自分を見つめてどうなる。鏡を見てみる。

 2020年10月14日に“LAMP IN TERREN”がニューアルバム『FRAGILE』(読み:フラジール)をリリース。今作には、昨年リリースされた「ホワイトライクミー」や会場&通販限定e.p.収録曲「いつものこと」、今年5月に配信リリースされた「Enchante」に加え、新型コロナウイルスによる自粛期間だからこそ生まれた新曲を含む全10曲が収録されております。表現者としてのアイデンティティが今まで以上に詰まった1枚を、是非ご堪能あれ…!
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放つ“LAMP IN TERREN”の松本大(Vo.)による歌詞エッセイをお届けいたします。今回は【前編】に続く【後編】です。タイトルは「見つめるべきもの」。緊急事態宣言の最中、彼の心にとまった、ひとつの言葉。あなたはこのエッセイを読んで何を感じますか? そしてそれぞれの想いを胸に、改めて今のLAMP IN TERRENの歌詞を味わってみてください。

~歌詞エッセイ【後編】:見つめるべきもの~

どんぐりがそこら中に転がっていて、それってもう秋なんだっけ、どんぐりで秋を感じるの初めてだなあ、と雨の中呑気に歩いている私です。締切を大幅に遅刻しています。この記事の。こんな時の自分の言葉の出なさ加減と、締切遅刻の申し訳なさと、「いやぁ、今ちょっと忙しいんすよぉ」という言い訳の気持ちと、その情けなさと、でどんぐりにでもなりたい気持ちです。この場を借りて謝罪します。歌ネットさんごめんなさい。

緊急事態宣言の約2ヶ月を覚えていますか。個人的にはいつも通りコンビニに行く以外は漫画読むか映画観るか曲作るか風呂入るかという選択肢しか持ち合わせていない人間なので特に変化はなかったけれども、ひとつだけ確実に私を変えたことがあった。テレビ、ラジオ、SNS、どこからでも聞こえてくる「自分を見つめ直す期間にしましょう」というポジティヴっぽい言葉。この言葉が自分を180°変えた。

自分を見つめてどうなる。鏡を見てみる。気に入らないところばかりが目につく。例えば見た目は化粧で塗り潰せたとして、心まで化粧できるのか。それが“直した”ことになるのか。いや、改善なんてひとりでやるもんじゃない。ただただ自分を傷付ける行為になる。語弊を恐れず言えば、俺は、言葉や景色や誰かに心が動いた時、それらと手を取り合うために悩めることが改善に繋がると思っている。

あなたと心を通わせるために、自分に何が足りなくて、どう伝えたらいいのか考えることが。孤独の中で自分と向き合うことはある意味、自傷行為に近い。そしてそれを、音楽を始めた時からずっと続けてきていた。自分を見つめ直すばかりで生きてきた。そういう歌をたくさん書いてきた。だから他人に言われた時、初めて思い知った。「自信がないから自分を小さな世界の話ができなかった」と、さも美談のように話してきたが、ずっと孤独であろうとしただけだったこと。誰かと手を取り合って生きていきたいと歌う気持ちを持ちながら、自ら壁を作ってきたこと。

世界はありのまま回っている。僕らもまた、ありのまま回っている。全て。人はありのまま悩みたがっているし、僕はありのまま自分を見つめ直してきた。そうすることが正しいと信じていた。間違っていないとも思う。時に衝突が生まれ、この文章も誤解されることがあるだろう。わざわざ「ありのまま」なんて意識しなくても、皆ありのまま背伸びして、格好つけて、見栄張って、愛して、悩んで生きている。わざわざ見つめ直す必要なんてない。自ら壁を作ってきたこともまた、ありのままの自分だった。間違っていないとも思う。そして今、長い間作ってきた壁を壊した自分がいる。間違っていないと思う。

ただ、愛したものと手を取り合っていられますように。

どんぐりが秋を連れてきた。秋が好きだ。

<LAMP IN TERREN・松本大>

◆New Album『FRAGILE』
2020年10月14日発売
初回盤 AZZS-111 ¥4,500(tax out)
通常盤 AZCS-1096 ¥3,000(tax out)

<収録曲>
1. 宇宙船六畳間号
2. Enchante
3. ワーカホリック
4. EYE
5. 風と船
6. チョコレート
7. ベランダ
8. いつものこと
9. ホワイトライクミー
10. Fragile