作詞家をはじめ、音楽プロデューサー、ミュージシャン、詩人、などなど【作詞】を行う“言葉の達人”たちが独自の作詞論・作詞術を語るこのコーナー。歌詞愛好家のあなたも、プロの作詞家を目指すあなたも、是非ご堪能あれ! 今回は、西城秀樹、本田美奈子、LINDBERG等大物アーティストから、林原めぐみ、水樹奈々、松本梨香、等声優からアイドルまで楽曲提供。CMソング等も多数作詞している「有森聡美」さんをゲストにお迎え…!


有森聡美
代表作
めぐり逢い」 / 西城秀樹 (※西城秀樹、最後のシングル)
おもいきり CRYING」「CHANGE」 / LINDBERG
(※ミリオンセラーアルバム『LINDBWRG lV』収録曲)
ら・ら・ば・い~優しく抱かせて」 / 本田美奈子. (※テレビアニメ『魔法戦士レイアース』ED)
Give a reason」 / 林原めぐみ (※テレビアニメ『スレイヤーズ』主題歌 中川翔子他歌唱)
YOU GET TO BURNING」 / 松澤由実 (※テレビアニメ『機動戦艦ナデシコ』主題歌 奥井雅美他歌唱)
Love Power」 / Aice5 (テレビアニメ『乙女はお姉さまに恋してる』主題歌)
みつあみゆみちゃん」 / 花田ゆういちろう、小野あつこ (※NHKおかあさんといっしょ)
「シナモンの歌」 / シナモン (劇場版サンリオ『シナモン the MOVIE』挿入歌)
「KIZUNA」 / 伊織 (劇場版『名探偵コナン14番目の標的』挿入歌)
HANAJI」 / 小林ゆう (※テレビアニメ『まりあ ほりっく』主題歌)

作詞論
聞いてくれる方の心をどれだけ動かせるか。
過去の自分、現在の自分、これからの自分が見たもの、聞いたもの、感じたもの、人に感じて欲しいもの、それらはいつも私の中に詰まっていて、曲ごと、歌手の方によっても表現は変わりますが、聞いてくれる方の心をどれだけ動かせるかが、私の作詞であり、喜びでもあります。
[ 有森聡美さんに伺いました ]
  • Q1. 歌詞を書くことになった、最初のきっかけを教えてください。

    小学校低学年の頃に何気なく作詞作曲をしたものを、音楽の先生に譜面にしてもらったのが一番昔の思い出です。きっとテレビの歌番組等を見て、歌うのではなく、歌を作ってみたいと思ったのが始まりだと思います。

    小、中といじめにあっていました。親には内緒にしていましたが…なので、学校が終わるとすぐ家に帰って、音楽を聞いたりドラマを見たり、コンサートにも随分行ったりしているうちに自分でも音楽をやりたくなり、楽曲を作り始めました。それを発表するのにバンドを結成したと言う、普通とは逆からのアプローチですね。

    学校生活とはまるで違う自分が生まれたわけです。エンターテイメントにも興味があったので、衣装を何着も作ったり、振り付けも考えたり、ファンも付くようになり、調子に乗って東京に私一人で出て来ました。歌ではなかなか難しく挫折も味わいました。

    完全に東京に出てくる前から、オリジナルのレコーディング等のため名古屋からよく東京に来ていて、業界の方と知り合うようにもなり、知り合いに岩城滉一さんのステージ用の歌詞書いてみない?と言われて書いたのが初めてプロの方に作詞したのがきっかけでした。それから、人づてにいい歌詞書くねと紹介して頂くうちに、気がついたら作詞家になっていたと言う感じです。今でもその時の皆さんに感謝しています。

  • Q2. 歌詞を書く時には、どんなところからインスピレーションを得ることが多いですか?

