さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放つ“川嶋あい”による歌詞エッセイを、3ヶ月連続でお届けいたします!第1弾では、収録曲「ペペロンチーノ」にまつわるお話を綴っていただきました。片想いをしていた頃や恋のはじまりはあんなに楽しかったのに、最近なんだかモヤモヤ…な気分な方。まずは是非、こちらのエッセイをご堪能ください…!
~歌詞エッセイ第1弾:「ペペロンチーノ」~
恋した時は誰でも一生懸命だ。それが始まりのタイミングであればあるほど、相手に気に入ってもらいたくてなんとか自分磨きに思いを砕くもの。
そんな恋への準備期間みたいなものが実は1番楽しかったりする。洋服を選んだり、髪色を変えてみたり、自分自身を少しずつ変身させて演出したい願望が湧き起こってくる。それに対して、相手から細やかなリアクションをもらえなくてもいい。とにかくまずは自分で自分をメイクアップさせていきたいのだ。目標を達成することの喜びと幸福感を勝ち得たいのだ。
では、1つの恋が少し前に進んだタイミングではどうだろう。片思いから両思いになり、2人の時間が増えてゆきお互いのことを深く知って理解し合える関係になった時、それこそが恋愛の分岐点だと私は思うのだ。
そこからの道の方がもっと長く険しいだろう。長く付き合ってゆくからこそ生まれる綻びや小さなズレ、摩擦みたいなもの。消してゆくことは容易ではない。
最初は可愛かったワガママや振る舞いも時が経てば鬱陶しく感じたりもする。それでも相手の欠点を認めて受け止めながら次の一歩を一緒に踏み出してゆくことは、未来を描いて恋愛することにおいて、どちらにも必要な最低限の行為だと思うのだ。月日が経とうが、浅かろうが双方がそれなりに努力をして、相手に想いを寄せて言動する。それが関係を良くして滞りをなくしてゆくことにつながるのではないかと私自身感じている。
例えばたまの2人での外出時、女性の方は化粧やお洒落に頑張って時間を費やしてきたのに、彼の方は全くそんな気はなくデートの服装というより少しだらしない格好をしてきたとする。精神的にどうにも不釣り合いな気がしてガッカリしてしまう。お互いの今一緒にいる時間を楽しもうとしてきた彼女の準備に対して、少し配慮が足りないのではないかと思うのだ。
そういう人だから…とゆうことでは割り切れないモヤモヤ感が残る。もし彼が彼女に負けないくらいの気持ちで、いつもと違う雰囲気の服装や演出でその日を楽しませてくれたなら、彼女はもしかしたらもう一度『好き』の言葉に出逢えるかもしれない。
長い時間を共にしてきた2人だからこそ、いつもではなくたまに見えるところでそれぞれの小さな努力を知ることができれば、これからの未来をささやかにでも励ましてくれるのではないか…。たまには一緒に頑張って、たまには一緒にだらしなくなって、そしてまた一緒に明日を描いて…。そんな前向きな繰り返しができればもっといい関係や絆を作ってゆける気がする…。
私自身の恋愛への理想や本音が詰まった楽曲が、アルバム『針の穴』に収録されている「ペペロンチーノ」だ。
1つの恋愛を恋愛として永久に続けてゆくことは非常に困難だけれど、少しでも寿命を長くしていくために…たまにお互いが何かを変えてみたり、何かを考えて行動してみたり、とにかくアクションを起こしてみる。片思いから両思いになる時だってそうだったはず。いつだって勇気を出せば何かの歯車が小さくても回り出すのだ。
なるべくお互いの心にある天秤が均等にバランスを保てるように、比重がどちらかにだけ激しく偏らないように、時にはメンテナンスしながら自分と相手の姿勢と向き合ってゆくことも大切なように思う。もちろん、失敗したり上手くいかないことの方が多いのだが。それでも何かに想いを砕き、努力する姿は美しい。
気付いたら全力で恋をしている頑張り屋さんの皆さんへ、想いのはけ口のような存在としてこの楽曲を聴いてもらえたなら最高に嬉しい。
<川嶋あい>
◆紹介曲「ペペロンチーノ」
作詞:川嶋あい
作曲:川嶋あい
◆9th ALBUM『針の穴』
2020年6月3日発売
初回限定盤 TRAK-0168~9 ¥3,500(税別)
通常盤 TRAK-0170 ¥3,000(税別)
<収録曲>
1.Paradox
2.くるくる
3.綴
4.ペペロンチーノ
5.Home
6.Life
7.私を彼女にして
8.雪割草