川村結花

今のこの状況の世の中で見る桜。どんなことを感じるだろうか。

 2020年にCDデビュー25周年を迎えた、シンガーソングライター・川村結花。今日のうたコラムでは、その記念企画として2020年~2021年の2年を通じてのご本人によるスペシャル歌詞エッセイをお届けしてまいります!更新は毎月第4木曜。

 シンガーソングライターとして活躍しながら、様々なアーティストへの楽曲提供も行い、ここ数年はピアノ弾き語りのLiveをコンスタントに続けている彼女。この連載でどんな言葉を綴ってくださるのでしょうか…!今回は第14回をお届けいたします。

第14回歌詞エッセイ:春は感情の坩堝(るつぼ)

2月だというのに4月並みの陽気が訪れた先日。ワンコを連れて訪れた公園にて「さっくらっがさっいてっるよ~イェイイェイイェ~イ」と大きな声でほがらかに歌いながら自転車にゆられ走り去って行く個性的な紳士に遭遇しました。とても幸せそうでした。春の陽気、生暖かな風、そして桜。それらには何かしら人の心をウズウズさせる何かがあるのでしょう。ちなみに彼の走っていたのは梅の花咲く道でしたが。

それにしても春というのはなんとめまぐるしい季節なのでしょう。雪解け、芽生え、巣立ち、別れ、出会い、入学、進級、卒業、就職、人事異動、年度末、決算、確定申告、、、ちょっと思い浮かぶだけで人生の節目やスタートといった普遍的なハナシからどえらい現実的なハナシまで盛り沢山。出来事が盛り沢山なぶん生まれる感情も盛り沢山。そら歌も出来るわけです。春の名曲多いですもんね。

なんといっても相反する二つの事象と感情「出会いと別れ」「嬉しさと寂しさ」「嬉しい涙と悲しい涙」などがペアになっているということが、こう、心をぎゅーっと切なくさせる一因ではないでしょうか。そんなこと言い出したら何にでも光と影があって嬉しさと寂しさがあるやないかい、なのですが、それを表現するのに最も適しているというか、わかりやすく、そしてなにしろ書きやすいという点で、春に勝る季節はないように思います(当社比)。

卒業して友達と離れ離れになる悲しさと次の場所新しい出会いへの希望。成長して家から巣立って行く我が子を頼もしく見送りながらも溢れて止まらない寂しさ。夢が叶った嬉し涙とそれにより起こりうるであろう恋人との別れの予感。などなど。

こうして箇条書きにしているだけでも色々な場面が浮かんで来て色々な切ない感情が沸き起こってくるのです、そこへ桜なんか絡んできたらもう書くしかないでしょ、って、、なるんじゃないでしょうか。

そう、桜の歌にしてもどんだけというほど世の中にあるのは、やはりあれほど短い期間しか咲かない桜だからこそ「美しく咲いては一瞬で散る」という、人生の素敵さ美しさと共に儚さ切なさ、もっと言えば諸行無常を誰もが心の根底に感じているからだと思うのです。

春の陽光と桜。あんな美しい景色の中に居ながらどこかしら切ない気持ちになるのは、散った後のまるであれは夢だったのかとさえ感じてしまう時が来るのを知っているから。それでも今年も見たい。窓から見える近所の桜でもいい。それこそ文頭に出した公園の桜でもいい。今年の桜を見たいと思うのです。今のこの状況の世の中で見る桜。どんなことを感じるだろうか。何か新しい感情は生まれるだろうか。特に何も感じないかもしれない。それならそれでいい。そう歌にすればいい。

なんだか春について予想外に熱く語ってしまいました。わたしも先日の陽気にちょいとやられてしまったのでしょうか。だいたいこんなん書きながらまだ2月。これから寒の戻りもあるでしょう。そして桜が咲くにはまだちょっと遠く。ここから1ヶ月くらいはまた「近づきつつある春のテンションについて行けない感」にやられて暗~く落ち込んでしまうのが毎年の常、なわたしであります。

ただ、心が不安定なぶん揺れやすいぶん書きたい音楽が湧いてくるのも事実です。この時期そういう方が多いと聞きます。春待ちのこの時期。心はヨワヨワだけどだからこそ創作にはいいのかな。またピアノに向かおう。今しばらくまた相変わらずそんな日々を重ねて行きます。いいの作るからね。ではまた来月。です。

<川村結花>

◆プロフィール

川村結花(シンガー・ソングライター)
大阪府生まれ。東京芸術大学作曲学科卒業。1995年、アルバム「ちょっと計算して泣いた」でシンガーソングライターとしてデビュー。同時に作詞家作曲家として楽曲提供を行い、主な提供楽曲は、夜空ノムコウ(作曲)をはじめ2019年現在までに100曲以上。2010年「あとひとつ」(作詞作曲共作)でレコード大賞作曲賞を受賞。2017年、アルバム「ハレルヤ」をリリース。ここ数年は、提供楽曲の作詞作曲も行いながら、ピアノ弾き語りのLiveをコンスタントに続けている。

オフィシャルサイト:https://www.kawamurayuka.com

◆歌詞エッセイバックナンバー
【第1回】
【第2回】
【第3回】
【第4回】
【第5回】
【第6回】
【第7回】
【第8回】
【第9回】
【第10回】
【第11回】
【第12回】
【第13回】
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