    歌詞を書く際、ほとんどが曲先で来るので、作曲家の書かれたメロディーと歌うアーティスト、もしくは、主題歌の場合は作者が最終的に伝えたい事等をイメージしていると、色々と頭の中に映像が浮かんで来るので、それらをメロディーに乗せて行くと言う、意外と単純な方法です。インスピレーションと言うと、普段から感じたことをいつも心に貯金しているので今まで、行き詰まった事とかないかもしれません。基本書く事が楽しいんです。

  • Q3. 普段、どのように歌詞を構成していきますか?

    普通に1コーラス目から書いて行くことが多いです。何度かメロディーを聞いているうちに言葉が浮かんで来るのですが、気になるフレーズが出て来ればメモしながら進めて行きます。 フレーズ等で引っかかるものを入れたいとは思っています。お店なんかでBGM的に流れていても、あれっ?って気になる言葉があると覚えてもらいやすいですよね。

  • Q4. お気に入りの仕事道具や、作詞の際に必要な環境、場所などがあれば教えてください。

    基本、家で作ります。たまに名古屋の実家に帰った時等でも仕事が入っても作詞出来る状態にはなっています。外のお店で書いたりとかは無いですが、レコーディングの現場で急遽頼まれて、作詞待ちで書いたり、かなり鍛えられたので、どこでも書けますね。(笑)

    昔、飛行機の中、モスクワ上空で書き上げた事もあります。ただ、カフェとか人の会話が耳に入って来ると、聞いてしまうので、出来れば静かな場所の方が書きやすいです。飲み物と食べ物さえあれば、大丈夫です。

  • Q5. ご自身が手掛けた歌詞に関して、今だから言える裏話、エピソードはありますか?

    西城秀樹さんに書いた「めぐり逢い」は、秀樹さんをずっと応援して来たファンの方や、連れ添った奥様等に捧げる歌として、レコーディングの何年か前にステージ用に作ったものなんです。歌入れの日に私がどうしても行けなくて、CDになってから聞いたら歌詞の部分で「恋は幾つだって」が「恋はいつだって」になっていたので、随分経ってから秀樹さんにも言ったのですが、「いつだって」もいいよ~と明るく言われて、仕方ないなぁと秀樹さんだから笑い話しになりましたが、それからはなるべく歌入れには行こうと思っています(笑)。

    それと、秀樹さんに書いたディズニー映画『ラマになった王様』の主題歌「ラッキー☆ムーチョ」をレコーディングした際にクスコー♪と歌うロングトーンの箇所があるのですが、ディレクションの方がノンビブラートでお願いしますと言って、秀樹さんがそれを一回で完璧に歌った時には鳥肌が立ちました!

    西城秀樹さんと言う最高の歌手に、有森の歌詞はいいなぁとご本人からいつもオファーを頂き、何曲も歌詞を書かせて頂けたことをとても幸せに思います。また、この曲はスティング作曲で歌はアメリカではトム・ジョーンズだったので、フェイクが凄く多くて、かなり譜割りも大変でしたが楽しかった作品です。

  • Q6. 自分が思う「良い歌詞」とは?

    何気に聞いても心に触れるもの、深く聞くともっと色んなメッセージが隠されているような作品。歌った時により生きる歌詞。

  • Q7. 「やられた!」と思わされた1曲を教えてください。

    作詞家として、やられた!と言うより、オーディエンスとして聞いてやられたのは、小田和正さんの「君住む街へ」です。私の事だわって、ほんとファンと同じ目線で聞いています。あの歌詞と小田さんの声や、生きて来た歴史からの優しさを感じます。

    ユーミンの世界観も大好きです。沢山影響もパワーももらったし、なにより夢をもらいました。玉置浩二さんにもずっと歌詞を書いてみたいと思っています。そして、やられた!と思わせたいです。

    素晴らしいアーティストの方々の音楽に触れていると、同じ時代に同じ業界で活動出来ていることに喜びを感じます。ライヴを観に言ったら、普通に騒いでみたり、泣いたり、まっさらで受け止めています。これからもそうありたいです。

  • Q8. 歌詞を書く際、よく使う言葉、
         または、使わないように意識している言葉はありますか?

