プラスなんてレベルではなく、あらゆる景色が違って見える様になった

 2020年5月20日に3ピースロックバンド“Plot Scraps”が3rdミニアルバム『INVOKE』をリリースしました。今作には、疾走感溢れる「一等星」やすでにライブで披露されている名バラード「pinky」、エモーショナルなロックアンセム「Teardrop」などバリエーション豊かな全6曲が収録。是非、歌詞と併せて彼らの最新作をご堪能ください…!
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“Plot Scraps”の陶山良太((Vo.&Gt.)による歌詞エッセイを第1弾~第3弾でお届けいたします!3回を通じて綴っていただくのは「自分と歌詞」のお話。第1弾に続く第2弾では、今作の収録曲「オーダーメイド」にまつわる想いとともに、彼にとっての「自分と歌詞の関係・向き合い方」を明かしていただきました。

~歌詞エッセイ第2弾:「オーダーメイド」~

今回は3rd Mini Album『INVOKE』収録の6曲目「オーダーメイド」という曲について書いてみたいと思います。前回の最後に書いた様に“読むと、内容にまでは触れないのに、自然と歌詞の奥深さまで踏み込める様になる文章”を目指して行きたいと思います。

この曲を皮切りに『INVOKE』の制作がスタートし、この曲と向き合った事で作詞家としての新たなスタート地点に立てた様な、そんな曲です。

何に一番時間が掛かったのかと言うと、今自分が手にしている作曲に関して確立されたある“感覚”、それを手にするまでの旅が非常に長い道のりだった。ずいぶん遠回りをして今に辿り着いた。

旅というのはもちろん頭の中の、という例えだが、今思うとどこにも行く必要なんて無かった。最初から考えていることは同じだった。視点を少しだけ変えてやれば、根本的に破壊しなければならない部分なんて無かったという事に気づいた。そうして『INVOKE』を世に放てた今がある。

制作のスタート地点、最初の最初はマネージャーさんとカフェで次回作(INVOKEの事)の打ち合わせをしている時に、歌詞に対する提案があった。Plot Scrapsが、何を書きたいのか。何を書くべきなのか。何を“書かぬ”べきなのか。どう書くべきなのか。作曲家として今一度自己と向き合ってみるべきではないかと。それをきっかけに自分と自分の終わらない対話が始まったのを覚えてる。

第1回のエッセイにも書いたが、歌詞表層の一次元的な内容で済むのなら、究極的にはそれは歌詞じゃなくてもいい。早い話が“感想文”にして読んだ方が相手に効率的に伝わるかもしれない。

「オーダーメイド」は自分が今まで書いて来た曲の中で初めて“詞先”の曲になる。今までも部分的にはそういう箇所はあったが、ほぼ全ての曲はメロとオケ先行で、完全に詞先なのは今回が初めてだ(ちなみに「pinky」と「Cover Story」という曲だけ、不思議ですが詞&曲同時にできた物です。俗に言う“降ってきた”奴です)。

歌詞もメロも、最初の原型とは全く違う物です。とんでもなくこねくり回してしてきたので、初期の名残は欠片も残っていないです。痕跡があるとすれば、A・B・サビの大体の構成と、歌詞のテーマとなる感覚が微かに感じれる程度。

もう一つ自分にとって新しかった事といえば、メロディーが全く無い状態で、歌詞の後にメロを入れた事。自分は歌のメロディーを一番くらいに大事にしてきたので、そんな作り方は不安で仕方がなかった。

新たなやり方で、自分にしかできない手法を見つける旅。途中でゴールは見えきていたのに、何度書き直しても近づいていかない。その期間は中々にしんどい物だった。夢中で書き直す中で「オーダーメイド」という言葉から、自分が書こうとしていたテーマの糸口を掴んだ時に、今まで考えたことの全てが繋がった気がした。

繋がって、一つの技法を手にした後の感覚というのは、もう自分にとってプラスなんてレベルではなく、あらゆる景色が違って見える様になった。それはここ一年で科学を学んできた後と近いものがあった。

歌詞を書くと言う作業は、世界を創り出すと言うより、世界をより高い解像度で理解できる作業と言った方がいいかもしれない。そしてそれは他の分野・業種とも非常に似ている、と言うより、根本的には同じなのだ。果てしなく遠方の銀河の星屑と、自分を構成する細胞の一つが、かつて同じ場所に在った様に。

上記の過程で手にした手法で作られたのが『INVOKE』であり、これの発展系がこれからのPlot Scrapsの音楽です。なので、結果として「オーダーメイド」は僕らにとって、とても重要な存在になりました。

今回は「オーダーメイド」が“どういう曲か”ではなく“どう出来上がったか”について、書いてみました。

圧倒的な自己分析をお届けしてまいりましたが、楽曲の中身を解説するより、こういう部分を知った方が楽しいんじゃないかと。個人的には、アーティストが曲について説明するとすればそういう所じゃないかなと思っているので。内容に関しては、各々が曲と向き合ってくれれば良い訳で。

次回は最終回ですので、このコラムで伝えたかった事のまとめになる様な内容を書ければと思います。それではまた。

<Plot Scraps:陶山良太(Vo/Gt)>

◆紹介曲「オーダーメイド
作詞:陶山良太
作曲:陶山良太

◆ニューミニアルバム『INVOKE』
2020年5月20日発売
NBPC-0079 ¥1,500(税別)

<収録曲>
1.一等星
2.Teardrop
3.CHOCOLATE PUNK
4.OZ
5.pinky
6.オーダーメイド