな“クボタカイ”による歌詞エッセイをお届け!前回は「MIDNIGHT DANCING」について執筆いただきましたが、今回綴っていただいたのは、新曲「Youth love」に込めた想いです。傷つき、痛み、翻弄される若い恋。それでも止められない恋をしているあなたへ。是非、歌詞と併せてエッセイをお楽しみください…!

~歌詞エッセイ:「Youth love」~

なぜ人は恋愛のことばかり歌いたがるのだろうか。
例えば仕事のことや学校のこと、
部活、人間関係、金銭問題。
恋愛じゃなくとも僕たちはたくさんの悩みごとに
追われて生活しているはずなのに、
ヒットチャートには恋愛の曲ばかり。
なぜだろう。

歳をとるにつれて
僕たちは色々な距離感が分かってくる。
理想との距離感、
嫌な自分との距離感、
他人との距離感。
距離を遠くすれば傷付くことも少なくなって、
息がしやすくなってくる。

これをぶち壊すのが「恋」だ。
ぎゅっとくっつきたい。
ずっと一緒にいたい。
もっとあなたのことを知りたい。

折角上手な距離が分かってきても、恋は易々と上回る。
ただの友達なら分かろうとしなかったことも知りたい。
でもたどり着くのは…
「あなたの気持ちがわからない!」

最初の話に戻ろう。
どうして恋愛ソングばかりなのか。
僕は「人のことなんてわからない」と分かっていても、
それでも知りたいからだと思う。

答えのないどうしようもない気持ちに
恋愛ソングは都合が良いから。
恋は強力距離感ぶち壊しマシーン。
ジレンマまみれの問題用紙。
気を使っとけよ細かい容姿。
なんてラップ歴三ヶ月くらいの韻を踏みつつ、
新曲「Youth love」のエッセイを書いていこうと思う。


風が冷たい夜では余計に
君の熱が身体に籠ってて
哲学で出来たこの脳みそは
君のせいで全てがやり直し
この病に知性は衰退中
でも本当は暗いとこでしたいchu
理性と野生はまだ延長戦
君には明かさない意中



あれこれ考えるタイプの理性的な主人公。
そんな人間性も一瞬ですっ飛ばすくらい恋愛は強い。
オールマイトくらい強い。
分かってても勝てないから、
分かろうとする人ほどしんどくなる。
脳みそは恋愛に勝てない!!!

そんな最強の壁に翻弄されまくる若い恋。
誰もが通るYouth loveを逃げずに歌詞にしてみた。


私会いたい愛が痛いくらいに
馬鹿馬鹿しいくらいに我愛你
側から見りゃ痛い けど止められない
ああ若いな 若いな



ああ今自分馬鹿だな!って何となく分かる。
若いなあって自分が一番思っているんだけど、
でも会いたい気持ちって確かだ。
恋愛なんて最後の一人以外は全員失敗だ。
傷付いて傷付いて傷付いて、最後にゴールに辿り着く。
最後の一人以外は何なんだろう。
傷だけ残して、カサブタになるのを待つだけの…
いや、本当にカサブタなのかもしれない。

カサブタに雨が溜る。
生まれたての傷口には染みるけれど、
時間が経ってカサブタになれば
誰かを受け入れる器になる。
ボロボロの姿ってエロいし、良いと思う。
今はブサイクでも、うんと恋をして腹一杯泣けば
きっといつかの良い自分に会えるし。
これは恋愛だけじゃなくって
「悔しい」って思うこと、これは本当に大事。
今も文章を書きながら何かに悔しかったりする。
21歳アーティスト、そりゃトガる。
こんな歳だからまだ恋愛も結論も
答えを持っているわけじゃないけど、
今自分が手に入れた物くらいは文章として共有したい。


人を好きになること
それは傷を知ること
始まり、いつか終わることを肌で知ること
それでも君を知りたい
全て知りたい
君はどんな風な音楽で胸を打つのか



頭で分かるだけじゃ恋愛は止められない。
身を以て体験して、
トラウマになってから次の一歩がはじまる。
これは体験談だが、
「一生この子と一緒に居るんだろうな」と思っても、
案外終わりは来る。

でも終わる前提の恋なんてつまんないし
どれだけ傷を負おうがそれで正解だと思う。
最後の恋しか正解じゃないんなら
今はどんな間違いでも良い。

Youth love、それは受け身も知らない恋。
ボロボロになって知る前のいたいけな恋。

<クボタカイ>

◆紹介曲「Youth love
作詞:クボタカイ
作曲:クボタカイ・Taro Ishida