    特にありません。

  • Q9. 言葉を届けるために、アーティスト、クリエイターに求められる資質とは?

    心を開く事は大切だと思います。もちろん開けば情報も入って来る分、喜びも大きいし傷つくことも多くなりますが、それが自分自身の宝物になると思います。アーティストの方は独自の素晴らしい魅力をお持ちだと思います。それも魅力であり、武器でもありますが、時に自分を中から見ないで、受け手から見た自分を表現した方がより、エンターテイメントが生かされる場合もあるのかなと感じる時もあります。自分の考えが必ずしも正しいと思わないことも貪欲な考え方として、色んな意見を受け止めるのも有りなのかもしれません。

  • Q10. 歌詞を書きたいと思っている人へのアドバイスをお願いします。

    欲張りに生きて下さい。特に自分の心に沢山の感情や想い、情景や接したもの全てを焼き付けて欲しい。人の心を読み取ってあげる優しさ、または人の優しさや醜さも感じて欲しい。時には何が正しいのか考えることも大切かなと。正解は一つではないのだから。机に向かって歌詞を書こうと頭を抱えている時間があったのなら、もっと日頃沢山の経験を積んで下さい。人生をもっと冒険して欲しい。

歌 手
林原めぐみ
タイトル
Give a reason
テレビアニメの主題歌でしたが、主人公が頑張って進んで行く姿が世の中で頑張って生きている人々と重なって、応援歌テイストのものになりました。書き終えて読んでみると、自分に言っているようでした。そんな作品が他にも沢山あります。この歌詞を見て、死のうと思っていたファンの方が、頑張って生きようと思いましたと言うコメントを頂いた時には、私の歌詞も誰かの役に立っているのだなと思い、私もまたパワーを頂きました。私の歌詞を愛してくれて有難う。


愛知県・名古屋市出身 9月2日生まれ

短大のグラフィックデザイン科卒業。名古屋時代、バンド活動を経て東京に上京。1989年には、作詞家として活動を始める。JASRAC(日本音楽著作権協会・正会員)

西城秀樹、本田美奈子、LINDBERG等大物アーティストから林原めぐみ、水樹奈々、松本梨香、沢城みゆき等声優からアイドルまで楽曲提供。CMソング等も多数作詞。

1998年、有限会社ストーン・ヘブンを設立。作詞家の他、音楽制作、アーティストのプロデュースからライヴの演出、脚本、MVの監督等も手がける。
2016年12月より名古屋観光文化交流特命大使となり、テレビ、ラジオ、新聞等マスメディアにも取り上げられ、地元名古屋での活動の他、他県でも講演会等に出演。
2017年12月 名古屋音楽大学にて、特別講師として講義を行う。
2018年名古屋市PRソング「でら凄(すご)っ!名古屋」の総合プロデュースと作詞を担当。
名古屋市HP 観光・イベント情報
有限会社ストーン・ヘブン http://www.stone-heaven.com
INFORMATION
西城秀樹
HIDEKI SAIJO
シングルBOX
「HIDEKI UNFORGETTABLE-HIDEKI SAIJO ALL TIME SINGLES SINCE1972」
発売中
MHCL-30593 ¥16,200(税込)

「スレイヤーズ」 シリーズ
Blu-rayBOX 発売中
「スレイヤーズ」 発売中
「スレイヤーズNEXT」 発売中
「スレイヤーズTRY」
2019年9月25日発売予定
詳しくはコチラ
  • ・2019年 作詞家30周年記念として、レコードメーカーより有森聡美作品集が企画・進行中
  • ・2019年 12月に30周年記念イベントもしくはパーティーを地元名古屋にて開催予定。
  • ・2019年 名古屋市PRソング「でら凄っ!名古屋」が名古屋市内の学校・大須商店街の 新天地通、栄・森の地下街で連日放送。栄オアシス21・あいビジョンにてMVが連日放送、今後も名古屋各所で放送企画展開中。