ごまかすつもりね いつもよりおしゃべりよ
何も言わないで ゆれてるまつ毛でわかる
ねえ顔を上げて 悪いのはあなたじゃない
もう会えないなら あと少しだけ そばにいさせて
思い出にはまだ早すぎて
ひき返すには遅くて 迷ってる
太陽さえつかめるような
あの季節は嘘でも夢でもなかった
「砂漠の花」/chay
冒頭から伝わってくる、終焉の空気。主人公の<私>は、ラベンダーの花言葉のように【繊細】な視線で最後の<あなた>を見つめています。きっとそれはこの瞬間だけではないのでしょう。いつも【繊細】に<あなた>の言動を受け取ってきた。だから<いつもよりおしゃべり>な理由も、言葉より正直に<ゆれてるまつ毛>の真意もわかるのです。
そうやって【繊細】に生きてきたのは、感情が【疑い】と【期待】の狭間で揺れていたから。ここに<あなた>がいるのは<嘘>や<夢>なのではないか、いつか消えてしまうのではないかという【疑い】。もしかしたらずっと一緒にいられるんじゃないかという【期待】。【疑い】と【期待】のどちらに天秤を傾けて良いのか、常に【繊細】に<あなた>を、<ふたり>の関係を、感じてきたのではないでしょうか。
しかし今、悲しいことに【期待】は儚く散ろうとしております。最後の【沈黙】のなか<私>は<悪いのはあなたじゃない>と思うことで【許し合う愛】で終わらせたいのでしょう。ただ<思い出にはまだ早すぎて ひき返すには遅くて>、せめて<あと少しだけ そばにいさせて>と思わずにはいられない。そして<太陽さえつかめるような>熱く眩しかった日々の記憶を頭の中で再生せずにはいられないのです。
ときめきのむこうに咲くという
砂漠の花 さがしていた私
永遠なんて信じていなかったあなた
でも好きだった それだけでよかったのに
「砂漠の花」/chay
ときめくだけならば それは恋
砂漠の花 愛とは許すこと
かすんでいく花びらの香りにふれて
目を閉じれば それだけでよかったのに
「砂漠の花」/chay
サビで溢れるのは、ときめきだけの<恋>を越えたかった<私>の想いです。曲タイトルである<砂漠の花>というワードも切なく響きます。心が渇いて、苦しくて、潤いを求める毎日。でもそんな<砂漠>のような毎日のなかでも、強く咲く花。ありえないはずの花。奇跡の花。つまり<砂漠の花>に似た、ふたりの<愛>を求めていたということ。
ときめくだけならば それは恋
砂漠の花 愛とは許すこと
かすんでいく花びらの香りにふれて
目を閉じれば それだけでよかったのに
それだけでよかったのに
「砂漠の花」/chay
好きだけでよかったのに、目を閉じればよかったのに、それだけでよかったのに。そう歌う<私>ですが、本当は“それだけ”じゃ嫌だったから、その先の“永遠の愛”を求めたくなってしまったから、ここで<ふたり>の恋は終わりなのでしょう。やはり<砂漠の花>を手にすることはできなかったのでしょう。いえ、もしかしたら、手にしたと思った瞬間に枯れてしまったのかもしれません。永遠の花など、なかったのです。
最後の最後、繰り返される<それだけでよかったのに それだけでよかったのに>というフレーズには、ありえないはずの“未来”を【期待】してしまった後悔が滲んでいるようにも思えます…。ときめきだけじゃ済まない“大人の恋愛”をしているあなた。その想いを重ねながら、chayの「砂漠の花」を聴いてみてください。
◆紹介曲「砂漠の花」
作詞:松尾潔
作曲:川口大輔
◆3rd ALBUM『Lavender』
2019年11月13日発売
通常盤 WPCL-13116 ¥3,000 +税
初回限定盤 WPCL-13117 ¥4,200 +税